【インスパイア】俺の秘密と私の秘密【完結!】

嗚呼、素晴らしきハイグレの輪!
この頃、ハイグレ界隈の方々はみんないい人(なのに世間的には残念な性癖の人)だということを再確認した香取犬です

遡ること一週間以上前、ブログ記事では無告知のうちに新たなハイグレ小説ブログをリンクさせていただきました
0106氏、ぬ。氏に遅ればせながらこちらでもご紹介いたします
新進気鋭のハイグレ作家、ボトさんの『ハイグレ創作喫茶』です!
ブログ自体はまだまだまっさらに近い状態ですが、これから沢山のハイグレ小説を執筆してくださることを期待しています。また、氏は渋の方へ既に『逃れられないハイグレの快楽』という再洗脳ものの小説を投稿されておりますので、どんな小説を書く作家さんなのかと気になった方は是非そちらの方でお読みくださいまし
――さあボトさん、そろそろご自分のブログにこのようなリンクを貼ってみませんか? ↓の行の<と>を全て半角の<と>に書き換えて、新規記事にコピペするだけの簡単なお仕事ですよ
<a href="http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6777290" target="_blank" title="逃れられないハイグレの快楽">逃れられないハイグレの快楽</a>

さて、そんなボトさんとお話をしているうちに、自分の中にとある感情の炎が燃え上がるのを感じました。そう……七つの大罪が一、嫉妬という思いです
ボトさんの境遇に色々とムカついたので彼の話2割、自分の話1割、フィクション7割の割合で小説にしちゃいましたです
先に申し上げておきますと、今回分の《俺の秘密》にはほとんどハイグレ要素はありません。自分自身、早くハイグレ要素の多い(?)後半が書きたくて仕方ありません
それではどうぞー

【16/06/21】後編《私の秘密》を更新、完結しました!
【16/06/22】後編更新時、何らかの手違いでブログのレイアウトが崩れておりましたので修正しました。ご迷惑をお掛けしました。またそれとは関係ありませんが、右カラムの不要そうなプラグインを非表示にしました

俺の秘密と私の秘密
inspired by ボト

目次
《俺の秘密》
《私の秘密》 *NEW!!*

あとがき
あとがき2のようなもの *NEW!!*




   《俺の秘密》

 鉛筆を走らせる俺は創造主。スケッチブックの上でだけなら。
 俺に描かれたキャラクターは文句も言わず、素直にその姿を晒してくれる。だが、スケッチブックの外の人間はそうもいかない。
「……戸部、君はどうしていつも裸の女の子の絵描いてるんだい?」
 三年生の漫画研究部部長は背後から下描きを覗きこんでくると、不思議そうに言った。俺がドギマギしたのは部長の吐息が耳に掛かったからだろうか、それとも仮にも女性に裸体の話をされてバツが悪かったからだろうか。とにかく平静を装いつつ、自然に答える。
「お、女の子の裸って、いいじゃないですか!」
 ヤバい、全然自然にならなかった。――うわ、部長の三白眼がさらに険しくなっていく!
「あのな。戸部くんも健全な男子高校生だから、そういうのに興味があるのは理解できる。加えて、確かに裸婦像は古来より芸術の対象だ。だがね……それを高らかに公言するのはいかがなものかな。ほら、見たまえ」
 呆れたように言われ、俺は周囲を振り返った。書道室を間借りしている漫研部室内は墨の匂いと、多数の女子のジト目と少数の男子のニヤケ顔が充満していた。これはやらかした、と自分の言動を猛省する。
「いいぞ光(ひかる)よく言った! それでこそ男だ――あだっ!?」
 お調子者の渋沢が筆頭腐女子の駒込先輩に頭を小突かれる、といういつもの光景の中を、一人の女子がこちらへ歩いてくる。
 ぱちりと開いた瞳と左頬にほくろを持つ整った顔立ち。控えめだが決して無いわけではない胸元に掛かる真っ直ぐな黒髪。幼少から新体操をしているという小柄な体躯は、細く引き締まっている。その上明るく人懐っこく、漫研内はおろか学校中からも一目置かれるほどの美人、それが宮本沙優(さゆ)。
 これは学校の誰にも秘密だけど、一応俺の……彼女ということになっている。
「戸部くんさ」
「さ……宮本」
 危ない、いつもの癖で沙優と呼びかけた。沙優は部長の反対側に立ち、同じように絵を覗く。首筋に垂れた髪がかかってくすぐったい。
「昔と比べるとほんと絵上手くなったよね。身体の描き方とかサマになってるし」
「ああ。私もそれは評価している。入部時など、こいつは読む専だろうと思ったくらいだったが、どうやら我流の描き方を見つけたようだな」
「あ、ありがとうございます」
 最初がひどかったことは自覚しているからこそ、成長を褒められると何だか気恥ずかしい。すると、
「……何赤くなってんのよ、光のバカ」
 と蟻の囁きのような、しかし蜂のように鋭い叱責。言わずもがな沙優の声だ。慌てて表情を引き締める。
 部長は何も気づかない様子で僕から離れ、自分の絵に戻っていった。周りも、僕の失態以前の創作的雰囲気を取り戻しつつある。
 沙優は去り際、こう言っていった。
「今日は光ん家、遊びに行くね」
 俺がその笑顔に弱いこと、分かってやってるんだから沙優はズルい。

 で、沙優は俺のベッドで足をパタパタさせながら、俺所蔵の少年漫画を読んでいた。ベッドの側面を背もたれにしてスマホをいじるのにも飽きた俺は、首をぐいと後ろに曲げて沙優に話しかけようとした。
「なあ」
 すると、俺の髪の毛が沙優のむき出しになっていた脇腹に擦れてしまい、
「ひゃは!?」
「ご、ごめん!」
 くすぐったさのためか、聞いたこともないような悲鳴が上がった。慌ててちゃんと振り返ると、沙優は胴体をくの字に曲げて涙目でこちらを睨んでいた。そしてスネて再び漫画に視線を落としてしまう。
「ごめんって。わざとじゃねぇよ」
「……許さない。だからこれから、光より漫画を優先します」
 つまりはどういうことだってばよ。本気で怒ってるわけじゃなさそうだけど。一応、改めて。
「沙優、そういえばさ」
「ん?」
 こちらは見てくれなかったが返事はしてくれた。じゃあ、話はできるのか。
「沙優って今でも新体操、行ってんの?」
 付き合う前までは遊びに誘ってもしばしば、幼少から通っている新体操クラブに行くからと断られたことがあった。しかし付き合ってからは、週の半分は俺と行動している気がする。それ自体は嬉しいが疑問でもあったのだ。
 俺の質問に沙優は、漫画を読んだまま口だけで答える。
「たまには、ね。前ほど行かなくなっちゃったけど」
「でも、ずっとやってたんだろ? 勿体無くねぇ?」
「……私、昔から別に上手くなかったから、選手としては期待されてなかったの。もっと上手な同級生の子が同じクラブにいたから、余計に」
「そうなのか?」
 こくんと頷く。
「それでも身体を動かすのが楽しいから頑張ってたけどね、今はもういいの」
 沙優は足を伸ばして座り直し、同時に淋しげに吐き出す。それに俺は無性に腹が立った。例え才能が無くとも、時間を掛けて積み上げた努力は裏切らないはずだ。
 俺が絵を描こうと決意したのは中学生の頃。俺にだって絵の才能はなかったが、四年、五年と続ければ流石に少しは進歩もした。でもこうも考えてしまう――もっと小さい頃からペンを握っていれば、と。対して沙優は折角長年新体操を続けていたのだから、本人が思っているよりも上達はしているはず。アドバンテージがあるのに、どうしてそのまま頑張らないんだ。
 そう、活を入れようとしたのだが。
「だって光と一緒にいた方が楽しいんだもん」
 クソ、そんなこと言われたら何も言い返せないじゃないか……!
 せめてその言葉、俺の目を見て言ってくれたら良かったのに。そんな悔しさに近い不思議な不満に突き動かされて、俺は沙優の姿勢の良い背中めがけて飛びついた。胸と背中をくっつけると、服越しに彼女のぬくもりが伝わってくる。
 と、その背中が突如逃げるようにへにょんと前に倒れた。車のリクライニングシートの逆折り版のようにだ。
「うおっ」
 沙優にのしかかった風になってしまったために俺は慌てて退いた。しかし沙優は苦しむこともなく不敵に笑う。
「ふっふっふ。身体の柔らかさだけは自慢なのです」
 今の沙優を上から眺めたら、鳥の三指の足跡に例えられるだろう。腹と顎をベッドにぺたんとくっつけて腕を前に伸ばし、難なく漫画を読み続けていた。俺は目を剥いてしまう。
「俺、身体固いから絶対無理だ……流石だな」
「仮にも経験者だからね。なめないでよねー」
「他にはどんなこと出来んの?」
 興味からそう尋ねると、沙優は「んー」と唸りだす。
「見せてあげてもいいけど……普通のカッコじゃあんまり気合入んないんだよね」
「つまり?」
「レオタード。新体操で着るやつじゃないと」
 何気なくつぶやかれた単語に、図らずも鼓動が高鳴った。沙優は今どんな表情をしているのだろう。
 ……少し、掘り下げてみようかな。
「その格好なら、技とか見せてくれんの?」
「んー……まあ、そんなに見たいなら」
「そんなに見たい」
「……光、なんか急に積極的。どうしたの?」
「ど、どうもしねぇよ?」
 ようやく漫画を伏せたかと思うとジト目で睨まれ、動揺を必死に押し殺す。だって、まさか言えないだろ。「ただ、沙優のレオタード姿が見たいだけ」なんて。
 ……あれ? 突然沙優がそっぽ向いた。しかもその肩が小刻みに震え出す。何だよ、怒らせるようなこと言ったか?
 唐突に訪れた静寂。俺は何となくいたたまれなくなり、視線を部屋の方方に漂わせる。するとある重大な事実に気がついた。
「――やべ。時間だ」
 壁掛け時計の針は既に八時を回っていた。俺は金曜日の夜には重要な用事があるので、この時間には無理にでも沙優を帰さねばならない。
「今日はご両親の帰りは遅いんでしょ? もうちょっと一緒にいようよ」
「そうだけど……ごめん」
 困ったようにねだってくる沙優に頭を下げる。沙優との時間とそれとは、同じ重要度の天秤にかけることが出来ないのだ。俺だって心苦しいさ。でも……。
 彼女はふう、と息をつくと、「分かった。またね」と立ち上がった。俺は沙優を玄関まで見送ると、急いで部屋に戻った。
 手早くパソコンを立ち上げ、インターネットブラウザとイラストソフトを起動する。それからとある掲示板を開き、慣れた手つきでこう打ち込んだ。
『ブライト:こんばんハイグレ! これからお絵かき配信を始めますので良かったら来てください!』
 途端に吹き荒れる「待ってました」のレス。生配信サイトに自分のPC画面を写しこみ、準備完了。すぐに視聴者数が二桁に突入したので、俺はコメント欄に『では始めます!』と入力し、電子ペンを執った。
 そして昨夜描きかけたオリジナルキャラクターのペン入れを再開する。愛らしい女の子が大股を開け、笑顔でハイグレポーズを楽しんでいる絵だ。
 ……こんな自分を必要としてくれる。それが俺にとって何にも代えられないくらい嬉しかった。

 俺が初めて「ハイグレ」というジャンルを知ったのは中学時代。その少し前にとある深夜アニメにどっぷりとハマった俺は、何の気なしにそのアニメキャラの画像を検索していた。アニメ本編では強敵との戦いに身を投じる女の子三人チームだったが、二次創作絵では本編からは想像も付かないような彼女たちの姿がしばしば描かれていた。日常絵、百合絵、そしてR18な絵も。お年頃だった俺は、白状すると年齢を10ほど偽っていかがわしい絵を閲覧したりもした。
 その中に、俺の運命を変えた絵があった。チームがハイグレ魔王とかいう敵に負け、洗脳され、ハイレグ水着姿になって「ハイグレ!」とおかしなポーズをとっている絵。凛々しかったリーダーは完全に快楽に屈服し、大人しい子は顔を赤らめ堕ちる寸前、正義感の強い子だけは辛うじて洗脳に抗っている、そんな場面。
 これを見た瞬間、言葉で表せないほどのショックを受けた。強く、誰にも負けないはずの彼女達が次々に敵の手に堕ちていく衝撃、こんな無様で間抜けな格好とポーズを喜々として行うようになってしまう変貌具合、そうはなるまいと必死に抗うも徒労に終わる儚さ――ハイグレの全てが、俺の目には魅力的に映った。
 俺は検索ボックスに「ハイグレ」と入力し、たくさんのハイグレ作品を漁っていった。そしてハイグレ趣味を持つ人々が語らう場も見つけた。夢中になって画面に食いついた一晩のうちに、俺のハイグレ洗脳は完了していた。
 次の日俺はハイグレ絵描きに挑んでみた。しかし絵心皆無かつ美術の成績1の俺では、人とも思えぬクリーチャーしか創れなかった。俺はその絶望を糧に奮起し、いつかハイグレ絵師として先駆者たちに肩を並べようと絵の練習に勤しんだ。
 初めてネットにハイグレ絵をアップロードしたのが中学三年生。例の三人チームのハイグレ絵だった。まだまだ力不足とはいえ当時の俺の最高傑作。ちなみにハンドルネームは、自分の名前を安直にひねっただけの『ブライト』。はてさてどんな評価がされるか期待と不安が入り混じった心地で眠り、翌日確認すると――『いいね!』『この絵柄結構好き』『三人組最高』――短いながらもポジティブなコメントがそこにあった。
 これで俺もハイグレ絵師か……! そう思うとニヤニヤが止まらなかった。コメントと閲覧回数を励みに、俺は様々なキャラをハイグレ人間にしていった。
 投稿を続けるうちに、俺は純粋に絵を描くことに楽しみを見出しつつもあった。そこで俺は高校に進学したのを機に漫研に入部した。漫研は、漫画やイラストを描いて冊子作りをする派と、漫画などを読んだりその感想を言い合う派の二派に分かれており、俺はハイグレ絵師という身分を隠しつつ描く派に入った。俺以上の絵描き歴を持つ人たちばかりの中で俺のヘタクソな絵はかなり浮いていたが、技術向上のためとめげずに頑張った。
 部長――入部当時は副部長――に指摘された裸の絵の多さは、言わずもがなハイグレ絵のためだ。ハイグレポーズは、普通のイラストではまず目にかかれない態勢をしている。且つ、ハイレグ以外はほとんど裸体と大差ないため、人体をよく理解していないとしっかりと描くことが難しい。だから学校では裸の女の子の絵を量産していたのだ。あとは表情の練習なんかも。
 そんな、基本的には女子に避けられるような俺の絵を、いつも対面に座って食い入るように見つめてくる部員がいた。それが隣のクラスの宮本沙優だった。
「……あの、宮本さん?」
「ん、なに?」
「そんなに見られてると、描きづらいんだけど……」
「私のことは気にしないでいいよー。続けて続けて」
 入学当初の第一印象は、多くの男子の例に漏れず「可愛い」というもの。偶然同じ部活となると「随分警戒心の無い子だな」という印象に変わった。この子は自分がモテることに気づいていないんだろうか。「宮本さんを独占するな」という力強い視線が、時折俺に浴びせられるのが気まずかった。
 まあ、結局は本当に独占することになってしまったのだけど。
 俺が沙優と付き合うようになった話にドラマチックなことは特に無い。毎日のように部室で顔を合わせ、マンガやアニメやゲームの話をして盛り上がって……美人だからとか関係なく、この子と一緒にいたいと思うようになったから告白した、ただそれだけ。「こちらこそよろしくね、光」とはにかむ沙優の顔に、もっともっと惹かれたくらいだ。
 学校内ではこの関係は秘密にしよう、と持ちかけてきたのは沙優の方だったが、正直俺も安堵した。俺なんかが沙優と付き合っていると知られたら、おちおち夜道も歩けなくなるし。

 これが、俺と沙優との二人の秘密。
 そして俺がハイグレ絵師・ブライトであることは、彼女にも話せていない俺だけの秘密。
 そりゃ、カミングアウトして受け入れてもらえるのが一番に決まってる。でも、こんな常識離れした性癖を暴露したなら、誰だってドン引きするに決まってる。引かれるだけで済めばいいがフられる危険だって充分ある。ハイグレフェチの彼氏が、いつか自分にもハイグレを強要するのでは――なんて思われた時点でアウトだ。だから絶対にバレちゃいけない。
 ……本当は、沙優のハイグレ姿も見たいさ。俺の前でハイグレしてくれたら、と思ったことも一度や二度じゃない。
 というか、今ディスプレイに映っているオリキャラのモデルは沙優だ。彼女をハイグレ人間にすることに胸がチクリと痛まないでもないけど、そうでもしなきゃ俺の鬱憤は晴れそうになかった。
 不意にピロン、と配信ページのコメントが更新される。
『名無し:ブライトさんいつもお疲れさまです! ところでこの子に名前とかあるんですか?』
 この人は昨日の配信には来ていなかったのかな。まあ、質問には答えておこう。
『ブライト:ありがとうございます! この子はサユと言います。高校二年生で学校の人気者という設定です』
 文字を送信したところで、ふと沙優のチャームポイントである頬のほくろをまだ打っていなかったことに気付き、クリクリと黒で描き込んだ。絵の中のキャラが一層彼女に近づいて、ひとりぼっちの部屋で俺はニマニマと笑った。
 ……俺は今、俺の好きな人をハイグレ人間にしているんだ。洗脳するんだ、沙優を。あの可愛い沙優にハイレグを着せる。あの小柄な身体でハイグレポーズをとらせる。あの屈託の無い笑顔を、ハイグレを心から楽しむ笑顔に変える。あの良く通る声でハイグレと言わせる。そう、俺が沙優をハイグレ人間にする。沙優を。沙優を……!
 目の前で作り上げられていく、ハイグレ人間の沙優。線画が書き上がったら次は色付けだ。さて、沙優には何色のハイグレが似合うだろう。一頻り悩んで、俺はキーボードを叩く。
『ブライト:サユのハイグレの色、どなたか希望はありますか?』
『名無し:薄めのピンクで』
 まるで待機していたかのような反応速度で、その名無しさんはレスをくれた。後に続く数人もピンク系統のリクエストが多かったので、俺は『了解です』と返して薄ピンクを選択した。無色だったハイレグが綺麗な桜色に染まった。
 続けて丁寧に、しかし手際よく各所を彩色していく。まるで彼女をメイクアップしてあげているかのようだ。暖かな色を持った二次元の沙優は、今にも彼女の声で「ハイグレ」と言ってくれそうな気さえした。
 そのうちコメント返信も忘れて、俺はイラストに没頭していった。
 お絵かき配信を始めて一時間以上が経過している。俺はほとんど無意識だった。我を忘れて絵に集中するあまり、自分の口の動きすらも制御できていなかった。
「さゆ……沙優……ハイグレ、人間に……沙優も……沙優ぅ……っ!」
 まるで世界には俺一人しかいないかのような、トリップ状態。
 ――だから、誰かが闖入してくることなんて、想定もしていなかったわけだ。
「……なに、描いてるの?」
「っ!?」
 聞き慣れた声が背筋をぞわりと撫で上げた。俺の心臓はまるで爆発したかのように大きく弾みだす。頭だけでなく目の前まで真っ白に染まり、サユの映ったディスプレイが霞の向こうに消えた。
 ……どうして? どうしてだよ。
 声の主が彼女であることくらいすぐに分かった。だからこそ思う。沙優は配信前に帰したはず。互いの家を一往復してもなお余るくらいの時間が経っているのに、どうしてここにいる。
 振り返ろうとした首から顎にかけてを、彼女の両手にガシリと抑えられてしまう。俺は画面以外を見ることを許されず、背後から詰問を食らう。
「もう一度聞くよ。光、なに描いてるの?」
「……絵だよ」
「どんな? 誰の?」
「……」
 俺は答えられない。俺の心の一番奥深くに根ざしているハイグレという性癖を、他ならぬ大好きな人に俺の口から説明するなんて出来るはずがない。
 思えば沙優はいつからうちに戻ってきていたのだろう。もしや無我夢中で絵を描いていたところも、コメント返信していたところも見られていたのだろうか。
 ……沙優はどこまで知っている? 俺はどう切り抜ければいい?
 二重の意味で上手く回らない頭を必死に使って、打開策を考える俺。しかし直後、沙優によって無慈悲な一槌が下された。
「……その絵、私でしょ?」
「!?」
「私、光にこんな風に見えてたんだね。うん、可愛く描けてることは評価するよ。けど、一つ言わせて」
 もうどうしようもない。俺は、言い逃れ出来ないくらいに絵を沙優に似せてしまった自分を恨んだ。次に沙優の口から告げられるのは軽蔑の言葉だろう。もしかしたら別れの言葉かもしれない。どちらにせよ全部終わりだ。
 沙優……俺にはもったいない彼女だった。綺麗で優しくて明るくて、どうして俺に興味を持ってくれたのか不思議なくらいの子。
 でも、これでよかったんだ。俺のハイグレフェチを隠したままもっと進んだ関係になっていたら、もっと沙優を傷つけ失望させたかもしれない。俺も今以上に窮屈な思いをしただろうし、下手すると我慢がきかなくなって沙優に無理やりハイグレを強要したかもしれない。だから、今バレてよかった。そう思うしか……ないじゃないか。
「ごめん、沙優。俺は……っ!」
 ぽろり、と。口からは謝罪が、目からは涙が零れた。頬を伝った雫は、沙優の暖かな手に沿って軌跡を変える。
 すると。
「――ぷっ! あはははっ!」
 突然彼女は吹き出した。
「光、泣いてるの? ウソでしょ? あはは!」
「だ、だって……!」
 何なんだ。何なんだよ。沙優が何を考えてるのか、全然分からない。
 互いに言いかけていた二の句を先に継いだのは、沙優の方だった。
「――私の勝ちだね」
「は?」
「光は自分が意外と隙だらけだってこと、自覚した方がよかったかもね。身バレとか考えなかったの? ……ま、普通は考えないよね」
 すっと沙優の手が離れる。矢も盾もたまらず後ろを振り返った俺は目を疑った。
 沙優はそこに、いつもと変わらない笑顔を浮かべて立っていた。
「ほら光。私のこと、いっぱい見ていいよ。それとも、やっぱりこのポーズがいい?」
 薄ピンク色の、薄手のハイレグ一枚だけを身にまとった、あられもない姿で。
「ハイグレっ!」



   《私の秘密》

 ……私、光に会えたことは運命だと思ってるんだよ。

 あんぐりとだらしなく口を開いて、光は私に釘付けになっていた。
 まあ、しょうがないよね。だって私は今、光がずっと見たがってたハイレグ姿になってるんだから。
 身体に張り付いてラインを強調する衣装には、新体操の長袖レオタードで慣れている。裸とは紙一重でも裸とは違うんだから、人前に出たって恥ずかしくはない。それは心身を引き締めて試合に望むための、勝負服。
 でも、今は全部が正反対。袖なしで限界まで切れ上がった、薄ピンク一色のハイレグレオタード。ちょっと刺激が強くて、性的な。でも、私と光にとっては別の意味を持った特別なコスチューム。そんな私を光が見てくれている……それが嬉しくて仕方ないの。胸の奥にある魂みたいなものが、ぷるぷると震えているのが分かる。
 彼の秘密を暴いちゃった。そして私の本当の姿を、遂に彼に晒しちゃった。
 光と付き合ってもうすぐ一年。私たちの間には、恋人らしく愛を確かめ合うような行為はほとんど差し挟まれることがなかった。しかしそれは決して、恋愛関係が成立していないからでも光が奥手で意気地なしだからでもない。
 私は知っていた。絵の初心者である彼の裏の顔が、ハイグレ絵師さんだってこと。
 それが分かっていたから、私は安心して光の隣にいることができる。光なら、私の秘密を知っても受け入れてくれると確信が持てたから。
 ……私の秘密はね、光。ハイグレを着てハイグレすることが大好きな、ハイグレ人間だってこと。

 私は教育熱心な両親の元に生まれた。その証拠に物心付く前から私は、幼児向けの塾やピアノに始まり、水泳に絵画にその他と休む暇もなく連日様々な習い事に通ってた。できなかったことができるようになるのは楽しかったし、先生や親に「頑張ったね」と褒められるのは嬉しかった。だからどの習い事も、全く苦にはならなかったんだ。
 その中で一番上手にできて興味が持てたのは、新体操だった。
 小学生にも満たない頃の新体操なんて、ただリボンやボールと戯れるだけのお遊戯会みたいなもの。でも、可愛いレオタードを着てみんなと一緒に練習の成果を披露する、それが楽しかった。集団演技で初めてセンターで踊ったときには、まるで私こそが世界の中心にいるみたいにも思えた。それからは、少しでも目立てるように頑張るという目標もできた。舞台に立つ私を、親に早く見つけてもらえるように。
 だけど親にとって私は、素直な――従順で歯向かうこともなく、順調に技能を身に着けて成長する――良い子だったんだと思う。実は当時の幼心にすら漠然と、私は親の期待を背負わされた操り人形なんだ、ってことを理解してた。けれどそれを口にすることは絶対にできなかった。どんな理由があるにせよ、私の今の楽しい生活は両親のおかげで成り立っているのだから。機嫌を損ねたら捨てられちゃうかも……そう思うとこの立ち位置から逃げ出すなんて考えられなかった。
 小さな胸の奥底に、もし私が今の私じゃなくなったら、どんな私になっちゃうのかな――そんな小さな反抗心っていうか、現実逃避に似た感情が芽吹いていた。
 それが実感を伴って私の心を締め付けだしたのは小学生になってすぐの頃。新体操クラブに、とある同い年の女の子が入部してきたときだった。小学校に上がったとき、親は私の能力と将来を考えて習い事を新体操と学習塾の二つに絞った。その直後、私は新体操で挫折を味わった。
 初心者であるはずの彼女はまるで乾いたスポンジのように、少しの練習でみるみる技術を習得していく。対して私は、お遊戯から本格的な競技の練習へと内容がシフトした途端に、何故か全く上手くいかなくなっちゃった。先生に構ってもらえるのは彼女。個人競技のトリを飾るのも彼女。「私が一番上手なんだ」「練習を頑張れば本番で目立てる」って自信が、音を立てて崩れていった。
 一年くらいの間は私も悔しくて必死に練習したよ。でも、あのとき私の心は折れちゃった。
 小学一年の冬の競技会、個人演技。リボンをたなびかせて踊った私。こん棒を器用に操ってみせた彼女。多くの出場者の中、順位は私が二位、彼女が一位だった。またしても彼女に敵わなかったのは悔しい。だけどせめて、親にくらいは「二位だって凄いよ。よく頑張ったね、沙優」って演技を褒めて、慰めてほしかったんだよ。
 ……その日、両親は仕事に行っていた。どうせパッとしない成績だろう、と初めから見切られていたんだ。
 私は新体操への思いと、今まで作り上げてきた『私』を失った。
 両親に「新体操やりたくない」と告げると、思いとどまらせようともせずに解約の電話を掛けた。そうして二年生に進級し、ようやく私は人並みの小学校生活を送るようになった。友達もでき、おしゃべりをしたり鬼ごっこやボール遊びをするのは本当に楽しかった。
 だけど、心は何故か完全には満たされなかった。
 同年秋。ちょっと遠くの大きな自然公園へ、全校遠足。色んなオリエンテーションや遊具で体をいっぱい使って、みんなクタクタになった帰り道。クラス単位で貸切ったバスのガイドさんが「疲れちゃったら寝ても大丈夫ですよ。寝れなくて暇だな、って人のために、映画のビデオを流しておきますね」って言うと、バス内前後のテレビ画面にアニメが表示された。
 ――それが、私とハイグレの出会い。
 疲れたとは言っても習い事で体力だけは付いている私。映画前半の日常シーンで友達が次々に脱落していく中、私は冴えた眼で映画を視聴し続けた。
 海岸での不思議体験を終え、家に帰る一家。その翌朝のテレビに写っていたのは、日常とはかけ離れた光景。
『全国の皆さん、東京は今や異星人の侵略による、一大危機に瀕しております! えー、私は異星人の攻撃を掻い潜り、彼奴らの支配下に落ちた新都心、新宿の街に潜入することに成功しました。……貴重な映像を、どうぞ御覧ください……!』
 男性レポーターが緊張の面持ちでカメラを覗きこみ言うから、感情移入していた私までドキドキしてしまう。そして。
『『『ハイグレッ!! ハイグレッ!! ハイグレッ!! ハイグレッ!! ハイグレッ!!』』』
 ……なに、これ……!
 俯瞰の画面内にギリギリ人と分かるような人がたくさんいて、全員が例外なくおかしな格好でおかしなポーズをとっていた。極めつきにこの「ハイグレ」とかいうセリフ。この映画、そんな話じゃなかったはず。普通じゃないよ。私は慌てるけれど、レポーターはもっともっと慌てていた。
『だあぁ!? 見つかった! ……えー、全国の皆さん、私は侵略者たちに囲まれています! 私は、私は――た、たった、助けてくれぇ! アクションかめぇぇぇん!』
 大の大人が情けなく逃げ出した、その背中にピンクのビームが一発。上空を写したカメラに向かって今度は一斉照射。二回の悲鳴と乱れた画面が収まると、男とも女ともつかない声が言った。
『ホッホッホ! 地球人よ。早くアタシたちのハイグレ銃を浴びて、ハイグレにおなりなさい……!』
 ……ハイグレに、なる?
 私の疑問はすぐに解消された。先程のリポーターが、まさにそのハイグレになったところだったのだ。
『ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! みんな、ハイグレを着ようっ!』
「ぁ……っ」
 ドクン。
 その瞬間。私はハイグレにときめいた。他にどう言い表していいかなんて分かんなかった。胸の奥がキュっときつくなって、おでこの辺りがボーっと熱を持って、身をよじってももどかしさが晴れないような思い。
 さっきまであんなに怖がっていたハイグレにされちゃって、しかも意志に反して視聴者にハイグレを勧めるようになっちゃう。あの人はハイグレ銃を浴びて、元のあの人じゃない人になっちゃった。
 ……私も、ああなりたいな。
 今までの自分を全部捨て去って、違う自分に生まれ変わる。誰もが同じ姿で同じ動きをするだけの、平等な世界で生きていく。例えば――。
『『『ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!』』』
 このバスにいる四十人全員がハイグレ人間で。
『『『『ハイグレ!! ハイグレ!! ハイグレ!!』』』』
 学校に帰って解散前の集会をする全校児童何百人がハイグレ姿で。
『『『『『ハイグレ!!! ハイグレ!!! ハイグレ!!!』』』』』
 父と母も、新体操教室の子も、通りすがりの人も、日本中世界中の人間がハイグレをする世界。
 ハイグレ、という単語が頭の中でぐわんぐわんと繰り返し響く。目は画面に釘付けにしたまま、私は両手をスカートの上に乗っけて、
「……イ、グレ……ハイ、グレ……」
 隣の席で眠る友達の女の子を起こさぬように注意して、だけどしっかりと自分の意志でそう呟いてみた。もちろん手も少しだけ動かした。
「……っ!」
 私は息を呑んだ。ハイグレポーズの真似をするだけで、もやもやとした何かが一気に消えてなくなった気がしたのだった。
 私は八歳にして、自分のあるべき姿を見つけてしまった。――私はハイグレ人間。ハイグレ人間の宮本沙優なんだ、って。
 いつの間にか映画のシーンは研究所へ。慣れ親しんだキャラクターたちが次々にハイグレ人間に変わっていく。それを私は内心で狂喜乱舞しながら観ていた。普通なら悲しんだり怖がったりするところかもしれない。でも既に私の価値観では、キャラクターたちはハイグレに祝福してもらえたのだとしか思えなかった。
『よし、追うわよ!』
『『ラジャー!』』
『『『ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!』』』
「うわぁ……!」
 思わず嘆息してしまうほど、理想的な光景。二列に整列してハイグレする、色とりどりのハイグレ人間たち――そこで画面が停止した。
「もうそろそろ学校に着くから、映画はここでおしまいにしましょうね」
 ええー! これからどうなるのー!? というクラスメートたちの不満の声に、バスガイドさんは困り顔になる。
「続きが気になる人はレンタル屋さんに行ってみてくださいね。それでは今日は、お疲れ様でした!」
 だけど私は、続きを観ようとは思わなかった。きっとこの後ハイグレ魔王さまはアクション仮面に倒されて、世界が元通りになってしまう。そんなお約束に気づかないほど、私は子供じゃなかったから。
 家に帰り、私が最初にしたのは当然、クローゼットを漁ることだった。奥の方にはサイズが小さくなったり、擦れて生地が薄くなったレオタードがいくつも残っていたはず。果たして記憶は正しかった。
 懐かしいデザインがたくさんある中から、一年前まで着ていた練習用のノースリーブのものを取り出す。確か母に「これ可愛い!」とねだった薄ピンク一色のもの。母は「こんな無地のがいいの?」と首を傾げていたけど、私は自分でも理由が分からないままそれに心惹かれていた。……今思えば、その頃から私にはハイグレ人間になる資質があったのかもしれないね。
 どうせもうこれを着て演技をすることはない。だから私はハサミを持ってきて、躊躇いなく足口に刃を立てた。ほんの少しだけ抱いた罪悪感はすぐに興奮に埋もれてしまう。ジョギ、ジョギ、という音とともに、ローレグだったレオタードが無慈悲に裁断されていく。
 数分後、レオタードは理想の形に生まれ変わった。今まで着たこともないえげつないハイレグを前に、もの凄い達成感を覚える。
「やったぁ……!」
 独りごちる私の口はニヤニヤしっぱなしだっただろう。私は湿った服や下着を脱ぎ捨てて、一気にそれを引き上げた。
「ん……はぅ……」
 思わず嘆息してしまった理由は三つ。一つは今となってはサイズ違いのレオタードが身体を締め付けてくるから。もう一つは下腹部から腰にかけての解放感がくすぐったかったから。そして最後は、
「私……ハイグレ人間……」
 クローゼットの扉の裏にある鏡の中を覗きこむ。そこに映った私は、映画で見た彼らと全く同じ格好をしていたのだった。
 私が両手をハイレグ線に沿わせると、鏡の中の私もそうする。私が腰を少し下げると、やはり鏡の私も体勢を落とす。こんなの当然のことなのに、何だかとても愉快だった。すると、
 ……早くハイグレしなきゃ。
 そんな使命感が、ふっと心の奥から湧き上がる。だから私は、私の中の私に応えた。
 ……うん、そうだよね。だって私は――。
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 ――この瞬間、私のハイグレ洗脳は完了した。

「その日はお母さんが帰ってくるまでずっと、ハイグレ姿でいたと思う。ハイグレポーズをずっと続けるのって意外としんどくって、本当は十分もやったらヘトヘトになっちゃうんだよ」
「お、おう」
 実体験を元にした具体的な時間を言うと、光はどう反応したらいいか分からないといった様子で生返事をした。
 光の前にハイグレ姿を晒した私は彼に「ずっと話したかったことがあるの」と切り出した。光はお絵かき配信を中断して、おっかなびっくり頷く。混乱している光に納得してもらえるよう、私は幼少期から順番に、私とハイグレとの出会いを語り始めたのだった。
「ちなみに」
 と私は持参してきた紙袋をまさぐり、薄ピンクの子供用レオタードを取り出してみせた。生地はクタクタに伸びきり、所々白い粉が吹いてしまっていた。足ぐりの縁はひどく波打っていて、拙かったハサミ扱いが表れていた。
「これがそのときのレオタード。だいぶ劣化しちゃったけど、これだけはどうしても捨てられなくて」
「……好きなのか? ピンク」
 光がそう尋ねてきたのは、今私が着ているハイレグも同じ色だからだろう。
「うん。まあ私だって普通に女の子だから」
 普通の女の子はハイレグなんて着ない、ってのは置いておくけれど。
 懐かしのレオタードを畳んでしまい、私はベッドに腰掛けて思い出話を再開した。

 数日後、私は親にこう頭を下げた。「もう一度新体操をやらせてください」って。もっともらしく「身体を動かすのはやっぱり楽しいから」と理由はつけたけど、内心では一番の目当てはレオタードだった。新体操を続ければ、新しいレオタードを買ってもらえる。ハイレグでないにしろそれに近い格好で、人前に立てる。そっちのほうが大きかった。
 でも、新体操での能力に見切りを付けられ、一年のブランクも空いてしまっている。そんな私を今更新体操に通わせ直すなんて、親にとってはお金の無駄でしかなかった。難色を示した親を説得してくれたのは、新体操教室の先生と例の彼女だった。「沙優ちゃんと彼女は互いに高め合えるライバルなんです」と、今からでも私にもチャンスはあると言ってくれた。嬉しかった。まだ私を認めてくれる人がいたってことが。
 こうして、私は新体操教室に復帰した。確かにあの子には一度だって勝てやしなかった。それでも本気で打ち込むうちに、身体を動かすことの面白さや一生懸命頑張ることそのものの楽しさを知ることができた。それは多分、誰かと勝負をしたり、誰かを振り向かせることよりももっと根本的に大事なこと。
 自分が楽しいから、自分のためにする。それでいいじゃん、ってね。
 そう――私が孤独なハイグレ人間だってことも、同じように思うことで少しは寂しさが和らいだ。
 あの遠足の翌日以降、私は友達に映画の感想を聞いて回ってみた。だけど誰の口からも、「ハイグレ人間になりたい」なんて言葉は飛び出さなかった。実際、寝ずに見続けていた人を見つけるのすら難しかったけど。また、新体操教室の方でも映画を知っていないかとさり気なく話を振ってみたけれど、結果は同じだった。
 映画ではあんなにいたハイグレ人間も、この現実の世界では私一人。この思いを分かち合える人は、どこにもいなかった。
 小学生の世間って、狭いから。でも少しは希望を持ってたんだよ。ハイグレ人間になりたいなんて思う私は普通じゃないけど、同じような人はこの世界のどこかに絶対にいるはず、って。
 そして私は最寄りの公立中学校に上がった。代わり映えのしない友達、相変わらずまずまずの新体操。一つだけ変わったのは、親が私にスマートフォンを持たせてくれたこと。それが私の世界を広げてくれた。
 今の時代、小学校でもインターネットの使い方や怖さは学習する。同時に、その利便性も。私がネット環境を手に入れて最初に検索したワードが『ハイグレ』だったのは、しょうがないことだったと思う。
 これで何も検索されないなら、本当に私は一人きりだ。その可能性を考えると手が震えたけれど、意を決して検索ボタンを押した。
 結果は光も知ってるでしょ。私だけじゃないんだ、ってすごく安心した。この世界には、たくさんの仲間がいた。絵とかコラージュとか小説とかのハイグレ作品を、時間が許す限りに見て回った。ハイグレについて語る掲示板もいっぱい読んだ。今まで悩んでいたのがバカみたいに楽しかったよ。
 そのうち私はとあるサイトを見つけた。きっかけはハイグレを着て楽しむ人が男女関係なく集まる、着用掲示板の書き込みだった。『どこそこの通販サイトでハイグレを買った』と。早速そのサイトに行ってみた私は、画面に映し出されたサンプル画像にうっとりと溜息を吐いた。
 そのサイトはこの時代には珍しい、ハイレグレオタード専門店だった。サンプルの女性はみんな見事にハイレグを着こなしていた。ヒョウ柄とかの柄物以外に何十色もの単色ハイレグもあって、形も映画のものそっくり。まさに理想そのものだった。今も手製の似非ハイグレを着ている自分が、恥ずかしくなるくらいに。
 私は迷うことなく一ヶ月分のお小遣いを全額はたいて、ハイレグを買った。色はやっぱりピンクだった。……郵便局留めって便利だよね。おかげで親に知られることもなく、通販で購入できるんだから。
 袋に厳重に包まれた商品をドキドキしながら家に持ち帰り、開封する。中から現れたのは、夢にまで見たハイグレそのもの。少し膨らんできていた胸に吸い付くような肌触りも、全身を美しく露出させるデザインも、全部が想像以上だった。その『本物の』とまで言えそうなハイレグ姿でハイグレポーズをしてからは、ますますハイグレ人間としての自覚が強くなった。
 ……リアルが充実していることを「リア充」って言うなら、当時の私は完全な「ハイグレ充」だったと思う。私のハイグレの数は数カ月おきに増えていくし、職人が新たな職人を呼ぶようにハイグレ作品はものすごい勢いで増えていったよね。

「その中の一人が、ブライトさん――ううん、光だった」
「や、やっぱりお前、俺のこと知って……!」
 あからさまに顔を引きつらせた光に、思わずクスクス笑ってしまう。
「最初は絵、ほんとに下手だったよね。でもシチュエーションとか素敵だったし、頑張ってほしかったからたまにコメントもしてた」
「マジか……」
 反論したそうな、でも褒められて嬉しそうな複雑な表情。こういう光の素直になりきれないところが、また可愛い。一人の人間として、大好きなところ。
「絵の感じとか、コメント返信の文面とか、話題や題材とかから、何となくブライトさんは私と同い年じゃないかな、って感じてたよ。アカウントの年齢が25歳になってたから丁度10歳サバ読んでるとしたらピッタリだし。……大正解、だったね」
 光はぐぬぬと歯ぎしりしながら私を睨む。何だかこうやって相手の秘密を暴いていくのは、探偵みたいで気分がいい。
 すると、
「だ、だとしても、じゃあ、何で同じ高校に……同じ漫研に……!」
 光の口調には、もうそれしか言うことが残っていないというような諦めが混じっていた。まあ、ここまでの話を聞いていただけだったら、私がネットストーキングしてリアルを特定したみたいだもんね。
 だからその疑いだけは、きっぱり否定させてもらう。
「偶然」
「……は?」
「偶然、たまたまなんだってば。一応、私立じゃなく都立高を受験するっぽいことや、進学したら漫研に入りたいとか呟いてるのは知ってたけど……それだけ。私は新体操を続けながらでも通えそうな偏差値の都立で、漫研がある高校を選んだだけ。もしも推測が全部当たってても、確率的にはあり得ないレベルなのは分かってた。それでももしかしたら万に一つ、ブライトさんと一緒になれるかもしれないでしょ? そしたらね――」
「――本当に、そうなっちまったのか」
 震える声で光は台詞を継いだ。私は彼の目を真っ直ぐ見て、コクンと頷く。
「……私、光に会えたことは運命だと思ってるんだよ」
「沙優……」
「部室で初めて光の絵を見たとき、すぐ分かった。あ、ブライトさんだ、って」
「あのときか……俺も覚えてる。『気にしないで』っつわれたって正直気にしないでいられなかったし」
「どうして?」
 といたずらっぽく迫ると、すっと視線を逸らされた。光、ちょっと頬が赤いんじゃない?
 光は言い出しづらそうに唸りながらも、何とか吐き出す。
「だって、沙優はさ……気づいてないかもしれねぇけど、お前って、男子にすごい人気あるんだぞっ」
 ガタン、とコロ付きの椅子を鳴らして勢い良く立ち上がった。完全にのぼせ上がっているみたいで、彼が告白してきたときを思い出した。
「勉強も運動も出来るし、人付き合いもいいし、か、可愛いし……本当に何で俺ばっか構うんだろうって。それに今だって、俺なんかが、本当に付き合ってていいのかってくらいで! 俺、俺は……!」
 それを聞いた瞬間、私の中の人間の部分がとうとう我慢の限界を超えてしまった。
「――ちょ、さ、沙優!?」
 ……光に会えてよかった。私が好きになったのが、光でよかった。
 私は気持ちに突き動かされるままに、光の胸に飛び込んだ。ピンクのハイレグ一枚のまま、彼に縋り付いた。女の子よりもがっしりとした男の子の体だ。微かに漂ってくる体臭も、決して不快ではない。
 光の心臓の音が聞こえる。ドクン、ドクン。私のもきっと届いてるはず。ドクン、ドクン、ドクン。
 ……こんなに近くに、君がいる。それがとっても嬉しいの。
「光だから、いいんだよ。ううん、光じゃなきゃイヤ」
「何で……そんなこと、言ってくれるんだよ……!」
 光の両腕は震えていた。私を抱きしめていいのか、迷っていた。……はぁ。意気地なしには、やっぱりちゃんと言ってあげなきゃいけないみたい。
「だって私、ハイグレ人間だよ? 普通の人間の彼氏となんて一緒にいられないよ。ハイレグ姿でハイグレポーズする子なんて、ドン引きでしょ?」
「多分、それが普通なんだろうな」
「ほら。光はそう言ってくれる。こんな変態な私を認めて、受け入れてくれる。……でしょ?」
 私は首を上げ、光と至近距離で見つめ合った。それでやっと決心がついたようだった。U字に開いた私の背中に、光の腕が回る。
「もちろん、受け入れるよ」
「うん……」
 彼に包まれ、その温もりをほとんどダイレクトに享受しながら、私はもうお役御免となった不安を吐き出す。
「……ほんとはもっと早く打ち明けたかったんだ。99%、ブライトさんは光だと思ってたけど、もしかしたらタッチの似てる別人かもしれないし。でも、ほら」
 と、視線を描きかけの私が映った画面に向ける。光もそうして、「あ」と漏らした。
「まさかお前、あのコメントの中に」
「まあ私、光の彼女になる前からブライトさんのファンだし」
 光は、自分の秘密がどうしてバレたのかをようやく理解して、大きく溜息をついた。そして、
「……はぁ。見破られたのなら仕方ない。俺の完敗だよ」
 と、名言を添えて敗北を認めたのだった。私は「だったら」とニヤつく口を抑えようともせずに言う。
「――罰ゲームとして光もハイグレ人間になってみない?」
「はぁ!?」
 大仰に慌てふためく光。抱擁を解かれた私は、再び例の紙袋に手を突っ込んだ。
「どれがいいかなぁ……。それとも色くらいは自分で選びたい? 青か白なら新品あるよ。あ、他の色がいいなら私のやつの着回しになるからね。私は全然構わないけど」
「ちょちょちょちょっと待て! 何で俺が着ることになってんだよ! っつーかそのつもりで新品まで用意してたのか!?」
「嫌なの?」
 私がきょとんと尋ねると光はすぐに一度頷いたのち、そのまま首を横に傾けた。
「嫌……って言うか、本気で嫌なわけじゃないし、興味も全くないわけじゃないけどさ……」
「じゃあいいじゃんっ。はい、青」
 長々と煮え切らない返事しかしないので、私はさっさとビニール袋に畳まれた青いハイレグを押し付けた。光は困惑しながら渋々両手で受け取りつつも、封は開けなかった。クシャ、とビニールが音を立てる。
「……ごめん、今はまだ心の準備が出来てねぇ」
 ここで私がパンスト兵の立場なら、問答無用で光線を浴びせただろう。けど私はただのハイグレ人間で、光の彼女。彼が嫌がってるのなら強制は出来ないかな。
 でも、私は攻勢をやめてはあげない。
「じゃあ、いつかは着てくれるんだ?」
「まあ……否定はしない」
「変態」
「お前には言われたくねぇよ!」
「やっぱり光も、変態な彼女は嫌なんだね」
「え、いつの間にそんな話に?」
「嫌なんでしょ? ごまかさないではっきり言ってよ!」
「ええ!?」
 もちろん、私は本気で光の気持ちを疑ってるわけじゃない。だけどたまには、こんなときくらいは、光の口から確かな言葉を聞きたい。信じてるからこそ、確かめたいの。
 光は緊張をほぐすかのように数度深呼吸をしてから、私に向き直った。
「……俺も、沙優が彼女で良かったと思ってる」
「それだけ?」
 上目遣いでからかう。すると光は顔全体を茹で上がらせて、大声で叫ぶ。
「ああもう! 俺、沙優がハイグレ人間って分かって、もっと好きになった! これ以上隠し事しなくていいと思ったら、すごい楽になった! ハイグレ姿の沙優を見れて今、マジで幸せなんだよ! 俺ももう、沙優以外考えられねぇよ!」
 そして改めて、私は光に強く抱きすくめられた。
「俺、沙優のどんなことも全部受け入れる。だから俺のことも受け入れてほしい。ハイグレ絵師ってことも、男なのにちょっとハイグレ着てみたい変態なことも、全部っ!」
 さっきよりも倍も早く、光の鼓動が聞こえる。私の心臓も、同じくらい早鐘を打っている。
 私たちは、同じだった。ハイグレに目覚めて、でもそれを誰にもばれるまいと秘めていた。そんな二人だからこそ引き寄せ合った。これがハイグレ魔王様のお導きだと思えば、本当に素敵だなって。
 私は、露わにされた光の本心に満足した。やっぱり私、光のことが大好きだ。それが再確認できたことに感謝しつつ彼の背中に腕を回し、抱き返して応えた。
「うん。私も光のこと全部、受け入れるよ。……ハイグレ人間沙優は、私の全てを、君だけに捧げます」
「ああ。他の誰にも渡さないよ。沙優は俺だけのものだ。沙優のハイグレは、俺だけの特権だ」

 そして私と光は――ハイグレに魅入られた二人は今日、ようやく一つの存在になった。



「……あのさ。散々好きって言ってくれたのに今更聞くのもどうかと思うんだけどさ。じゃあ沙優は、俺のどこが好きなの? もしもハイグレを受け入れてくれる男がいたとしたら、俺じゃなくても良かったんじゃ……」
 帰り支度まで済んだ後。光は青いハイレグをタンスの奥に仕舞ってから、扉に手を掛けかけた私の方を振り向いて尋ねてきた。
 ……光には洗いざらい告白させちゃったけど。私は、まだ。
「恥ずかしいから、秘密」

   *完*





いかがでしたでしょうか?
自分のネタ帳の中には前々から、現代を舞台にしたハイグレ職人の話やハイグレが好きな女子の話はストックされていました。その「いつか書きたい」がボトさんの体験談によって確かな形を持ち「いま書きたい」に変わった、ただそれだけです
とにもかくにも優先したのは、ヒロインを可愛く描くこと。他の誰が何と言おうとこれが自分の理想だ! 文句あるか!
これが、過去に恋愛要素込の青春小説を書いたところ「恋愛したことない奴が書いたってリアリティなんて無い」と言われてガチヘコミした香取犬が送る青春恋愛(ハイグレ)小説です!
……あったもん。ちょっとはそーゆーことあったもん……
傷心の香取犬はさておき、後半の《私の秘密》編はもうしばらくお待ち下さいませ

なぜならそう、今週末にお題発表となる初の合同小説企画、『【第1回】ハイグレ小説書きさん合同企画』があるからです!
絵師さんばかり合同企画があっていいなーと羨ましく思っていたのですが、この度空乃彼方氏のお口添えと0106氏の人望の厚さによって遂に実現しました! 改めてありがとうございます!
企画の詳細は本家掲示板の企画スレをお読みいただければと思います。しかしこれは参加する小説書きさんにとっても、読者さんにとっても、楽しいイベントになることは間違いないでしょう。いやいや、その小説書きの端くれとして盛り上げてみせますよ!
自分が出したお題は『通信』ですが、その他続々と集まっているお題もどれも興味深いものばかりです。今からどれに決まってもいいように軽く案を練っているところであります

とりあえず週末までは本作の続きを書くことに致します。ではではー

p.s. 城プロREで今週火曜まで行われていたイベントで、若干の悪堕ち要素があってガッツポーズしたことをご報告いたします。今後もそういうイベントあるかもね(ステマ
 【一次更新16/05/26】



ボトさんの彼女さんへ

折角自分は「ボトさんの体験談を元に」とまでしか書いていなかったのに、ボトさんが自らコメントで「彼女」なんて単語を使ってくださったので、今回のあとがきはあえてこのような書き方をさせて頂きます。文句はボトさんに言ってください。なお内容はだいたいいつも通りかそれ以上に面倒くさい感じのあとがきとなっています

さて、彼から聞きましたが拙作を読んでいただき本当にありがとうございました。更に妄想たっぷりになってしまった後編ですが、お楽しみいただけたならば幸いです
もしよろしければ自分の他の作品、あるいは他の方々の作品も読んでいただけると書き手冥利に尽きます。丁度こちらで小説書き同士のハイグレ×料理小説企画など行っていますので、(衝撃的な内容も多いですが)ご参考までに

また、彼女さんが(ハイグレの?)小説を書こうとしているともボトさんが漏らしておりましたゆえ、彼を通じて「折角作品を作ったなら公開しなければただの時間の無駄になる」と伝えてもらったかと思います。今もお気持ちは変わりませんかね? 是非とも一度チャレンジしてみることをおすすめ致します

その流れで、今作で用いた文章上の工夫を恥ずかしながら幾つか紹介してみます

・章冒頭文にインパクトを持たせる
 《俺の秘密》冒頭文「鉛筆を走らせる俺は創造主。スケッチブックの上でだけなら」は五七五七七のリズムで読めます。読みやすい日本語文は三、五、七、文字で(文節を)区切れることが往々にしてあります。これを時々でも意識的に組み込めると、インパクトのある文が書けるかもしれません
 《私の秘密》冒頭文では沙優の心情を端的にまとめています。また本文中で改めて同文を用いることで、強引ではありますが伏線回収的な印象を与えようとしました
 どんな作品にせよ冒頭文は作品の顔ですから、一層気を遣ってみると良いでしょう

・キャラの設定を練り込んでおいて、プロットは最低限にする
 普段からプロットを書き込む自分としては苦手なやり方ですが、今作はキャラクターの二人が秘密を打ち明け合う、ただそれだけの会話劇です。正直、物語的な起承転結は作れません。なのでいっそ、二人の背景設定やキャラ付けを練り込んでおき、最低限書きたい展開へ向かうように舵をとりながらも、会話の内容は二人が喋るままに任せることにしました
 そのせいで《私の秘密》の現実シーンでは沙優にハイグレポーズをさせられませんでした。なにぶんタイミングがなかったもので。光にハイレグを着せるかどうかも作者的には最後まで迷っていたのですが、結局二人はノーを選んだようでした
 今作ではこのやり方で正解だったと思っています。が、プロットの有り無しや量の多寡は作者・作品によって大分異なりますので、これは一例までに

・沙優の独白に緩急を付ける
 先述の通り、今作品はキャラの設定がそのまま小説になる形であるので、ただそれを羅列するだけでは億劫な説明文となってしまいます。正直、小説としてはこれが一番つまらない。それは作者の自己満足でしかありません。今作がそうした単なる自己満足を脱せているかを判断するのは読者様ですから、自分は評価を粛々と受け入れるしかありません(まあ、少なくともハイグレ要素自体が薄いこういう作品は、ハイグレフェチの方には繰り返し読まれるものではないことは重々承知しています)
 そこで少しでも飽きさせない工夫をと考えまして、特に長文となる沙優の独白では、回想シーンと現実シーンを交互に登場させました。一旦場面を現実に戻すことで話に緩急をつけたり、部屋内の状況を表そうとしてみました
 ちなみに独白部分は、光に対してあの文字のままに語っているわけではありません。もちろん本格的にそのように書くこともできますが、ちょっと時間が……

・会話劇のオチ
 当ブログの開設二日目の記事で「ハイグレ小説は『哀れ、人間は皆ハイグレ人間になりました』ちゃんちゃん、でオチを付けられる」と書きましたが、今作のような会話劇にこれは当てはまりません
 プロットを組んで起承転結を予め決めておくならともかく、今作は本当に行き当たりばったりです。「二人が秘密を受け入れ合う大団円」とだけは決まっていましたが、果たしてそれで上手く〆られるかどうか。結局抱き合うだけでは小説のオチとしては足りないと判断し、エピローグ的に数文書き足しました
 こういうまとまりのつかない作品を強引にまとめるのに一番分かりやすく効果的なのは、原点回帰です。タイトルやテーマに関連したオチを付けるのです
 今作で言えば、タイトル兼テーマである「秘密」に引っかけて最後の沙優の台詞を「秘密」としました。自分の中で沙優のイメージは「明るく一途だけど、意外としたたか」なので、最後まで光に対して主導権を取り続ける感じを演出しようとしました。でも読んでもらえば分かる通り、沙優は内心では光にデレデレです。残念ながら光にそれを知る術はありませんが

 ……とつらつら読んでいただいたかとは思いますが、正直今作はハイグレ小説としては異端・邪道な作品ですから、もしもハイグレ小説を書くことを志すなら、もっと王道の洗脳ストーリーを参考にすることをおすすめします。公開したときの反応も王道のほうが良いので、モチベーションも上がりやすいですしね

沙優こそは自分の妄想の産物ですが、光の設定や台詞にはボトさんがモデルになっている点がいくつかあります。《私の秘密》内の光のとある台詞などは、先日ボトさんが書き込んでいたばかりの文言をほぼそのまま使わせていただきました。まあ本人なら気付くんじゃないですかね
ボトさんからノロケを聞かされるこちらは正直たまったものではないのですが、同時に彼女さんと、色々とディープな面まで分かりあえている関係は素敵だなと素直に羨ましくも思います
とにかく将来結婚式を催すときには我々ハイグレ界隈一同を是非とも友人席に招待してください。香取犬との約束です

とりあえず今のところは一同を勝手に代表して、「リア充爆発しろ」という怨嗟祝福の言葉を送らせていただきまして、結びとさせていただきます



……あ、そういえばどうして沙優が光の部屋に戻れたか、書いてなかったかも
光は配信時間が迫って焦るあまり、家の鍵を掛けるのを忘れていました。しかしそれがなくとも、扉の外の植木鉢の下に合鍵があることは以前に光が沙優に教えていました(もちろん作中にそんな描写はない。書くときにはそうしようと思ってた)
それと、実はさり気なく《俺の秘密》のブライトのお絵かき配信シーンに加筆をしてあります。名無しの正体が沙優であることを、より強調させておいたものです
流石は行き当たりっばったり。まだ書き忘れてることがありそうな気がしないでもなく、作品公開を一瞬躊躇いましたが……まーいいや☆ 何か指摘があったらそのとき考えよっと

次回更新は久々にまともなハイグレ要素のある、チャットルーム発の短編となる予定です。ではまたー
 【最終更新16/06/21】
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No title

こんばんハイグレー!(`・ω・´)ノ 茶室にいるのにこっそり隠密コメント(謎

ボトさんうらやましすぎやろおおおおおおおおお!(*´д`*)あ、ちゃうわ光君うらやましすぎやろおおおおおおおおお!
いったいどんなハイグレリア充っぷりを見せつけてくれる後編がやってくるというのか……続き気になりすぎて正座待機安定です!(((( ;゚Д゚)))ってか企画も始まるのにバシッと新作書いちゃうとかカッコ良すぎやで……!

そして、企画スレへのリンク貼りありがとうございますー!(*´д`*)さりげなくベタ誉めされてちょっと恥ずかしい……
今作の後編も、企画も、素敵なモノになるのを切望しつつ(`・ω・´)ノシ 後編ほんま楽しみですではではー!

No title

>0106氏
おお、秘技・チャットの裏で隠れてコメ投稿を使われるとは……!
後編では今まで溜めに溜めた「ハイグレ好き女子」への思いを解放できればなーと考えとります

……ではここでひっそり宣言
日曜の昼までに企画のお題が決定してさえいれば、投稿一番乗りを狙いに行きますですよー!

遅れながらもコメントさせていただきます。
僕を元ネタにssを書いてくださるとは感謝感激雨あられです!彼女にもこのss紹介しときますね( ‘-^ )b
ブログは少しずつネタが出てきましたので更新は遅くなりますが、書いていこうとおもってます!!!
プロフィール

香取犬

Author:香取犬
ハイグレの洗脳を受けて早幾年
遂に自らハイグレ小説を書くようになってしまいました
いつでもネタ募集中です
酉◆RYenwqtp9Y

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新興宗教ハイグレ教
 →ハイグレアイドル候補生!
ハイグレ小説王国
 →変わりゆく若人たち
 →帝後学園の春


*応援しています*
ハイグレ第参ホール by参式
悪堕ち・洗脳・ハイグレ 絵とSSのひととき by正太郎
ハイグレ帝国史 byソラ
ハイグレストーリー! byナッシー
ハイグレ小説を書きたいだけの人生だった……。 by0106
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