【ゲーム】The Gift of HIGHGLEntine's Day【公開!】

ベータ版と言ったな、あれは嘘だ!(前にも同じようなことを書いた気が……)
なんだかんだで満足行くところまで実装が済んだので、初めから正式版として公開します!
キャプチャ_2016_02_21_23_09_08_680

香取犬レーベル、衝撃のデビュー作!
ノベルゲーム「The Gift of HIGHGLEntine's Day」です!


※8/15追記 ver1.2にバージョンアップ! mac版正式対応!

ダウンロードはこちら!
The_Gift_of_HIGHGLEntines_Day ver1.2(WIN版)
The_Gift_of_HIGHGLEntines_Day ver1.2(MAC版)

更新内容(ver1.1)
・周回数フラグの問題を解決(クリア回数のフラグが、ゲームを終了させても保存されたままとなります)
(「おまけゲーム」解放条件は「ゲームを1回クリア」のまま)
・セーブデータ、周回数フラグを消去するモードを追加(タイトル画面左上から)
・オートテキスト送り機能実装(左下のボタンをクリック)
・光線命中シーンを調整(キャラの悲鳴と点滅が同時に表示されるようになった、など) など
※旧版のセーブデータは引き継がれますが、正常に表示されない可能性が高いです。ご了承下さい
ただし消去したり上書きをしないまま残しておけば、旧版で開くことはできます
擬似デバッグモードを開放しているので、readmeを読んで操作していただければすぐに周回数フラグを立てることができます

更新内容(ver1.2)
・制作ツールのバージョンアップにより、mac版正式対応
・おまけゲームの特定のルートの不具合を修正

(過去のverのダウンロードは香取犬用金庫内からお願いします)

パスワードは共通で、いつもの小文字英字七文字(ローマ字風ではなく英語風のもの)です

同梱readmeをよく読んで(特に注意事項の部分)からプレイして下さい

また、ゲームのエンドロールの最後に書いてあるパスワードを入力することで、以下のリンクからTGHDおまけ」ファイルをダウンロードできます
※ver1.0同梱のreadmeのリンクから飛べるファイルは、パスワードの設定ミスでダウンロードが不可能となっています
お手数ですがこちらから、改めてエンドロールに表示されたパスワードを入力してDLしてください。申し訳ありませんでした
http://ux.getuploader.com/highglepostoffice1/download/11/TGHD%E3%81%8A%E3%81%BE%E3%81%91.zip

2/22追記。おまけDLパス tosiaki
……こらそこ、安直とか言わないの
exeが開けない人への対策として、ブラゲ化するって手段も機能上は可能のようです
そしたらホームページとか開設しなきゃいけないし……うーん。サーバーとかの知識無いからなぁ

・「TGHDおまけ」内容物:
  外伝chapter6-2.txt
  あとがき十問十答.txt(ややネタバレ注意)
  本編ベータバージョン全文.txt(分岐条件も明記。激ネタバレ注意)
  キャラ絵差分など

……予告記事への0106氏のコメントを見て、やっぱりそういう環境の方もいるかとは思いました。.exeが開けないMac環境などの方には誠に心苦しい限りですがご容赦下さい
そこで、自分に出来る範囲での対応策を取らせていただきます
まず、この記事の「続きを読む」で、ゲーム本編内のハイグレ洗脳シーンを抜粋したものを全文掲載します(正確には「TGHDおまけ」内の「本編ベータバージョン全文」からのコピペ)
更に、ゲームクリア者がDLできるおまけファイルのパスワードを、ゲーム公開から約24時間後に本記事にて公開しました。リンクの下を御覧ください
上に書いたとおりおまけファイルには、ゲームで使用した文章がほぼそのまま載せたテキストが入っていますので、最低限小説として読むことは出来るはずです


不具合報告はこの記事のコメント欄へお願いします
シナリオ、あるいはゲームシステムへの感想などもいただければ嬉しいです


以下、三人のハイグレ洗脳シーンのみ抜粋したシナリオを掲載しています



(バレンタイン前日。モテない男子高校生・二十里敏明は憂鬱な夜を過ごしていた。
そこにハイグレ魔王が現れる。魔王は敏明に"力"を授ける。
魔王曰く、"力"によって敏明は明日、女の子2、3人からチョコを貰えるようになったが、彼にチョコを渡した女の子はハイグレ人間になってしまうという。
半信半疑で迎えた2月14日。まさか靴箱にチョコが入ってるなんてマンガ的展開が――あった。「敏明くんへ」と書かれたチョコの箱。
それを手に取った瞬間、物陰から女の子の悲鳴が。急いで彼女が逃げ込んだ保健室へ向かう敏明だった……)

【chapter2-2:保健室】

「ど、どうしよう……これ、どういうこと?」
「――佐久間?」
「きゃ!?」
 部屋の中で髪を振り乱し、文字通りあたふたしていた鈴香がいた。俺が名を呼ぶと、彼女は慌ててカーテンの向こうに隠れてしまった。
 だが、その異様な格好は一瞬とはいえ俺の目にしっかりと焼き付いていた。
 鈴香の慎ましやかな身体を覆っていたのは、ピンク色でひと続きの、光沢のある薄布。それは水着と言うべきか、レオタードと言うべきか。しかしどちらの言葉で表すにしろ、この単語で修飾せざるを得ない。
 ……ハイレグ、と。
 昔のグラビア写真で見たことくらいはあるが、現実で見るとより「えげつない」という感想が湧いてくる。しかもそんなものを、同級生の女子が着ているなんて。
 変な気分になりかけるところを必死で抑え、カーテンの向こうの鈴香に状況を尋ねる。
「……佐久間、それ一体、どうしたんだ?」
 正直俺は、頭を「ハイレグ」という単語が過ぎった瞬間には、何となく全てを察していた。「ハイレグ」にとても良く似た語感の言葉を、つい数時間前に何度も聞いていたから。
 鈴香が、震える声でカーテン越しに答える。
「と……二十里くん……。わ、わかんないの。さっきいきなり制服が消えちゃって、代わりにこれが……」
 やっぱりか、と俺は一人納得していた。
 思い返すと、鈴香の悲鳴が聞こえたのは俺がチョコを持ったのと同時。そしてハイグレ魔王は俺に与えた力の代償としてこんなことを言っていた。
『アナタにチョコをあげた子は、もれなく――』
「ハイグレ人間に、なってしまう……」
 疑問の点と点が、脳内で繋がった。そう呟くと、カーテンの中から、
「に、二十里くん、何か知ってるの? ……きゃ!?」
「佐久間!?」
 短い悲鳴。思わず俺は鈴香が籠もっている岩戸をガラリと開いてしまった。
 そこにいた彼女は……股を大きく開いて立ち、ハイレグ部分に両腕を添える、奇っ怪なポーズをとっていた。頬を、恥ずかしそうに真っ赤に染めて。
「やだ、身体が、か、勝手に……っ! 恥ずかしい、のにっ! あ、は……」
 そして、俺が口を開くよりも先に、鈴香が動いた。
「は、ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 クイ、クイ、と。彼女は「ハイグレ」と叫ぶ度に肘を肩ほどの高さまで上げ、すぐに戻すというポーズを何度も繰り返し始めたのだった。
 男の俺でも、そのポーズは何だか恥ずかしく思えてしまう。そんなポーズを鈴香は、ハイレグ一枚のハレンチな姿で行っている。
 俺は彼女のために目を逸らすべきなのかもしれない。だが男のサガなのか、どうしても視線は鈴香に釘付けになってしまう。
「ハイグレっ! ハイグレっ! うぅ、ハイグレっ!」
 目をきつく閉じてもハイグレをやめない鈴香に、俺は恐る恐る言う。
「い、嫌なら止めればいいだろ?」
「ハイグレっ! 止まんないの! ハイグレっ! 手も口も、ハイグレっ! 止めたいのに、全然……ハイグレっ! ハイグレっ!」
 服がハイレグ一枚になって、本人の意思と無関係にこんなポーズをとらせて「ハイグレ」と言わせる。これが、ハイグレ人間なのか。
 な、なんてエロ……恐ろしいんだ!
 ハイグレ魔王め! なんて力をくれやがったんだ! 俺は眼福……じゃなくてご立腹だぞ! 腹以外のところもタちそうだけど!
 そんな俺の目の前で鈴香の言動は、更にエスカレートしていく。 
「み、見ないでぇ……ハイグレっ! ハイグレっ! こんなとこ、二十里くんに……ハイグレ! わたし、見られちゃってるなんてぇ……っ!」
 ハイグレするごとに仰け反る上体。同時に強調される、ピンクの布にピタリと覆われた胸と股間。普段から大人しい鈴香のイメージとはあまりにかけ離れた姿。
 彼女のことをよく知っているわけでない俺ですら息を呑むほどの光景だ。それを無理やりさせられている本人の心情は、想像すらできない。
「ハイグレっ! ハイグレっ! ん……あぁっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
彼女は必死でハイグレに抵抗し続けている。が、徐々に表情には綻びが見え始めてきた。
どんなに強い人間にも限界は存在する。そこに達してしまったとき、鈴香は抗うことを諦めてハイグレを受け入れてしまうだろう。
「ハイグレっ! や、だけど……気持ちいいの……! ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレぇっ!」
 その瞬間は間もなくやって来た。「気持ちいい」と本音を漏らしてしまうと、鈴香の理性の糸はプツリと切れてしまったのだった。これまで我慢していた分を吐き出すように、彼女は一片の曇りもない笑顔でハイグレポーズをしだす。
「あは、ハイグレっ! ハイグレっ! もっと、もっと見て! 二十里くん――敏明くんになら、わたしのハイグレ姿、もっと見てほしいの! ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 こんな時だというのに俺は、彼女に対して密かに感動を覚えていた。
 今まで必死に抑えてきた思いを解放し、ハイグレに屈服して己の欲にひたすら正直になってしまったことに。
 これからの自らの人生を狂わせるほどの宣言をし、俺に対して痴態を曝け出すようになってしまったことに。
 その全ての元凶が、俺――ひいてはハイグレ魔王――に人為的に植え付けられた感情であるにも関わらず、だ。
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレ気持ちくて、おかしくなっちゃいそう……。ねぇ、敏明くん。今の、ハイグレ人間になったわたし、どう……かな? 変じゃないかな? 嫌じゃないかな?」
 彼女が興奮して俺を求めてくれるのは、一人の男としてとても嬉しいし、胸の内に熱く燃え上がる何かを感じずにはいられないのは事実。
 だが、鈴香のこれは彼女の元々の本心ではないはずだ。どんな奇想天外な理由があるにせよ、俺が佐久間鈴香という少女を壊して、こんな風に作り変えてしまったのだ。
 ハイグレ魔王は、ハイグレ人間について何も説明しなかった。俺の力は今日一日限りかもしれないが、ハイグレ人間になった鈴香も同じとは限らない。つまりは、一生このままという可能性も有り得る。なのに俺は魔王の言葉を深く考えず、軽々しくチョコの箱を手にしてしまった。
 そんな俺には、彼女を受け入れる責任があるような気がした。
「……ああ」
 するとピンクのハイレグ姿の鈴香はパッと嬉しそうに微笑んだ。まるで恋人に見せるような、屈託のない笑みだ。
 それから、モジモジと照れながら俺にこう尋ねる。
「あのね、敏明くん。靴箱、見てくれた?」
「お、おう。この箱、だよな」
 俺は鞄の中にしまっていたプレゼントボックスを取り出した。そう言えば、鈴香はいつの間にか俺のことを名前で呼んでいるな。距離がいきなり縮められたようで、なんだかこそばゆい。
「そのチョコ、わたしが作ったんだよ。なんだか、どうしても敏明くんにあげたくなって。……あはは。変だよね、あんまり敏明くんとは関わりもなかったのに。わたしからもらっても、迷惑、だったよね?」
「そんなことない。嬉しいよ。けど……」
 全部俺の、というかハイグレ魔王のせいなんだ――喉まで出かかった言葉を、しかし飲み込んだ。どうせ、今の鈴香にそう伝えたところで、俺と魔王に感謝しかねない。
 俺の葛藤とは裏腹に、鈴香は安心に「良かったぁ」と微笑んだ。そして、恥ずかしげに視線を外される。
「……あのね、わたし、今まで自分でも気づかなかったんだけど……」
「え……?」
 何だ。何だこの空気。いや、俺一度も経験したことなんてないけど、それでも感じずにはいられない。鈴香から迸るこの雰囲気、まさか……!
「わたし、敏明くんのことが――」
 はやる心臓。嘘だろオイ!? そ、そんなこと言われても、俺どうしたらいいか――!
 だが。
 ――キーンコーンカーンコン。
 このタイミングで予鈴が水を差す。つまり、あと五分で授業が始まり、保健の先生が来てしまう合図だ。助かったが、正直その先の一言を聞いてみたかったとも思う。が、今更仕方ない。
 ハイレグ姿で立ち尽くす彼女。着ていた制服はハイレグに変わって消失してしまった。まさかこんな姿を他の生徒に見られるわけにはいかないだろう。
 だが、ここが保健室で助かった。多分、どこかに用意してあるはずだ。そう思い俺は部屋中を探しまわった。
 一分もせず、お目当ての物は見つかった。ロッカーの中から女子の制服を取り、鈴香に差し出す。
「佐久間。とりあえずこれ借りて、教室に戻ろう」
「う……うん。分かった」
 鈴香は困惑しつつも頷き、こちらに手を伸ばした。しかし名残惜しそうに自分のハイレグを見下ろすと、
「――ハイグレっ!」
 一度、笑顔でハイグレを行った。それから制服を受け取り、慣れた手つきでハイレグの上に着ていく。
 ああ、この子はもうどうしようもなく、ハイグレ人間なんだな。俺はそう思った。

(朝の出来事の興奮冷めやらぬ内に、今度は教室で真面目な委員長、衣笠絢音から「昼休みに校舎裏に来て」と呼びだされた敏明。
魔王の力は、もはや本物だと信じるほかなかった……)

【chapter4:校舎裏】

「わざわざ来てもらって悪いわね」
「いや、それは構わないんだけど」
 俺にとっては全く気の休まることのない午前が過ぎ去り、昼休みに入るやいなや絢音は鞄片手に教室を飛び出していった。俺は誰かに感づかれぬよう、一分ほど時間を開けてそれを追ってきたのだった。
 校舎裏といえば密会場所の代名詞のようなイメージがあるが、うちの学校の校舎裏はそういう意味での人気(にんき)がない。つまりいつも人気(ひとけ)がない。絢音も当然それを知った上で、ここを密会場に指定したのだろう。
「ならいいの。じゃあ、早速だけど本題に入らせてもらうわ」
 そう前置いて、絢音は俺に向き直る。
「私が二十里をここに呼び出した理由……流石に察しがついているわよね?」
「まあ、半信半疑だが」
 正直今の今でも、まさかこの堅物委員長に限って、という思いが強い。俺の返事に、
「それは私も同感よ」
 何故か絢音本人までも呆れたように頷いた。
「……昨夜は十二時になるまで勉強をしていたの。ノルマを終えてカレンダーを見たとき、ようやく今日が世間で言うバレンタインデーだということを意識したわ」
 真面目な彼女らしい話だ。
「そして、その次に脳裏を過ぎった男性の顔が、二十里だったの」
「なんでやねんっ」
「本当に、こっちが聞きたいくらいよ。それまでは、あなたのことなんて一切眼中にも無かったのに」
 確かに事務連絡以外に会話らしい会話もしたことのない仲だけど、そこまでストレートに言われると傷つくぞ。ってかまた心の声が……。
 絢音は、はぁ、と深い溜息をついてから鞄の口を開く。
「不覚だけど、二十里のせいで私が心を乱されたのは事実。これが一時の気の迷いだとしても、もう学校への行きがけに買ってしまったものは仕方ないし。だから二十里、あなたが責任を持って受け取りなさい!」
「えぇ!?」
 何という暴論。だが、あの絢音がチョコを俺なんぞにくれるというのだから、その点ではなかなかいい気分だ。
 簡素なラッピングに透けて見える既成品のチョコの箱。その表面に刻まれているメーカー名は……ゴ、ゴチファ!? あの有名な!? 良く分からないが、これって高校生がおいそれと買えるような値段なのか?
 と、ここまでは素直に舞い上がっていたのだが。俺に向かってぶっきらぼうに突きつけられた箱を前にして、脳裏にハイグレ魔王の姿がちらついた。
 そうだ。これも鈴香と同じ、ハイグレ魔王の力に違いない。今日の日付になった途端、という言葉がまさにその証拠だ。絢音も力に当てられて、俺にチョコを渡したくなってしまったのだろう。
 魔王の力は本物だ。鈴香のあの変貌ぶりを見れば疑いようもない。
 言葉を選ばず言えば、ハイグレ人間になった鈴香はとても魅力的だった。ハイレグ姿そのものも、ハイグレに堕ちていく過程も、そして俺への恋しげな態度も。
 ここで箱を受け取れば、もう一度あれが見られる。もう一人ハイグレ人間が増える。それは物凄く楽しみだと思えてしまう。
 だが……俺の私欲を肥やす決断で、絢音の人生を左右してしまってもいいのか。鈴香のときは半分は不可抗力だった。でも今回は、俺にはプレゼントを拒否するという選択肢がある。まあ、彼女を怒らせてはしまうだろうけど。
「ほら、どうしたの。さっさとしなさいよ」
 こっちの気も知らずに催促しやがって。――分かった。もう決めたよ。
 俺は、絢音の差し出すチョコの箱を……
「い、いいんだな?」
「何度も言わせないで。これでも恥ずかしいんだから」
「……分かった」
 ちゃんと念押しもした。もうどうなっても知らないからな。一度、深呼吸。
 俺が箱を掴み、絢音が手を離した瞬間――
「きゃああああああああ!?」
 まばゆい光が一気に彼女の全身を包んだ。絢音は光の中で大の字になり、彼女らしくもない大声で悲鳴を上げる。
 突然の事態に俺も戸惑う。が、この中で何が起きていても不思議ではない、そんな気がした。
 数秒で光は収まり、絢音は瞼を開いて呟く。
「な、何だったの? 今のは……」
 平然と尋ねる絢音だが、その服は既に……水色のハイレグ姿になっていた。思わず表情が引きつってしまう。
「うわ……」
「何よ? ――って、い、嫌あああっ!?」
 俺の態度のためにようやく自分の姿を自覚した彼女は赤面し、急いで体育座りをして縮こまった。小さくない双丘が、腿に潰されて柔らかくたわむ。
 しかし、そんな過激な格好で体育座りというのも、更なる危険を招くのでは、なんて俺は冷静に他人事のように考えていた。そうでもしないと、目の前の異常事態を受け入れきれないと思ったから。
 まあ、それを最も受け入れられないのは、当の本人に違いないけれど。
「嘘!? せ、制服は!? どうして、私、こんな水着を……っ!」
 信じられないというように目を見開き、小刻みに首を振る絢音だったが、次第に腰が上がってくる。そしてあろうことか、四股を踏むかのように脚のスタンスを広くとった。
 彼女の局部を隠しているのは、頼りないほど細い薄布だけ。しかも立ち上がったばかりということで、その形がくっきりと……。
「あ、ああぁ……っ! こっち、見ないで……」
 これほど絢音が赤面し、狼狽えているところなど、誰も想像もできないだろう。彼女にも、女の子らしい一面があるんだな。
 そんなことを思っていたため、もちろん視線は一瞬たりとも絢音から外れなかったわけだが。
 絢音は怒り泣きの表情で俺を睨み、しかし身体は意志とは正反対の動きを始めた。
「二十、里……覚えてなさいよ? 後でたっぷり――え、は、ハイ、グレ!」
 下腹部で鋭角を描く生地の境を、両腕でゆっくりとなぞり上げる。まるでここを見てくださいと言わんばかりに。
 見るな、と口にしている彼女が自分の意志で行うはずはない。彼女の身体は今、ハイレグに支配されつつあるんだ。
「ハイ、グレ……ハイ、グレ……! 嫌ぁ……!」
 鈴香も初めは、身体が勝手に動くと言っていた。そして、どれだけ抵抗しても止まらないのだとも。
 絢音は、徐々に間隔の短くなるハイグレコールの合間に、俺に訴えてくる。
「ハ、ハイグレ! ハイグレ! に、二十里! 私に何をしたの!? ハイグレ!」
「俺のせいじゃねぇよ! いや、やっぱ受け取った俺が悪いのか……?」
「な、何をぶつぶつと……ハイグレ! ハイグレ!」
 理解されないに決っているものの、一応理屈で説明をしてみる。
「衣笠は、ハイグレ人間になったんだよ。俺もよく分からねぇけど、昨日ハイグレ魔王ってやつに力を与えられて……!」
「は、ハイグレ人間? 魔王? 力? 何を非現実的な……ハイグレ!」
 ですよねー……。
 とは言え、多くの機械がそうであるように、ハイグレ人間の身体も仕組みなど分からずとも勝手に動いてしまうもののようだ。
「ハイグレ! くぅ……と、止まりなさいよ私の身体――ハイグレ!」
 悔しげに自分の身体を見下ろす絢音。ハイグレをする度に上下に揺れる胸が気になるのかもしれない。それから俺を再び睨み、
「許さない……こんなこと、ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
 俺にもどうしようもないのに、許さないとか言われても……。俺は止めたんだからな、とは口が裂けても言えない雰囲気だった。
 けれどもこんな状況の絢音を一人置いて離れるわけにもいかず、俺は黙ってハイグレに没頭する彼女を見ていた。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
 しばらくすると、絢音はもうハイグレ以外の言葉を発さなくなっていった。完全に身体の歯止めが効かなくなったかのようで、その様はまるで壊れたおもちゃのようだった。
 どうあがいても止まらない動きの方に、半ば諦めたように心が順応していく。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
 やがて、絢音の瞳から意思の光がスッと消えた。そしてこう言った。
「ハイグレ! ハイグレ! 私は、ハイグレ人間……ハイグレ人間、衣笠絢音……ハイグレ!」
「お、おい、どうした?」
 彼女自身に言い聞かせるように。あるいは俺に対して宣言するように。
 絢音はハイグレポーズで敬礼をし、あろうことか俺に頭を垂れた。
「ハイグレ! 二十里敏明さま。私をハイグレ人間にしていただき、ありがとうございます。数々のご無礼お許し下さい。これからは誠心誠意、あなたに尽くす所存です」
「……は?」
「ですから、私は敏明さまの下僕だと申し上げているのです。さぁ、何なりとお申し付け下さい。……どんなことでも致しますから」
 な、何がどうなっているんだ? 恐らくは、彼女は完全にハイグレ人間になってしまったんだろう。そうしたら、普段以上の真面目さで畏まって、俺の下僕になる……だと?
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! いかがいたしましょうか? それとも私では……お気に召しませんか?」
「い、いや、そんなことは……」
 どうして押されてるんだ、俺! こんなことを言われて嬉しくないはずがないってのに!
 あの堅物委員長がこの恵まれた身体をパツパツのハイレグに押し込め、哀願するように俺に迫ってきているのだ。そりゃ頭も回らないって……。
 そしてその結果、こんなつまらないことを言うしかなくなってしまったのだった。俺の馬鹿。
「……とりあえず、誰にもその姿を見られないようにしたほうがいい。消えた制服は後で考えるとしても――ちょうど次の授業は体育だったろ? ジャージに着替えとけよ」
 言い訳すると、ふと、もし普段の絢音が自分のこんな姿を他人に見られたと知ったらどう思うだろうか、なんてことが頭に浮かんでしまったのだ。
 一体、ハイグレ人間化がいつまで続くのかは分からないが……もし元に戻ったとき、少しでも彼女がダメージを受けないように。
 加えて、これ以上こんな格好を見続けていたら、俺までもどうにかなりそうだったし。
 そんな心優しい命令だったにも関わらず、絢音は聞くなりまるで世界の終わりが訪れたかのような顔をした。そして決心を固め、俺に向き直る。
「わ、分かりました……敏明さまのご命令でしたら、ジャージ姿になることも謹んで受け入れます……。ですが、ハイグレを脱ぐことだけはどうか! せめてハイグレを服の下に着こませてください! どうか、ご慈悲を……!」
 な、何故そこまで? 理由は分からないが、涙ながらに鬼気迫って懇願するものだから、
「わ、分かったってば」
 と言ってやると、彼女は涙を溜めたまま微笑んだ。
「ありがとうございます! ハイグレ! ハイグレ!」
 良く分からないが、ものすごい罪悪感だ……。

(そうして体育の授業に向かう。長距離走を行う際に、体育教師はジャージを脱いで走れと指示する。
鈴香はすぐにジャージを脱ぎ、指定の半袖シャツとブルマ姿になったが、絢音は「体操服を忘れた」と教師に謝罪した。
よく見ると鈴香のシャツの下にはピンクのハイレグが透けている。絢音は、ハイレグを着ているためジャージを脱げないのだった。
敏明は体を動かして、モヤモヤとした気持ちを晴らそうとした)

【chapter6:廊下~部室】

 授業終了のチャイムが鳴った頃には、完全に俺の体力は尽き果てていた。
 が、まだ全てが終わったわけじゃない。更衣室で制服に着替えを済ませて教室へ向かう道中で、俺の前に立ちふさがったのは――
「敏明センパイっ!」
「……莉李」
 平莉李。黒のニーソックスを穿いた脚を肩幅に広げ、腰に手を当て、得意気に笑っていた。彼女は同じ部活の一年生で、唯一まともに会話する女子、と言っても過言ではない存在。それというのも、莉李が性別差や先輩後輩関係に無頓着で、俺にも構ってくるだけに過ぎないのだが。
 故に莉李も、バレンタイン? なにそれおいしいの? と言う側なんだと思っていたのだが……。まさかお前まで。
「何だよ。今日は部活、オフの日だろ?」
「だからこそですよ。今日なら誰も来ませんから。さー部室に行きましょう!」
「お、おい! 無理やり引っ張るな!」
 莉李は俺の鞄の紐を掴み、部室棟方面へ俺を連れて行こうとする。
 その時だった。
「敏明くん!」
「二十里――」
「さ、佐久間! 衣笠!」

 頬を染めた鈴香とはあの告白問題があるし、ロボットのように無表情な絢音は俺の次なる指示を待っている。
 これでは、三人の誰に付いて行っても面倒なことになりそうな予感が……。
「すみませんセンパイ方! ちょっと敏明センパイお借りします!」
 って俺に選ばせてもくれないのか!
「うわああぁぁぁぁぁ……」

 そんなこんなで強引に文芸部室――実体はラノベや漫画を読むだけだ。部員もそのテの者ばかりで、単独活動を好むためあまり部室には顔を出さない――に連行された俺。
 マラソンの後なのに加えて、無茶な態勢で廊下を走らされたためゼェゼェと息が切れる。
 そんな俺に背を向け、窓の外を眺めながら莉李は小さく呟いた。
「……うわぁ、やっちゃったぁ……こんなつもりじゃなかったのに。どうしよ、この先何も考えてないよ」
「何か言ったか?」
「な、何でもないですっ!」
 まあ、聞こえてたんだけどな。
 しかし……まさか莉李までもこのザマとは。恐るべし、ハイグレ魔王の力。いや、嬉しくないわけじゃないけれど。
 ――なんて感慨に浸っている場合ではない。莉李はくるりと振り向き、パーソナルスペースに一歩踏み込むほど肉薄してきた。
「せ、センパイ。今日が何の日か、知ってますよね?」
「部活が無いから直帰出来る日――ぐはっ!?」
 容赦無い腹パン、だと……!?
「分かってるくせにとぼけるからですよ。センパイのバカ」
 じゃあ聞くなよ!
「センパイ、どうせあたしはバレンタインに興味ない人間だろう、とか思ってるんでしょ?」
「お、思ってないよ?」
 一瞬つっかえたところで凄まれたが、何とか見逃して貰えたようだった。莉李は、はぁ、と息を吐く。
「……あたしだって女子高生ですよ。1年に1度はお菓子作りくらいしますって。それで今日、クラスの男子に配ったんですけど……作りすぎて余っちゃって」
「うわ、ベタな言い訳だ――げぼぉ!?」
「三度目はありませんからね?」
 こ、声に出てたか……。莉李の口調と裏腹の笑顔がとても怖い。
 彼女はゴソゴソと鞄をまさぐり、小ぶりでカラフルな紙の巾着袋を差し出してきた。内にクッキーのようなものが数枚透けて見える。
「そういうことですからセンパイ、深い意味はありませんけど貰って下さい。深い意味はありませんけど。深い意味はありませんけど」
 どんだけ大事なことなんだよ。逆に傷つくわ。
 とは言え、莉李のデレシーンなどという珍事を拝めるならば、腹パン二発だって安いくらいだとも思える。
 ……だが今日に限っては、痛みとは別の代償を支払わねばならないのだった。
 既に目の前で確認したように、俺のモテ期はハイグレ魔王の力に他ならない。そうして俺にチョコを渡してしまったが最後、その子はハイグレ人間に変えられてしまう。
 莉李は趣味でコスプレをしているようだが、だからといってあんな過激なハイレグ姿を受け入れてくれるとは限らない。ハイレグに理解がある現代の女子なんて、いても数える程度だろう。でも、もしかしたら莉李ならノリノリでハイグレポーズを披露してくれそうな気もする。確証はないけれど。
 次に、もう一つの選択肢について考えてみる。「深い意味はない」という言葉は、魔王の力のせいであっても、今の莉李の本心から出た照れ隠しだ。もし俺がチョコの受け取りを拒否したならば、乙女の純情を踏みにじった、とか難癖つけられてフルボッコまでされかねん。それはとてつもなく恐ろしいが……莉李を無事に救うには覚悟を決めないといけない。
 好奇心に任せてチョコを受け取るか――フルボッコ覚悟でチョコを断るか。二つに一つだ。どうする、俺? この箱を――
 様々な葛藤を繰り広げた末、受け取ることにした。
 魔王の力に引き寄せられてしまったからには、最低でも今日一日は、俺を好きだという気持ちは本物なんだろう? それを満たしてあげるんだ。例えそのせいでハイグレ人間になってしまうとしても……本望だろう?
 そうだ。俺は莉李のためにチョコを貰うんだ。俺は悪くねぇ。俺は悪くねぇ!
 プレゼントの箱が、俺の手の中に渡る。直後――
「うわああああああああ!?」
 悲鳴と共に莉李は光に包まれてしまった。あまりの眩しさに、思わず瞼をつぶってしまう。にも関わらず感じてしまうほどの発光が、数秒続いた。
 光と声がようやく収まって目を開くと、そこには……驚愕の表情で自分の変わり果てた姿を見下ろす莉李がいた。
 彼女は制服姿から、黄色一色の際どいハイレグ姿に変貌していたのだった。
「ちょ!? え、こ、これって……! 嘘……っ」
 何が起きたのか分からない、といったように莉李は自分の全身を点検する。数秒前まで確かにあったはずの、セーラー服の袖やスカート。何故か残っているニーソックス。そして、大胆なハイレグカットによって晒された腰骨。伸縮性と光沢に富んだ布に覆われた、申し訳程度に膨らんだ胸やへそや、下腹部や尻を。確認する度に、莉李は息を呑んだ。
 これが、ハイグレ人間になった者の姿……。困惑するのも当然の反応だ。
 そんな彼女の様子に俺は、今更になってふつふつと罪悪感を覚えてしまう。受け取ったらハイグレ人間になるということは知っていたのに。せめて、やっぱり前もって忠告しておくべきだったんじゃないか。これでは騙したも同じじゃないか。
 だから俺は、勢い良く頭を下げた。
「ごめん莉李! 実は――」
「ハイグレじゃないですかっ!? ね、ねえそうなんでしょセンパイ!」
 ……え? 何でお前、そんな格好にさせられておいて平然と目をキラキラ輝かせて縋り付いてくるんだ?
 って、それもそうだがもう一つ。
「し、知ってるのか!?」
 ハイグレという単語を、莉李は速攻で自発的に口にした。
 前のときは例のポーズとともに、イヤイヤ口走っていた単語をだ。
 俺だってハイグレ魔王に名乗られるまで、聞いたこともなかったのに。
 すると、すぐに大仰に頷かれた。
「そりゃ知ってますよ! あたしあのアニメ大好きなんですから! 原作のマンガも映画DVDも全巻持ってます!」
 あ。この反応は、オタクスイッチがオンになったときの莉李そのものだ。俺が話についていけないジャンルであっても、勝手に盛り上がって暴走していくやつ。
「あはは、すごいです! 何で? あたしどこから撃たれちゃったんだろ? それにしても、ほんとに一瞬でハイグレ人間なんですね! それに、ハイグレしたくて身体がうずうずする……! でも、抵抗出来るのなんて今だけだし、限界まで我慢してみますけどっ!」
「お、おう……」
「うあぁ……っ! こ、これ思ったよりもヤバい、かも……。ハ、イ――んぅっ!」
 一体どうなってるんだ。俺が知らなかっただけで、実はハイグレ人間って有名なのか? 口ぶりから察するに、何か有名なマンガのネタらしいが。とすると俺は、マンガのキャラと出会って変な力を与えられたってことになるんだが。そ、そんな馬鹿な。
 それにしても、女の子の薄っぺらいハイレグ姿なんてほとんど全裸に等しく思える。いや、むしろこの方が余計に……。そんな格好で普段通りにはしゃげるのは、流石コスプレイヤーといったところなのだろうか。
 そんなことを考えていると、莉李は下腹部の切れ込みに両手を添えた態勢のまま、苦しげに問うてきた。
「もしかして、センパイももう、ハイグレ人間だったり……? なら、い、一緒にしましょうよ。あたし、もう、我慢が……!」
 しかし。違う、と否定する間もなく、
「――む、無理ぃっ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
 抵抗を諦めた莉李は、キビキビとハイグレを一心不乱に繰り返し始めた。どう見ても屈辱的な姿だろうに、そのハイグレポーズにも表情にも一切の曇りはなかった。
「ハイグレッ! あーあ、あたしもハイグレ人間になっちゃったかぁ。ハイグレッ! ハイグレッ! うわぁ、すごいきもちいい……っ!」
 例えるなら、鬼ごっこで鬼役になりたかったのにじゃんけんに勝ってしまった子が、ようやく鬼にタッチされたときのように、ワクワクと胸を躍らせていた。
「ハイグレッ! ハイグレ人間になるって、こういうことなんだ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! あはははっ!」
 莉李は自分の境遇を喜びつつ、笑顔でハイグレに没頭する。俺はそんな彼女をただ眺めているしかなかった。
 一分、二分、五分と時間は過ぎ、十分ほど経ったところでやっと莉李は満足し、背筋と膝をまっすぐ伸ばした。ポーズはかなりの重労働だったのだろうか、顔は上気し全身に汗を滲ませている。ただし、ハイレグの生地は水分に触れるとすぐさま吸収乾燥してしまい、濡れた跡も残っていなかったが。
 莉李は吐息が当たるくらいまで近寄ってきて、小首を傾げた。
「で、どうなんですかセンパイ。センパイはハイグレ人間? それと、どうしてあたしをハイグレ人間にしてくれたんですか?」
 そうじゃないんだが……。いや、今となってはいっそ全てを包み隠さず話してしまった方が良いのかもしれない。
「お前なら信じてくれるかもな。……実は……」
 そして俺は昨日からあったことを一切合切明かした。ハイグレ魔王に謎の力を授けられたこと。その効果で、チョコをあげた莉李がハイグレ人間になったということを。
 語り終わると彼女は、興味深そうに頷いた。
「なるほど。普通、二次元のキャラと会ったなんて妄想乙って言う所ですが、自分がこうなっちゃったら信じないわけにはいかないです。信じますよ。センパイのことも、魔王さまのことも。……あ、すごい、あたし本当に洗脳されちゃってる」
 魔王さま、と無意識に敬称をつけてしまったと自覚した莉李は、驚いて口に手を当てた。が、すぐに満更でもなさそうに笑う。
「でも、色々分かってスッキリしました。どうもおかしいと思ったんですよねー。どうして突然センパイにチョコあげる気になったのかって。クラスの子に義理チョコ配ろうかな、くらいは思ってましたけど、部活の人はスルーするつもりだったのに」
 昨日の夜までは、もしも俺がチョコを貰える見込みがあるとしたら莉李くらいかなと思ってたけど、
「義理チョコもくれる気無かったのか……」
「え? 何言ってるんですか。欲しいならちゃんとあたしの好感度高めとかないとですよ?」
 つまり、文芸部メンバー<クラスメートの男子ということか。ちょっとショック。ちょっとだけ。
 にひ、小悪魔のような表情を作ると、莉李はそのまま迫ってきた。
「それはともかく。センパイはチョコを貰ったらあたしがハイグレ人間になるって知ってたわけですよね。なのにセンパイは受け取った。やましい気持ちがないなら、断固拒否すればよかったですよね? ……何か言い訳は?」
「……面目ないです」
「でも――ありがとです」
 感謝の言葉に拍子抜けして面を上げると、莉李の顔にもう激情は浮かんでいなかった。
「は?」
「アニメと現実が繋がるようなこんな体験をさせてくれて。それに……実は映画を見た時からちょっと憧れてましたから。ハイグレ人間。ハイグレッ!」
 脚を開き、スッと腕でV字を描く莉李。まさか、本当に喜んでくれてる、のか?
「……で、あたしこれからどうなるんですか?」
「どう、って?」
「ほらあたし、ハイグレ人間じゃないですか。そしたらハイグレ魔王さまやセンパイに忠誠を誓ったり、ずっとハイグレしてなきゃいけないのかなー、って。センパイがお望みなら、もちろんしますけど。――ハイグレッ! ハイグレッ!」
 俺に見せつけるようなハイグレポーズ。確かにこの光景が嬉しくないと言ったら嘘にはなるが……。
「い、いや、いいよ。俺からは強制はしない」
 すると莉李は、ほぅ、と溜め息をついた。安心のためか落胆のためか、判別しかねるほどに短く。
「そうですか。でも、見たくなったらいつでも呼んでくださいね? 普通のコスプレならともかく、こんなの他の人には見せられませんから」
 その、いつでも、という言葉で俺はふと思う。
「……ハイグレ人間になった人は、いつまでハイグレ人間のままなんだろう」
「うーん、最低でも魔王さまが地球侵略をお諦めになるまではこのままだと思いますよ。あ、でもあたしの洗脳はセンパイに掛けられた力のせいですし」
「もしかしたら、明日になれば人間に戻れる……?」
「可能性は十分ありますね。……だったら今日中にハイグレ楽しんどかなくちゃ」
 何故か後半の台詞が聞き取りづらかった。とにかく、そろそろ話をまとめよう。
「……まあその、なんだ。色々悪かったな」
「別に気にしてませんよ。っていうか、さっきからありがとうって言ってるじゃないですか」
「なんか嫌に素直で調子狂うな。お前、こんなデレキャラだったっけ――」
 言ってから失言だったと気づく。また腹パンか、と身構えたが、莉李は固めた拳を解いてみせた。
「今のあたしがハイグレ人間で運が良かったですね、センパイ。いつもだったらミンチにしてミートパイでしたよ」
 笑顔が怖い! やっぱこいつだけはこのままでいいんじゃないか?
 とにかく今日は家に帰ろう。これ以上学校に留まって面倒なことになったら困るし。
「じゃ、じゃあ俺、そろそろ帰るぞ。莉李はどうする?」
「あたしは部室の整理をしてから帰ります。あ、服は上から体操服着ますんで平気です。制服も予備が家にありますし」
「分かった。戸締まりよろしくな」
「はいっ」と返事をした莉李が、ビシリと指を突きつけてきてこう言った。
「そうそう。どんな理由にせよ作っちゃったんですから。しっかり味わって食べてくださいね、そのチョコ」
「お、おう」
 俺はドアを閉め、昇降口に向かって歩を進めていく。自分史上最も波乱に富んだ学校の一日がこれで終わるのだ、と胸を撫で下ろしながら。
……
「……センパイ、もう行った、よね?」
 ガバッ。
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! はぅ……もうダメ、ハイグレ最高! やめらんないよぉ……ハイグレッ! ハイグレッ!」


(三人の女子から、ハイグレ姿とチョコを贈られてしまった敏明。
彼女たちは元の姿に戻ることができるのか? そして、こんな理由で受け取ってしまったチョコを、敏明は食べてしまうのか?
悩めよ敏明。君の行動に、彼女たちの明日がかかっているのだから)
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No title

ゲーム作成おつです。
描写はさすがです。お見事な出来でした。

誤字が1点ありましたので報告します。
~END~のシート
・・・・・・セーブは画面右下~のとこ、「左クリックのメニューから」となってます。
右クリックですよね?

Re:

>あひてい氏
プレイありがとうございました!
RPGに比べればシステム的には大したことのないゲームですが、楽しんで頂けて何よりです
>右クリック
その通りです、ご指摘感謝します。やはり焦りは禁物ですね……
「ハイグレとたたかってみる」、自分もアップデートを楽しみに待っております!

No title

ゲーム楽しくプレイいたしました
3人ともハイレグ姿やハイグレシーンを主人公以外の未洗脳者に
見られなかったのは運が良かったのか魔王様が気を利かせてくれたのか

実はハイグレ光線当ての作者でもありましておまけゲームをして
あとがき十問十答読んでちょっと驚きました
もう忘れ去られたゲームかと思ってましたので
自分も他作品に触発される事が多いのでちょっとでも制作の足し
になっていたのであれば作者としても嬉しい限りです

No title

>akariku(ハイグレ人間C)氏
ありがとうございますです
うーん、じゃあ運じゃなくて魔王様の方でお願いします

――って、ええーっ!?
ハイグレ人間C氏がakariku氏でakariku氏が「ハイグレ光線当て」の作者様で……な、何て恐ろしいんだ!
冗談じゃなく、まつざか先生のスパイ暴露並みの衝撃を受けました……
渋垢プロフ絵がキャラチップだったのを見ていたため「ハイグレに染まる学校」の作者様なのは分かっていましたが、いやはや……ゲーム作れて可愛い絵も描けてプログラムもとは……
「ハイグレ光線当て」は撃つ順番で反応が変わることと、洗脳光線が点滅することが当時とても印象的で、意味もなく彼女たちを撃ちまくってたくらい好きでした
ティラノビルダーで使えるスクリプトに『選択肢ボタンに絵を使える』『ボタンにカーソルを重ねると絵が変わる』機能があると知って、「じゃあアレ再現できるじゃん」と思い立ち、スクリプトと画像を作る手間を惜しまなかったくらいにはです
……じゃあついでにお尋ねしますが「ハイグレシューティング」もそうですよね? readmeの感じが完全に一致ですし

以下どうでもいい、エターナるまでもなかったゲームの話
以前、「ハイグレ光線を上下(左右)に避ける"障害物避けゲーム"が作れないかな」と思い立って、ゲーム作りについて色々調べたことがあるのです
そんな中フリーのゲーム作成ソフトとして名前が出てきたのがウディタ(WOLF RPGエディター)。まあフリゲは幾十かプレイしているので存在は知っていましたが
そして公式マニュアルを眺めて2時間で挫折。設定するパラメータ多すぎんよ。初心者の自分は専門用語のオンパレードに目ん玉グルグルでした
こうした経験があるのでウディタでゲーム作れるってすごいな、と勝手に尊敬しているのでした

No title

そうですね、readme以外も光線当てとシューティングはアイコン一緒の仮面にしてますね
自分もウディタは何度か挫折して、今回も戦闘やらアイテムやらレベルやら
全部カットしたのでなんとかできましたね(ハイグレ光線は一撃必殺って考えもあり)

ダウンロードしたいのですがパスワードが分かりません~_~;
検索方法はありませんか?
プロフィール

香取犬

Author:香取犬
ハイグレの洗脳を受けて早幾年
遂に自らハイグレ小説を書くようになってしまいました
いつでもネタ募集中です
酉◆RYenwqtp9Y

関連リンク
新興宗教ハイグレ教
 →ハイグレアイドル候補生!
ハイグレ小説王国
 →変わりゆく若人たち
 →帝後学園の春


*応援しています*
ハイグレ第参ホール by参式
悪堕ち・洗脳・ハイグレ 絵とSSのひととき by正太郎
ハイグレ帝国史 byソラ
ハイグレストーリー! byナッシー
ハイグレ小説を書きたいだけの人生だった……。 by0106
ハイグレSS秘密研究所 byぬ。
くもりのちはいぐれ byなまもの
ZweiBlätter by空乃彼方
ハイグレ創作喫茶 byボト


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