【インスパイア】女騎士「くっ、殺せ!」オーク「なら、ハイグレ人間になってもらおうか」【完結!】

またしても一月近く空いてしまいました。ご無沙汰してます、香取犬です

本当は一年半記念日らしき今日に更新するつもりはありませんでした(そう言えば今日も祝日ですね)。書き上がり次第更新して、「11月3日には何もありません悪しからず」とでも言うつもりだったのですが……事故のような、あるいは天災のような急用で一週間丸々潰れてしまい、結局こうなりました。物理的に書きたいのに書けない生殺し状態もなかなか辛いものでした

思い返してみると、自分の作品では全て現実世界をモチーフにしてきました。なので今回は初めて、コテコテのファンタジー世界ものに挑戦してみました
……で、だからって何で女騎士ものにしちゃったんですかねぇ。正直言って、好物と誇れるほど女騎士小説やSSを読んだことがあるわけではないのですが
まあ、ネタ帳の中で今、書こうと思えたものがこれだったんです。それ以外の理由はありません
なお、そんな自分の知識不足を補うため、女騎士とオークの台詞や展開についてはこちら、『恥辱の女騎士かるたまとめ - Togetterまとめ』を参考にさせていただきました。あるある、と同意できるほど女騎士ものを知らないのに既視感を感じて笑えるのは何故でしょう
女騎士系小説をあまり知らない方も、事前知識として目を通してみると面白いかと思われます
ちなみに前回あんなことを書いたのに、今作には世界観上、「ハイレグ」「水着」「ポーズ」の単語は一切ありません。全部「ハイグレ」などの単語で済ませてしまっています。ですが書いてみて、わざわざ書き分けなくても文脈で何とかなるものだと思いました

で、そんな基本エ□展開となる女騎士ものをモチーフにしてしまったため、今回の作品内には一部過激な表現(単語?)がございます
念のため、自主的にR-15規制とさせていただきます。勿論、強制力はないのですが



女騎士「くっ、殺せ!」オーク「なら、ハイグレ人間になってもらおうか」
Inspired by としあき


目次
囚われの女騎士
憤怒の女騎士
戸惑いの女騎士
エピローグ[11/9更新]
エピローグ/城内[12/31更新]

あとがき
あとがき2[11/9更新]
あとがき3[12/31更新]





「……ろ。起き……。起きろよ、騎士様ぁ」
 私を目覚めさせようとする声と共に、饐えた吐息が顔に掛かる。不快さに唸りながら瞼を開くと、眼前には――
「――オ、オーク!?」
 私たちの帝国に害を成す異種族が一、オーク族の者がいた。
 特徴は豚鼻と前に突き出した牙と禿頭、そして屈強な人間の男よりも二回りは大きな身体。腕は丸太のように太く、胴回りは人間三人がかりでやっと囲えるほど。脂肪とも筋肉ともつかない身体に粗末な皮の腰巻きのみを身につけており、知恵は多くの個体が人間で言う十歳並。それがいわゆるオーク族だ。
 オークは群れを成し、洞窟に住処を作る――例に漏れず、この場所も薄暗い洞窟であった――。食事は雑食で、普段は野山の動植物を口にしているが、それが足りなくなると大挙して人村に押し寄せてくるのだ。その際、村人の殆どは殺されてオークの食欲を満たす糧になるが、一部の女性は別の欲求のはけ口に使われるという。
 昨今、帝国領内ではオークの大量発生が報告されていた。そして実際にいくつかの村が奴らの牙にかかって滅んだ。私も視察のため現地に赴き……その惨憺たる有様に激しい怒りを覚えた。家は燃やし尽くされ、畑からは根こそぎ作物を奪われ、そして飛び散っている血の量に比べて明らかに遺体の数が少なかった。残されているものも、住処に帰るまで我慢できなかったのだろうか、肉を噛み切られていたり服を剥がされており、正に鬼畜の所業としか言いようがなかった。
 私は王城に帰るとすぐさま女帝陛下に進言した。――オーク討伐の許可を、と。陛下は大臣に討伐隊の編成を命じ、私はありがたくもその隊長の任を賜った。
 そして準備を万全に整え、数百の女性騎兵を率いてオーク討伐作戦を開始したのだが……。
「ぶふふふ。一騎当千の騎士様も、こうなっちまえば可愛いもんだなぁ」
 余裕の笑みで鼻を鳴らすオーク。人語を解しているのを鑑みると、どうやら知能の高いオークらしい。だとしてもこんな畜生、生かしておく価値もない。私は腰の剣に手をかけようとして、しかし果たせなかった。
「腕が……!」
 そこでようやく自分がどれほど酷い格好をさせられているのかを確認した。身体と両足は、縄で背中側の柱に括りつける形で縛られていた。腕も同様だが、脇の下を見せつけるかのように頭の後ろで組まされている。そして、頑強な鎧はおろか下着一枚着けていない生まれたままの姿。自慢の豊かな胸も、姫様に白磁のようだとお褒めいただいた肌も、波打つブロンドの長髪も、全てが淀んだ空気に晒されていた。まるで磔にされた罪人のようだ。
 私は頬がカッと上気するのを感じる。
「くそ、解放しろ!」
「ぶふ。解放しろと言われて従う奴が居るかよ。ちったぁ考えろ、アホがぁ」
 こんなおぞましい畜生に囚われるとは……何たる屈辱。今この手に剣さえあれば、一刀のもとに切り捨てられるというのに……!
 オークは腰をかがめ、私の顔を覗き込んでくる。反射的に目線を反対方向に逸らす。
「お前のせいで、何十もの仲間たちが殺された。その落とし前、どう付けてくれるんだぁ? えぇ?」
「……貴様らはそれ以上の無辜の民の命を奪っただろう」
「はっ! オレたちは生き延びるために、ちょこっと食いもんを貰っただけだ。なのに人間はどうだ。食うに困らねぇほどの食いもんがあるのに、オレたちの肉が必要なわけでもねぇのに、ただオレたちの命を奪おうとする。そんな理不尽があるかぁ!?」
 オークのささくれ立った指が、私の顎を掴んで顔を向けさせる。鼻に吐き気を催す悪臭が侵入してきたが、私は目だけは頑なに合わせまいとする。
「百万の民の安全を守るため、そして同胞の仇を討つためだ……!」
「仇ぃ!? 仇討ちならなんだってしていいのか!?」
「……っ」
 私は答えに窮する。
「なら!」オークは一層鼻息を荒くして、「オレの仲間の仇であるお前をどうしようとオレの勝手……だよなぁ?」
 醜悪な笑みを、幅広の口の端に浮かべた。
 やはりか。人間の女をわざわざこんなところに連れ去って身ぐるみを剥いだのだ。こいつらオークの考えることなど一つしかない。
 孤立無援にして武器もない私にどうせ助かる望みはない。ならば……。
「くっ……殺せ……っ!」
 畜生に汚されるくらいなら純潔のまま散りたい。高貴なる帝国騎士としての最期の意地だ。
 しかし、
「そう簡単に楽にはさせねぇよ、騎士様ぁ。これから罪を償ってもらわなくちゃならねぇんだからな。その体でたーっぷりと、なぁ……!」
 肝に響くような気持ち悪い撫で声でオークが言う。私を殺さず、生かして贖罪させる――その意味は改めて言われずとも判る。
 私は、オークの慰み者にされるのだ……っ!
「ぶっふふふふ! やっぱりいいモンだなぁ、絶望に塗れた人間の顔は!」
 惨めだ……。身も心も全てを我が祖国と陛下の為に捧げると誓ったのに、あぁ、これから私はこいつに……!
 だが、オークは意外にも「まあ待て、早まるな」と私を窘めた。
「お前の思ってるようなことは今回はしねぇよ。ちょっとからかっただけだ」
「からかった、だと?」
「そう。今回はちょっと事情があってなぁ。ぶふふ、人間はよく分かんねぇなぁ」
 言うとオークは振り返り、洞窟の奥へと一声咆哮した。私は鼓膜を揺らす音波に眉を顰める。これはオークが用いる、増援を求める鳴き声だ。
「……オヤブーン! 連れて来ましたブー!」
 数十秒後、闇の中から姿を現したのは一回り小さなオークが一匹と、
「エ、エルザ!」
「……セレナ、お姉様……っ!」
 そいつに後ろ手を拘束された我が騎士団のナンバー2、エルザであった。
 短く切り揃えた赤い髪になぞらえて、人呼んで炎の騎士。まだ歳若く小柄ながらも獅子奮迅の活躍をする彼女の裏に、両親をオークに殺された過去があることを私は知っている。有志を募ったオーク討伐隊結成の折には真っ先に志願してきたほど、彼女はオークを憎んでいた。
 なのに今はどうだ。エルザもそのオークに捕まり、見たところ怪我はないようだが、
「……その服は、一体どうしたのだ」
 私のように全裸でこそないが鎧のままでもなく、見たこともない格好をさせられている。肌に張り付く薄手の橙色の布一枚が、股から肩までを最小限の面積で包んでいる。特に目を引くのは、腰骨まで顕になっている鋭角の足ぐりだ。良く言えばとても動きやすそうな、悪く言えば女性性を恥ずかしいまでに強調する服装だった。
 エルザは私の問いに視線を上げ、安心したように目を細めた。
「お姉様……まだ、ご無事でしたか……! 良かったぁ……」
「ああ。お前も無事で何よりだ」
 私たちが再会を喜ぶのを邪魔するように、オークが割り込んできた。
「ぶふふ。そんなことを言っている暇はあるのかなぁ? なぁ、エルザちゃん?」
 するとエルザはびくりと震え、恐怖に顔を歪ませた。小オークが彼女の手を解放すると、エルザはゆっくりと倒れこむように、私の足下に跪いた。
「ご、ごめんなさいお姉様……! わたしのせいです。わたしのせいで、お姉様もみんなも……っ!」
 エルザのせい、とは? いや、それを聞く前にもう一つの方を訊ねよう。
「討伐隊の皆も無事なのか? ……命だけは、助かっているのか?」
「はい、生きてます。……だ、だけど……っ!」
「――おらぁ! さっさと打ち合わせどおりに喋るブー!」
 小オークは、手で弄んでいた何かを投げ捨て、舌っ足らずに吠えると無防備なエルザの尻に蹴りを入れた。「ひぐぅっ!」と悲痛な声を上げるエルザ。下郎が。あの不遜な豚面を殴り飛ばしてやりたい……!
 エルザは肩を震わせ、伏したままこう言った。
「わたし、なんです。森のなかでお姉様を気絶させ、オークに引き渡したのは……」
「何、だと?」
 まさか。私を姉と慕い、忠誠を誓ってくれている彼女がそんなことをするなど、何かの間違いではないのか。本人の口から告げられてすら、私は信じられなかった。
 確かに、オーク掃討作戦の半ば、森の中で軍を展開している場面で私の記憶は途切れている。背後から頭部に打撃を食らったのだ。その犯人が、エルザだったというのか。
 何故そんなことを。そう問うより早く、彼女自ら白状をし始めた。
「出撃前、わたし、大臣に呼ばれたんです。そしてこう教えられました。……『セレナはオークと内通している』と。証拠だという品も見せられて、わたしはそれを信じてしまって……森でお姉様を気絶させて大臣の私兵に引き渡すように言われて、そうしたら……!」
 私兵の代わりにオークの群れが現れた、というところか。そして私という指揮官を失った討伐隊は、易々とオーク共に捕らえられた、と。
 全ては大臣の差金か。奴は前々から良からぬ動きをしているようだったが、まさかオークなどと通じていたとは。大方、オークを利用して姫派である我々騎士団を消し、姫派の発言力を落とすのが目的なのだろう。大臣は、姫様の弟君である王位後継第二位の王子の養育係。もしもこの後に陛下と姫様を誅する算段を立てており、実行されることがあれば……王位を継いだ幼い王子の執権となるのは、間違いなく大臣だ。そんなこと、許されるはずがない……!
 ただ、今の私には何も出来ない。唯一出来るのは、エルザの中の疑いを晴らすことだけ。
「私がオークと通じているなど、真っ赤な嘘だ」
「分かっています! 申し訳ありませんでした……あの時のわたしは、本当にどうかしていました……よりによってお姉様を疑うなんて! オークに捕らえられてから、何度も後悔しました。何度もみんなに謝りました。お姉様に謝りたいと思っていました。でも、わたしのしたことはもう取り返しが……」
「そんなことはどうでもいい! 私は怒ってなどいない!」
 エルザは弾かれたように面を上げた。一瞬輝いていたその表情はしかし、すぐに再び悲しみに沈む。私は励ましの言葉を続ける。
「命があるのならばそれでいい。どれだけ無様な姿を晒そうとも、お前たちだけは生き延びてくれ」
 責任も汚れも、全て私が引き受ける。その覚悟は、エルザから皆の存命を聞いた瞬間から決まっていた。
 私一人の命であれば騎士の誓いに則り、この身を畜生に捧げるくらいならば自害も已む無しと思っていた。が、私は隊長。私一人の体と命と引き換えに皆を解放するようオークと取引することも厭いはしない。
 深呼吸を一つし、オークの目を見つめる。
「オーク……私はどうなってもいい。だからエルザや、他の皆だけは助けてくれ」
「あぁ? 聞こえねぇなぁ」
 バカにしたようにニヤつくオークに頭を下げるのは屈辱だ。しかし、皆のためには耐えねばならない。私は今の体勢で可能な限り、頭を垂れた。
「頼む、皆には手を出さないと約束してくれ。私が代わりになるから……」
「あぁん!?」
「……お願い、します。私を、好きに……してください……!」
 必死の哀願の最中、私の拳は血が滲むほどに握られていた。悔しいという思いで胸がいっぱいになる。そこに、
「お姉様……でも、もう遅いんです……」
 エルザのか細い声は、何かを諦めたような切ない色を秘めていた。
「何が、だ?」
「……みんなもう、完全なハイグレ人間にされちゃいました。それに、わたしもさっき……ハイグレ、着せられちゃいました……っ!」
「は……?」
 言葉の意味が理解できない。ハイグレ人間? ハイグレ? だが、大量の涙で頬を濡らしているエルザがふざけているとも考えられない。
 嗚咽混じりに、エルザは私に縋りついてくる。
「お姉様、助けてくださいっ! わたし、あんなのになりたくない、ですぅ……っ!」
 彼女の頬が赤い。加えて何かを我慢しているかのようだ。
 私は頭を働かせる。そしてエルザの発言から一つの推測を立てた――エルザが着ている衣装の名が、ハイグレ。討伐隊の皆はエルザより先にハイグレを着せられ、身体に馴染まされてしまった。ハイグレには呪術のようなものが掛かっていて、命こそあるもののまともではない状態にされてしまい、エルザもじきに同じようになってしまう、と。
 それならば、まだまともでいられる内に、
「その服を脱ぐのだ、エルザ!」
「だ、ダメです……キツく食い込んでて、脱げな――ひゃああんっ!」
「エルザ!?」
 悔しそうに肩紐に手をかけたのとほぼ同時に、彼女は身を反らして嬌声を発した。それを聞いたオークたちが「ぶふふ」と笑う。
「そろそろ限界だろうな。が、光線を浴びせてからよく保った方じぇねぇかぁ?」
「まったく、人間も妙なのが好きなんだブーね。まぁ、言うこと聞いてくれるなら何だっていいブー」
 またしても理解が出来ない。こんなときに私は、魔法に関する勉強を怠ってきたことを悔やんだ。光線とは? 言うことを聞くとは?
 新たな情報に混乱する私だが、そんな疑問は直後、エルザの行動を見ることによって完璧に吹き飛んでしまった。
「――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「エ、エルザ……何をしているのだ?」
 エルザは直立状態から足を大きく広げて腰を落とした体勢となり、鮮やかな橙の布と下腹部の素肌の境目の部分に沿って、両手を繰り返し動かし始めた。頬はこれ以上ないほど紅潮しており、涙も留まる所を知らず流れ続けている。どう見てもこの動きはエルザの意志ではない。ハイグレとやらに操られているのかもしれない。
「ハイグレっ! 嫌、恥ずかしい……! ハイグレっ! ハイグレぇっ!」
 私は腹の底がグツグツと煮えたぎるのを感じた。エルザの痴態を眺めて高笑いするオーク共に向けて、私は叫ぶ。
「よくも……よくもエルザをこんな目に! 許さんぞ! 貴様らぁっ!」
「ぶふふふふ! 許さねぇならどうするってんだ、騎士様ぁ?」
「くっ……!」
 いくら身体を捩っても、手足の拘束は解けない。目の前に助けを求めている妹分がいるというのに、私は何もしてやれないのか。
「分かるか? お前は部下を誰一人助けられなかったんだよ。せいぜい大人しく、変わってくこいつを見守ってやるんだなぁ! ぶふひひひひゃぁ!」
「ぶふふふふっ!」
 下卑た笑い声が洞窟にこだまする。そしてまた、エルザの声も。
「ハイグレっ! ハイグレっ! お姉様ぁ、わたし、もう……っ! ハイグレっ! んっ……ハイグレっ!」
 激しく動き続けるエルザの身体に合わせて、ハイグレが伸縮する。彼女の蕩けた表情と漏れる吐息から、エルザを疲れ以上の何かが襲っているのだろうと察することが出来た。
 あのハイグレとやら……まさか、そういうことなのか……!
「下衆め! 人間の尊厳を何だと思っているのだっ!」
「ぶふふ、やっと気付いたか。ならば全て話してやろう」エルザのハイグレという声を背に、オークは語り出す。「二週間前、オレたちはお前らの国の大臣からこの討伐作戦の情報を流してもらった。当然、どうして人間のお前がそんなことを教えてくれるのか、と思うだろう。大臣はこう説明した。『儂の野望の成就には、騎士団が邪魔になる。だからお主らに全滅させられたことにして、存在を抹消したい。が、敵にすれば惜しい戦力は味方に出来れば頼もしいものだ。儂は異次元の悪魔と契約し、とある武器を授かった。それをお主らに託す。それを用いて騎士団全員をオークの、ひいては儂の下僕へと生まれ変わらせろ。だが武器による攻撃以外、騎士団員には手を出すな。……但し、奴らの方から懇願してきたならば、その限りではないが、な』と」
「オヤブンかっけぇブー! よくそんな長台詞を覚えてられるブー!」
「よせやい、照れるだろっ」
 私は唇を噛んだ。売国奴め。大臣が悪魔と契約していたなどとは、思いもよらなかった。事前に謀略を察知できていれば、こんなことにはならなかったはずなのに……!
「そういうわけで、オレたちは森で待ち伏せをして機を待った。んで、エルザがお前をぶん殴って倒したところで一斉に飛び出して、全員ここに運んできたのよ。簡単な仕事だったぜ」
「……他の皆は、どうしている」
 最悪の返答を覚悟しつつも、聞いておかねばならないことだ。
「とっくに全員生まれ変わったぜ。ハイグレ人間に、なぁ」
「ハイグレっ! ダメ、もう、無理ぃ……ハイグレぇっ! ハイグレぇっ! ……オ、オーク、なんかに、わたし……ハイグレっ!」
「ハイグレ人間はみーんな素直な良い子だぁ。オレたちの言うことは何だって聞くし、それどころか向こうからも、な……! 今頃向こうの大部屋で、オレたちの仲間とよろしくやってんじゃねぇかね」
「オラ的には素っ裸じゃないのがちょっと残念だブー」
「馬鹿言え、これはこれでオツなもんだろうがぁ!」
「ひぃ! すみませんブー!」
 時折挟まれる親分オークと小オークの漫才が、ひどく腹立たしい。エルザが必死に戦っている横で愉快にしているのがたまらなく不愉快だ。
 そしてやはり、皆も本当に無事とは言い難い状況にされていた。エルザは皆が変わっていくさまをずっと見せられ続けていたのだろう。そうして結局、自らもハイグレを着せられた。彼女を思うと無念で仕方ない。
「……や、だよぉ――ハ、ハイグレっ!!」
「済まないエルザ、皆……私は……っ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 ハイグレの声が大きくなったような気がして、私はエルザの方を向いた。彼女は相も変わらずおかしな動きをし続けている。しかし表情に変化があった。恥ずかしさを耐えているような様子が失せ、ただただ興奮と快感に身を任せているような……。
「……エルザ」
「ハイグレっ! ハイグレっ!」
「おいエルザ。返事をしろ、エルザっ!」
 一喝すると、ようやく視線が合った。だが、瞳が虚ろだ。
「ハイグレっ! ハイグレっ! 何ですか、お姉様? ハイグレっ!」
「どうした、何だか様子がおかしいぞ……?」
 まさか。まさか……!
「ハイグレっ! わたしはおかしくありませんよ? むしろおかしいのはお姉様の方じゃないですか。全裸だなんて野蛮で美しくありません。どうしてハイグレを着ないのですか?」
「な、何を戯けたことを!」
 確かに汚らわしいオークなどに私の裸体を晒してしまったことは一生の不覚だ。だが、私には少なくともそれを恥じる心は残っている。
 なのに、エルザは、
「人間は皆ハイグレを着て、ハイグレ人間になるべきです! そしてわたしたちをハイグレ人間にしてくださった方々に支配される悦びを味わうのです、セレナお姉様も! ハイグレぇっ!」
「……エルザ、哀れな……」
 彼女は完全に、ハイグレに屈服してしまったのだった。ハイグレの支配に耐え切れず、あろうことか両親の仇に服従するようになってしまうとは……。
「許すまじ、オーク……許すまじ大臣……っ!」
 あまりの怒りに我を忘れそうになる。が、何とか踏み留まる。私は帝国騎士団筆頭、セレナ。己の立場を再確認する。
 オークの余裕は全く崩れない。愛玩動物を見るかの如き視線で私を見ると、太い親指でエルザを指差した。
「まぁそう言うなよ。お前もじきにあいつみたくなるんだからなぁ」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! オーク様方、わたしをハイグレ人間にしてくださってありがとうございますぅ! ハイグレっ!」
 そして小オークから受け取ったのは、丁度柄が折れ曲がった剣のような大きさと形状のものだ。鍔の辺りには円盤が付いている。先端の丸いところを察するに、特殊な杖だろうか。ただ、オークが魔法を使えるなどという話は聞いたことがない。どうせハッタリだ。
「ふん。生憎と、私はいかなる行為にも決して屈しないぞ。どのような拷問にも口を割らないよう、幼少の時分から教育を受けてきたものでな」
 ほぉ、とオークは感心する。
 私の言葉は決して嘘ではない。だが、訓練はあくまで人間世界で考えられるうる拷問に対してに過ぎない。亜人種や、ましてや悪魔の秘術に対抗できるかどうか……正直分が悪い賭けだ。
 それでも、負けるわけにはいかないのだ。
「ぶふふふ……なら試してみようぜ、騎士様。お前の心が勝つか、この悪魔の武器――ハイグレ洗脳銃がお前を屈服させちまうか、なぁ……!」
「洗脳、銃……!?」
 銃、というのか、その武器は。どんな攻撃方法なのか全く見当もつかない。武器の名を聞くだけでなんとなく異様な雰囲気を覚える。
「オレもよく知らねぇが、大臣が言うには精神支配魔法が込められた杖らしいぜ。この引き金を引くだけで魔法が発動して、あの姿になるんだと」
「あ、あんなものを私に着ろと!?」
「ぶふっ。オラ、魔法使うの初めてだったブー。こんなに楽しいものだったブね」
「何だと……!」
 魔法の素養がない者、しかもオークなぞにすら魔法が使えてしまう杖、だと。正に悪魔の武器……!
 だ、だからといって怖気づくものか。私は何者にも屈しない。私が仕えるのは国と陛下、そして姫様。どんな姿になろうとも、決してオークや大臣に心変わりなどするものかっ!
 オークは銃の円盤を操作してから、先端を私に向けて構えた。
「お前が最後の人間だからな。ちょっとは情けを掛けてやるよ」
「情けだと? ふん、そんなもの――」
 一瞬苛立ちを覚えたが、
「一時間だ。魔法の効力を一時間のみに、そして洗脳力を最低に設定した」
「つ……つまり、一時間洗脳を耐え抜けば解放してくれると、そういうことか?」
 それならばどんな拷問であれ容易いものだ。ぬかったな、頭の足りないオークめ。その情けが命取りになるということを、一時間後に教えてやろう!
 私は表情に出さないように、心の中でほくそ笑んだ。それ以上の大笑いを、オークはしていたが。
「ぶふふふふっ! じゃ、せいぜい頑張って、少しでも長くオレたちを愉しませてくれよぉ?」
 胸元に銃の先が突きつけられる。間もなく私も、あのハイグレとやらを着せられるのか。単純に考えれば裸よりも布一枚でも纏っている方がマシだろうが、それがオークによって与えられる被征服者の証ともなれば話は別だ。
 悔しいし、惨めだが……たった一時間の辛抱だ。
「覚悟は決まったか?」
「……あぁ」
「なら、ハイグレ人間になってもらおうか……騎士様よぉ……!」
 オークの太い指が引き金に掛かる。先端の球が淡く発光し始める――
「あ、オヤブン。さっきオラ、銃の洗脳力ダイアルを壊しちまって――」
 小オークの告白に、え? と素っ頓狂な声を上げたのは私か、親分オークか、それともその両方か。
 しかし引き金は音を立てて引かれてしまった。同時に桃色の光が発射され、一直線に私を貫いた。
「あばばばばばばばばばばばば――!」
「……多分それ、最強設定になってるブー」
「ドアホぉ!」
 オークの会話は、音としては耳に届いていた。しかしその意味を解する余裕が私の脳には無かった。
 身体中が不可思議な光に包まれ、電撃のような痺れが駆け巡る。合わせて脳を直接手でこねくり回されているかの如き、吐き気を催す不快感が襲いかかってくる。
 が、不快感はある一点を越えた瞬間に反転した。すなわち、脳を洗われている感覚がこの上ない悦楽だと思えてきたのだ。見えない手に撫でられた部位に蓄えられていた記憶が変容していく。そうして人間としての記憶や性格や価値観が、新たなものに無理やり書き換えられていく……。
 そんなの、死ぬのと変わらない。なのに……こんなに気持ちいいなんて……!
「うびゃあああああああああ!!」
 それは悲鳴か、はたまた産声か。
 点滅する光に包まれておよそ十秒。その僅かな間に私は生まれ変わった。
 手足の拘束は取れていた。良かった、と心から安堵する。あのままだったら私は……ハイグレが出来なかったのだから!
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
 私に与えられたのは、純白である以外はエルザと変わらない、ハイグレ人間の証と誇り――すなわちハイグレ。胸をすっぽり包まれ、逆に足の付け根はさらけ出して、一心不乱にハイグレする。その度に体の中は熱を帯び、心の中には幸福感が湧いてくる。
 こんなに素晴らしいことが、他にあろうか……!
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
 見れば、エルザも橙のハイグレで私に合わせてハイグレをしていた。
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 そうか、彼女もこんな気持ちだったのか。それも知らずに私は、ハイグレを脱げだとか哀れだとか、信じられないことを言ってしまった……。
 贖罪の意味も込めてハイグレに浸る最中、オーク様方は何やらお話をなさっているようだった。
「おい! お前のせいでもう洗脳が終わっちまったじゃねぇか! くそ、無様に堕ちていくさまをじっくり楽しもうと思ったのに」
「ヒィィ! 申し訳ありませんブー! ……でも、この方が手っ取り早く言うこと聞かせられてオラは――」
「口答えすんなバカ! ったく、計画が台無しだぜ……」
 親分オーク様は腕を組み暫し考えこむと、「あ」と顔を輝かせた。
「なら趣向を変えて……こんなのはどうだぁ?」

 光線を浴びて五十九分後。私は再び柱に磔姿にされていた。
「お、おやめ下さい! これでは私、ハイグレが出来ませんっ!」
 藻掻けど足掻けど、手足の縄は解けはしなかった。身をよじるとハイグレが食い込むが、その程度の刺激では物足りない。
 約一時間、私は完全にハイグレの虜になっていた。他の何にも目もくれず、ずっとハイグレをし続けた。それがハイグレ人間の使命であり、私の意志でもあったから。
 エルザもハイグレを止め、心配そうにこちらを見つめていた。オーク様の意図は、エルザにも分からないのだ。
「あぁ、お可哀想なセレナお姉様……っ!」
 オーク様は満足気に、拘束された私を見つめなさる。そして仰る。
「ぶふふ、ハイグレ人間セレナ」
「は、ハイグレッ!」
 返事のハイグレ。しかし動きの伴わない不完全なものだ。
「お前への洗脳は不完全な設定の元で行われた。洗脳が解けると、お前は人間の頃の記憶を取り戻すだろう」
「そんな! こ、この神聖なハイグレは、どうなってしまうのですか!?」
「綺麗サッパリなくなって、素っ裸になるんじゃねぇかな」
「う、うぅ……!」
 思わず涙が溢れてきた。ハイグレ人間にとってハイグレを着ていない状態など、言葉で言い表せないくらい嫌悪感を催すものだ。そんな下賤で野蛮な身に貶められねばならないなんて。
 何故オーク様は、私を不完全な洗脳で生まれ変わらせたのですか……! そうは思っても、恐れ多くて口にすることは出来なかった。
「……それで、オーク様」
「何だ?」
「私はいつ、人間になってしまうのですか?」
 震える声で尋ねた。返ってきた答えは、
「丁度、今だな」
「え――?」
 ――頭の中に、白い閃光が走った。


 泥のような獣臭に混じって、自分の汗の臭いがする。
「私、は……一体……?」
 手足が動かない。ここは洞窟か。頭がそんな非日常の光景に必死に追いつこうと、記憶を整理していく。
「……お目覚めか、騎士様ぁ」
 低く響く畜生の声を聞いた瞬間、ようやく今の状況を飲み込めた。
 そうだ、私は騙されたエルザの奇襲を受けてオークの洞窟に連れ込まれ、ハイグレ人間に――!
「う、あ……!」
 帝国騎士たる私ともあろう者が、何てことを。ハイグレなるおぞましい衣装に心を奪われ、僅かな間とはいえオークなどに服従を誓っていたなんて、何たる失態、何たる屈辱か!
 ――あぁ、身体の奥底が疼く。
 うつむいた拍子に、自分がまたしても一糸まとわぬ姿にされていたことに気付いた。だが、それでも私は心から安堵した。何故ならこれこそが、人間が人間として生を受けた瞬間の姿、自由の証明なのだから。例え恥部を隠せたとしても、ハイグレを着ているより何万倍も良い。
 ――本当に?
 不意の頭痛に顔を顰めた直後、オークが地面を揺らして近づいてきた。
「気分はどうだい」
「ふん。最悪に決まっているだろう。……しかし、さっきまでに比べれば天国のようだ」
「ぶふふふふっ! 笑わせてくれるぜ。素っ裸のくせに天国たぁ、とんだ露出狂の変態だなぁ! 騎士様よぉっ!」
「何とでも罵るが良い。私の心はその程度では傷一つ付きはしない!」
 今の私に出来る精一杯の抵抗は、誇り高き帝国騎士セレナはここにいると示し続けることだけだった。
 ――騎士……安いプライドだ。そんなのに縋らねば、自分を保てないのか。
 ある意味で私は幸運だった。一度は卑しきハイグレ人間と化してしまった身なれど、オークの戯れのために人の心を取り戻せた。
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 そう、エルザや他の仲間たちは恐らくもう二度と、人間には戻れない。洗脳の瞬間に感じた死の予感……あれは紛れも無く人間としての終わりだった。命尽きるまでハイグレ人間として、オークらに身と心を捧げ続けることになるのだ。
 ――素晴らしいことじゃないか。
 そんな哀しいことが他にあろうか! あんなのは骸が動いているようなものだ。ハイレグに包まれ畜生に平伏して生き恥を晒すくらいならば、人間としての彼女たちも死を選ぶだろう。
「なぁ、エルザ……もう、やめよう」
「何をですか? ハイグレっ!」
「ハイグレを、に決まっているだろう。オークを憎み、両親の仇を討つと言っていたお前は、どこへ行ってしまったのだ……?」
 オークの罵倒には揺るがない私も、仲間の為にならば涙も零れる。問いかけにエルザは、平然と答える。
「ハイグレっ! エルザはここにいますよ、お姉様。ただ、今はオーク様のなさったことに憎しみなど感じていませんが。私の親は愚かにもオーク様に歯向かったのですから、殺されて当たり前じゃないですか!」
「お、お前、何を言っているのか分かっているのか!?」
「ハイグレっ! もちろんです。わたしは、わたしをハイグレ人間にしてくださったオーク様の忠実な下僕。オーク様に従わず、ハイグレを拒む者は、例え両親であれど下等な存在だと確信していますから。ハイグレっ!」
 騎士団は私の同胞にして姉妹にも等しい。苦しむ妹の介錯は、姉たる私の務めだろう。せめてこの身体が動くならば、哀れなエルザを一刻も早く両親の元に送ってやるものを……!
 ――果たしてそうか? エルザが苦しんでいるように見えるのか?
 歪んだ笑顔を顔に貼り付けながら、エルザは更に私に語りかける。
「ですが、お姉様は違いますよ。だってわたしと共にオーク様に仕えると誓った、大切な仲間でありお姉様ですから! ハイグレっ!」
「……エルザ。お前は、やはり……」
「ハイグレっ! はい! わたしはハイグレ人間、エルザです! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 かくまで変わり果てた彼女を前に、私はもう何も言えなかった。怒り、悔しさ、申し訳無さ、虚しさ、哀れみ……様々な思いが混ざり合って、心に闇を落とす。
 ――羨ましいのだろう?
 ……うるさいぞ。
 ――ハイグレを着て、ハイグレをして、快感を享受しているエルザが、羨ましいのだろう?
 黙れ! 先ほどから私の心に囁きかけてくる、貴様は誰なのだ!
 ――私は私だ。他の誰でもない。
 ならば何故、ハイグレに肩入れするようなことばかり言う! 私は二度とハイグレなどには屈しない! 私の心の中に、貴様のような軟弱な精神の居場所はない! 消えろ、痴れ者っ!
 ――ふふふ。何とでも吠えるが良い。だがセレナ、断言しよう。お前は今に、自らハイグレを求めるようになる。
 何を馬鹿な……! あ、あり得ない! そんなこと、決して! 幻聴め、さっさと失せろ!
 強く念じると、声は乾いた笑いを放ってから沈黙した。
 目覚めてから断続的に語りかけてきた内なる声との対話。声は、人間の尊厳を忘れてハイグレ人間の悦楽に溺れてしまった、弱い私だった。
「お姉様、辛いですか?」
 対話によって、私はいつの間にか玉のような汗を全身にかいていたらしい。エルザは消耗した私を心配そうに見つめている。
「そうですよね。お姉様も一度はハイグレの素晴らしさを知ってしまったのですもの。ハイグレなしではもう、生きていくのも辛いですよね」
「そんなことはない! 私はハイグレなど求めていないっ!」
 私の反論に、エルザは駄々っ子を見るような生暖かい目を向けてきた。
「大丈夫です。お姉様の心の底には、しっかりとハイグレ人間としての心が残っているはずです。どれだけ忘れようとしても……もう、無駄ですよ?」
 ドクンと心臓の鼓動が早まった。下腹部に水っぽい疼きを感じた。
 この私にハイグレ人間の心が残っている? この疼きはそのせいなのか?
 まさか、そんなはずはない。過去が何であれど、私は完全に人間としての心を取り戻したのだ。僅かにハイグレに抱く快の感情は、決して私のものではない。
 ……違う。そうか、全て分かったぞ。ははは、悪魔の武器とやらは大したものだ。まさかこの私がこうまで幻覚に囚われるとはな。
 悪魔の武器に込められた魔法のからくりはこうだったのだ。まず、あの光に包んだ者に『ハイグレ人間に堕落した自分』という幻覚を強制的に見せつける。幻の中でハイグレ姿であの動きをさせて、快感を心に植え付ける。そして一定時間後に幻から解放する。こうして心を完全にハイグレに奪われてしまうと、自ら再びハイグレ人間にさせてくれと懇願するようになってしまう。何かに魅了された人間は弱い。討伐隊の者たちはハイグレの悦楽に負け、ハイグレを与えてくれたオーク共の言いなりと化してしまったのだろう。
 そしてエルザも。いや、彼女は初めからオークの味方で、口裏を合わせているのかもしれない。何せ私はエルザがハイグレ光線に撃たれたところを見ていないのだから。ハイグレを着せられ、助けを求めてきたのも演技ではないとは言い切れない。そうさ、この世に心を掌握する魔法はあれど、服装を変化させるという器用な魔法など聞いたことがない。その点だけでもあの一時間が幻想だったと判断できる。
 全ては大臣とオークの罠。あの一時間もこの心の声も全て、怪しげな光による幻。私は悪魔の囁きに耐え切ったのだ。
 付け加えると、人間は一度掛けられた幻惑魔法に対して抵抗力がつくものだ。つまりあの光を再び喰らったところで、幻覚に負けることはあり得ない。
「甘いぞ……。帝国騎士たる私を虜にしようなど、難攻不落の城を落とすに等しいと知れ!」
 奴らの企みを読みきった私はエルザやオーク共に対して、精一杯に余裕を振り絞り口の端を上げた。
 ――口では何とでも言える。だが、心までは偽れないぞ。
 すると、
「ぶふふふふ! さっきまでハイグレの虜になっていたくせに、白々しいなぁ!」
「お前のどこが難攻不落だったブか? ぶふふふっ!」
 オークたちは腹を抑えて転げまわった。
 愚かな。どちらが白々しいのだ、と私はほくそ笑む。こいつらはまだ銃の効果を『実際にハイグレを着せておかしな動きをさせ、ハイグレ人間に堕落させる』ことと偽ろうとしているようだ。ふん、どれだけ挑発しようとも既に武器の仕組みを理解した私には無駄だ。
 ――愚かなのはお前の方だ。何故現実を直視しない?
 笑止。あれが現実であったはずがなかろう。この私がああも容易く心を奪われるなど絶対にない。であれば全て幻覚であったと考える方が、いくらかこの世の道理に合っている。服装変化の件も含めてな。
 ――絶対など。この世の道理など。彼の方の前では全て夢想と化すというのに……!
 声は相変わらず、訳の分からないことを呟き続けている。が、私はもう騙されないぞ。
 心に余裕が生まれたところで、私は今後のことを考えた。
 オーク、ひいては大臣の狙いはハイグレ洗脳銃の効果から察するに、私を含めた討伐隊全員を言いなりの手駒にすることだろう。そうして王城に攻めこませるつもりだ。
 エルザの言葉を信じれば、私以外の数百人は既に奴らに寝返ってしまった。私一人を欠こうとも、攻城の成功率はほぼ変わらない。ならば例え私が服従を拒み続けても、準備が整い次第城は奇襲を受け、大臣の謀反が果たされてしまう。あのような外道に国を、民を、そして我が剣を預けられる訳がない。
 謀反は絶対に阻止せねばならない。だが今の私は物理的に囚われの身。そんな私が企みを阻止するには……!
「くっ……」
 そこである一つの想像に辿り着き、私は俄に顔を歪めた。頭に電撃が走ったような感覚がした。
 ――ほら、忘れられないのだろう? あの、甘美な快楽が。
 ち、違う! 決してそういう訳ではないっ!
 一瞬脳裏を過ぎった作戦。それは私がハイグレに屈し、服従したふりをして、機を見計らってオークや大臣を討ち取るというもの。くそ、何故私はあのハイグレを着ることになる作戦を思いついてしまったのだ。
 ――それはお前がハイグレを着たいと思っているからだ。
 ふざけるな、と言っている! ……作戦を、立て直さねば……。
「おやおやぁ? 顔が赤くなっているぞ、騎士様ぁ。もしかして、ハイグレが恋しいのかなぁ?」
 オークまでもが見透かしたように、声と同じことを言ってくる。
「ぬかせ、下郎……!」
 苛立ち、目を逸らした先には、
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! あぁんっ、ハイグレ気持ちいい……ハイグレっ! ハイグレぇっ!」
 いまだに痴態を晒し続ける、エルザがいた。あの蕩けた表情……そんなに、ハイグレに心酔してしまっているのか。
 いや、それも仕方のない話だろう。私もあの快楽は身を以て知っている。恥ずかしいなどと考える余地までもハイグレの気持ちよさに埋め尽くされ、ハイグレさえし続けられれば他に何もいらない、とまで思ってしまう。そして自分をハイグレ人間にしてくれたオーク様に忠誠を誓うことに、躊躇いを覚えなくなる。ハイグレは私の存在意義で……。
 そこまで思い出して、私ははっと頭を振った。呑まれるな、それらは全て罠だ。幻だったのだ。
 だが私が溺れた、ハイグレに身体中を締め付けられる感触や、ハイグレをする度に食い込む感覚や、ハイグレと叫ぶ度に心に満ちた幸福感は……本当に幻だったのだろうか。それにしては嫌に現実感があったような気がするのだが。
 ……それに、あれが単なる幻であったならば、ひどく惜しい。私の二十年そこそこの人生の中であのような、まるで楽園に迷い込んだかのような心地になったことはなかった。この世のいかなる快楽をも、ハイグレには優らないと思えたのに。
「あははっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! んふ、ハイグレっ!」
 エルザの破廉恥な嬌声に、心がきつく締まる思いがした。この感情に名を付けるならば、切なさだろうか、それとも羨ましさだろうか。
「あ……う……」
 エルザばかりずるい。エルザばかりハイグレに浸って。私には何もない。下着一枚ない、みっともない姿……私も、ハイグレを着れたなら……。
 ――お前もそう思うだろう? さぁ、早くオーク様に申し上げるのだ。『私に再びハイグレをお与えください。私をハイグレ人間にしてください』と――
 こ、この阿呆が! 目を覚ませセレナ! ハイグレは隷属の証。貴様は畜生以下の存在に成り果ててもいいのか! 誇り高き騎士たる貴様が! たかが快楽のために全てを捨てて蛮族や国賊に仕えるというのかっ!
 でも、彼女はなんと気持ちよさそうなのだろう。幻の中で感じたあの思いを、実際に味わえるのなら、どんな姿にだって……。
「わ、たし、を……!」
「んん? 何か言いたそうだなぁ」
 洗脳銃をもてあそび、こちらを見下ろすオーク。そうだ、こんな獣に服従するなど死んでも御免だ。私は開きかけた口を固く結ぶ。
 先の、エルザに羨望しかけた自分は愚かだった。よく考えてもみろ。彼女は初めからオークの手先。私を堕とすため、銃で見せた幻に現実感を与えるためにエルザは、ハイグレによがっているふりを演じているだけにすぎない。
 ふ、ふふ。危うく術中にはまるところだったが、所詮は豚の浅知恵。私にはお見通しだ……!
 いまだに反抗的な視線をし続ける私に、オークは何か納得したように「そうか」と頷いてみせた。そしてにたりと笑って言うには、
「もしかしてお前、この銃の力を疑ってんのかぁ? 洗脳が解けたせいで、自分がオレたちに服従していたことは嘘んこの記憶だと……そう思ってんのかぁ?」
 図星だった。ここで肯定する訳にはいかず、沈黙を通す。だがオークは、太い指で銃を撫でるようにしながら説明した。
「残念ながら、この銃は本物だぞ? 悪魔から貰った、ってのが本当だか知ったこっちゃねぇが、大臣から借りたのも本当だし、魔法の効果もお前の部下で散々試して実験済みだ。だけどよ、どんなにオレたちに歯向かってた女も、銃で撃った途端にコロッと態度が変わってハイグレハイグレだからな、正直つまんなかったんだわ」
「……っ!?」
 どういうことだ? どういうことだ……!?
「だから最後に残しておいた隊長さんくらいはよぉ、オレの玩具になってもらおうと思ってなぁ。色々考えたんだわ、無い頭絞ってよ。んで思いついたのが、仲間がやられてく中ずーっと『お姉様ぁ、助けてくださいお姉様ぁ!』っつってるこいつを、ギリギリ正気を保たせてあんたの前に突き出してやろう、ってことさ。感動の再会も束の間、すぐにハイグレ人間になっちまうこいつを見て、あんたは悔しがって、怒るだろう。で、一時間耐えられたらって希望を持たせてズバンと撃って、必死に踏ん張るけど結局ハイグレ人間の仲間入り……って寸法だったんだわ。途中までは上手く行ったさ。なのにこの野郎が銃を微妙に壊しやがったから、台無しになっちまったがなぁ!」
「ごごご、ごめんなさいだブー! オヤブンっ!」
 では、まさか、全て……!
「ちなみに実験した中で一番洗脳を拒んだ奴でも、三十分が限界だった。でも隊長さんともあろう方なら、一時間もいけるかもってちったぁ期待してたんだぜ。一回目じゃ無理でも、二回三回と繰り返せば慣れて見事耐えきるかもってな。で、オレの出した試練を乗り越えたお前は、きっとこう言うのさ。『私は決して悪魔には屈しない』ってよぉ。……オレはそれをしっかり聞いてから、一生洗脳が解けない設定の最大出力で光を浴びせるつもりだった。自信に満ちたその面が、一発で快楽に歪む瞬間を見るために、なぁ……!」
 醜悪な笑みを浮かべながら臭気を吐き出すオーク。こいつこそ、本物の悪魔だ……!
 背筋が凍る。膝が震える。裸体にまとわりつく洞窟の空気が、一層冷たく感じられた。
「嘘だ……嘘だ……!」
 認めたくない。あの幻が、あの一時間が……。嫌だ、嘘だと言ってくれ……!
 ――真実と言ってくれ、の間違いだろう? あれが現実なら、あの時感じた思いも本物だったということなのだから!
 オークの言葉が真実ならば、この声こそ私の本当の心の声ということになってしまう。そして同時に、私の確信の方が幻だったということにも。ハイグレ洗脳銃の効果も、エルザの裏切りも、全ては私の勘違いで……。
「ま、元の計画はダメになっちまったが、洗脳が解けてからのこの数分間も結構面白かったぜ。ちょっと前まで完全にハイグレに溺れてたくせに、目ぇ覚ましたら嘘のようにケロッとしてんの。今思い出しても笑えるぜ! ぶひゃひゃひゃぁ!」
 私は稲穂のように項垂れた。最早オークの言葉を疑いようがなかった。
 既に私はハイグレ人間になっていたのだ。隷従の証を身につけ、金の髪を振り乱して、エルザの隣でハイグレを繰り返していたのだ。私の身体も心もとっくに、汚れていたのだ……。
 その事実を信じられないあまりに、根拠の無い屁理屈をこね回して虚構の真実を作った。銃の効果をただの幻術と思い込み、あまつさえ親愛なる妹分さえも裏切り者と決めつけてしまった。すまない……私にはもう、お前に姉と呼んでもらう資格はない……!
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 まだあどけなさを残す彼女は、苦しみなど感じていないような満面の笑みでひたすらハイグレを続けている。私もハイグレをすれば幸せになれるのだろうか。私もハイグレ人間になればこの罪を精算できるのだろうか。
 ――ああ。ハイグレ人間だった頃の私は幸せだった。任務も過去も誇りも全て捨て、ただの一人のハイグレ人間としてハイグレを繰り返しているだけで良かった。それだけで心は満たされ、同時にそれを与えてくれた新たな主に仕えられる喜びを得られた。
 声は、贈り物を受け取った子供のように嬉しそうに語る。今度という今度は私も、声の言葉を素直に聞き入れられた。
 ――恐れることはない。どうせ一度はハイグレ人間となった身。騎士として帝国や姫に縛られたままでは手に入らない幸福を、ハイグレは与えてくれるのだぞ。……思い出せ、あの一時間を。
 すると、靄の掛かっていた記憶が突如鮮明に蘇った。オーク様に光線を浴びせられみっともない悲鳴を上げて、私はハイグレ人間に生まれ変わった。一心不乱に白のハイグレでハイグレをし、オーク様にお褒めいただくと心が踊るようだった。だがしばらくするとオーク様は私に対し、拘束されるよう命令を出された。私は逆らいもせず磔になったが、直後洗脳が解けてしまい……。
「あ……ぁ……」
 心臓が踊った。下腹部が疼いた。そして自分が素肌を晒していることに心許なく、寂しい思いがした。恥ずかしさもそうだが、何より「足りない」という感情が強かった。ハイグレ人間となり充足を覚えてしまった私の心は、人間に戻った今、空虚だとしか思えない。隙間風が通るあばら屋のようなものだった。暖かさも心地よさもここにはなく、ただただ満たされていることを羨むばかり。
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 こんなの嫌だ。ここは寒すぎる。私は今のままではもう満足できない。私は、満たされたい……!
「はぁ、はぁ……私……わた、し……ぉ!」
 乱れる呼気を上手く言葉に出来ない。私に残った最後の誇りが、そうさせているのだろうか。ハイグレを拒み、オークにへりくだることを拒む、騎士としての心が。
 だが、
 ――それがどうした。そんな誇りなど、ハイグレ人間となって得られるものと比べるべくもない!
 その通りだ。私が帝国騎士セレナという肩書を与えられていることなどどうでもいい。私は一つの生命として、より自分の欲求を満たしてくれるものに従うだけだ。
 ――さぁ、改めて申し上げるのだ!
 そして大きく息を吸い込んだ私は……眼前で不思議そうに私の顔を覗き込むオーク様に、こう懇願した。
「私を……撃ってください……っ」
 言葉を吐き出しきると、心の中に達成感と後悔が同時に湧き上がってくる。だが、もう引き返せない。
 オーク様は聞くや目を一瞬見開いたが、すぐに意地悪く弓なりに曲げて、
「んん? ……もう一度、言ってみろよ」
「……私が、愚かでした。私に再び、ハイグレをお与えください、オーク様……!」
 可能な限り頭を下げて乞う。それしか私にできることは無かった。オーク様が考え込むように「ふーむ」と唸るので、お顔を見上げた。その後ろに、笑いを堪える小オーク様と、こちらを見て太陽のように笑うエルザがいた。
 オーク様は舐めまわすように私の顔と身体を見つめると、こう仰った。
「嫌だ、と言ったらどうする? 騎士様ぁ……!」
 つまり、私に全てを捨てる覚悟があるのかと、そう尋ねておられるのか。
 身も心も捧げる覚悟は……できている。あとはそれを伝えるだけ……!
 粘っこい唾を飲み下し、私は告げた。
「私……セレナーデ・アリア・イグレシアスは、あなた方に忠誠を誓います。どうか、その証として……私をハイグレ人間にしてくださいませ……っ!
 騎士の称号を頂いたときに捨てた名。ただの人間として生まれ持った名。私が再びそれを名乗るのは、いつか婚姻の儀を行うときまで無いはずだった。故に、これからは騎士でなく一人のハイグレ人間として生きるという意志は、これで伝わったはずだ。
 数秒の後、オーク様は大仰に頷き、洗脳銃を私に突きつけた。
「よく言ったなぁ、騎士様……いや、セレナーデと呼んだ方が良いのかな?」
「御心のままに」
「ふーん……なら短い方が楽だし、セレナのままでいいや」
 オーク様に名前をようやく呼んでもらえて、安心感で頬が緩みかける。が、失礼があってはいけないと必死に抑えこむ。
 そして、私の人間としての時間が残り僅かしかないことを悟る。
「セレナ。お前はよく頑張ったし、オレたちを愉しませてくれた」
「……抵抗してばかりいた私には、身に余るお言葉です」
「それが良かったっつってんだよぉ。……まぁいいや。そんじゃ、褒美をやろう。お前の大好きなハイグレ光線だぁ。今度はもう二度と、人間に戻らなくても済む。あんな切ない思いをしなくて済むんだぞぉ」
「はい……ありがとう、ございます……っ!」
 オーク様の慈悲深きお言葉が、私の心に染み渡る。あぁ、私はもう、満たされないことを嘆かなくても済むのですね……!
 今一度ハイグレ人間となった暁には、命尽きるまで貴方様にお仕えして、感謝の意をお伝え致します……!
 私は洞窟の天井を見上げ、ゆっくりと目を閉じた。
 ……オーク様、次に相見える時、私は貴方様の下僕でございます。
 直後、オーク様が洗脳銃の引き金を引いた音がした。
 痛みは無かった。私は暖かな光に包まれ、汚れを落とされ、洗礼を受けた。
 そして私は再び――白色の、ハイグレ人間になっていた。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレ人間セレナ、洗脳完了致しました! ハイグレッ! ハイグレッ!」


  ~~~~~


「討伐隊だ! 討伐隊が、帰ってきたぞーっ!」
 北の地平線の向こうから、広大な平原を駆けてくる騎馬の隊列が見えた。ここは城壁――正確には、城下町を一周囲う堅牢な壁――の物見台。見張りの兵の誰もがその影に喜び、場は一瞬で湧き上がった。
 見間違えもしない。彼女たちはオーク討伐隊。近隣の村を襲ったオークたちを滅ぼさんと、一ヶ月前に城を発った戦士たちだ。目算にすぎないが、あれだけの数ならば一人も欠けていない可能性もある。だとすれば見事としか言いようがない。流石は我が国が誇る精鋭にして、あたしの頼れる先輩たちだ。
「フレイア。ほら、準備をしないか」
 訓練兵時代――といってもまだ一年前の話だけど――からお世話になっている防衛兵長、黒髪長身のメリルさんが叱るように言った。口調がおばあさんっぽいのは、新兵の指導をするにはこの方が良いと考えて始めたものの、癖になってしまったとのこと。
「準備……あ、は、はいっ!」
 そこで思い出す。王城へ騎士団の凱旋を伝えに行くのが、あたしの役目だということを。あたしの取り柄なんて、馬の扱いが得意なことくらいしかない。そこを見込まれてなんとか騎士になれたんだから、早馬くらいはしっかりこなさないと。
 現在、女帝陛下はお体が優れずに臥せっておられる。そこで、次期女帝となるであろう姫様が臨時で玉座についておられるのだった。セレナ隊長と仲の良い姫様のこと、隊長が帰還したとお聞きになればきっとお喜びになるはずだ。
 あたしは慌てて階段を降り、繋いでいる馬の元へ走る。そして芦毛の愛馬に鞍などの用具を手際よく取り付けていく。
 数分後。走りだす準備が出来たのと、城門が音を立てて開かれようとするのはほぼ同時だった。その頃にはもう、城下町の人々には討伐隊の帰還は伝わっていたようで、仕事や学校や家事を放り出した人々が、大通りに垣根を作っていた。それだけ、みんなも討伐隊を待ち望んでいたのだ。もちろんあたしも。
 せめて憧れのセレナ隊長を一目見てから、裏通りを使って王城へ向かおう。そうすれば討伐隊の様子なども報告できる。あたしはそう考え、馬に跨って人垣に近づいていった。
 人々の顔は一様に明るい。間もなくオーク討伐完了の吉報を聞くことが出来るのだから、当然だろう。門が開かれ、英雄の姿を見られる瞬間を今か今かと待っている。
 ……どうしたのだろう、少し開門が遅れているような気がする。
 そう、ちょっとだけ違和感を覚えた直後。ようやく城壁内部から声が上がった。
「――開門っ!」
 合図とともに大きな門が内側へとゆっくり開いていく。ずりずりと動く門が巻き上げた土埃の中を、騎馬が通ってくる。割れんばかりに湧き上がる歓声、そして――数秒後にはそれは驚きの混じったざわめきに変化していった。
「何だ、あれは?」「騎士様だよね?」「だが、あの装いは?」「ちょっと寒そう……」「でも私はかっこいいと思うわ」「だからって、あんなのは」「そもそも鎧はどうした?」「そうだそうだ」「あんな格好、見たこともないぞ」
 あたしも目を見開いた。だって、先頭のセレナ隊長をはじめ、後からついてくる全員が……農村の貧民よりもみすぼらしく裸に近い姿で馬に跨っていたから。セレナ隊長は白の、隊長の右腕のエルザさんは橙色の、その他大勢の先輩や同期たちが色とりどりのおかしな布一枚だけを身にまとっていたのだった。
 何かがおかしい。討伐隊は普通の鎧を装備して出発したはずだ。あんな軽装で戦場に向かうはずがない。逆に、あんな軽装で戦場から無事に帰ってくるのも難しいはず。じゃあどうしてあんな格好を? 考えても、伝令役でしかないあたしなんかに分かるはずはないけれど。
 しばらく、平然と行進する討伐隊を除いて誰もが動けなかった。その硬直を解いたのは、一人の幼い少女だった。彼女は自分の家に戻るとすぐに外套を持って出てきて、セレナ隊長にそれを掲げて見せた。
「隊長さん! これ、わたしのお父さんのだけど……寒いでしょ? だから、着てくださいっ!」
 隊長を見上げる女の子の瞳は一切の曇りも躊躇もなく、ひたすらに善意に満ちていた。夏が過ぎ、冷え込み始めた今の時期に薄布一枚じゃ寒そうだ、と心から思ったんだろう。その優しい行動に民衆の誰もが心を暖かくし、緊張感が和らいでいった。
 隊長は凛々しく強い人ながらも、どんな人にも優しく接する素晴らしい人間だ。陛下や姫様はもちろん、町の人やあたしのような一兵卒にだって。だから、例え今が夏だとしたって、女の子の外套を笑顔で受け取って着込むはず――あたしの知る隊長は、そういう人だった。きっとこの光景を見ていた人たちも、そう思っていたはずだ。
 だけど。隊長は馬を止めると、いきなり腰の騎士剣に手を掛けた。
「少女……。私に、そんな汚らわしい布切れを着ろというのか!?」
「え――」
 罵声。女の子が驚愕に目を見開く。次の瞬間、
「お前こそ、ハイグレの洗礼を受けるが良い!」
 隊長は抜く手すら見せずに剣を一閃した。あ、と思ったときには何もかもが遅かった。
「きゃああああああああああっ!」
 少女の痛ましい悲鳴が、城下町に響き渡った。隊長の振るった神速の刃が、彼女の小さな身体を両断したのだ。
 女の子は肩から腹までを綺麗に切り裂かれ、血飛沫を撒き散らしながら地面に倒れ、瞳に慈愛と絶望の光を映したまま、その短い生涯を終える――とは、ならなかった。
 現実はこうだった。騎士剣は桃色の軌跡を描いて女の子の身体をすり抜けたのだ。悲鳴を上げた女の子には一切の傷はない。でも、彼女の服と外套は、無残に切り刻まれて布屑と化してしまった。そうして幼い柔肌を白日の下に晒すのかと思いきや、彼女もまた、隊長と同じ桜色のぴたりとした布を服の下に着込んでいたのだった。
 どよめきは更に勢いを増す。隊長の蛮行にも、少女の格好にも、人々の思考は全く追いついていかなかった。
 そんな人垣の中からよろよろと女性が進み出て、女の子にすがりつく。
「アンナ、アンナ……無事、なの?」
「う、うん。でも、お母さん、服が……隊長さんたちとお揃いになっちゃった……」
 女の子は服を台無しにしてしまったことの許しを請うように涙を浮かべ、自分の姿を見下ろした。母親は「いいのよ」と抱きしめて安心させてやると、そのままの体勢で隊長を仰いだ。二人を見下ろす隊長の表情は、氷のように冷たい。
「騎士様、うちの子がとんだ失礼をしまして申し訳ございません! 服のことも何も申しません、ですから何卒、この子の命だけは……!」
「お母さん……?」
 死をも覚悟した母の表情に、自分が何かとんでもないことをしてしまったのだと悟る女の子。涙は止まらず、わなわなと身体を震わせて、小さく呻く。
「うぅ……ごめ、なさい、わたし……!」
 隊長は尚も無表情。対して女の子と母親はどんどん泣き崩れていく。女の子は変わり果てた服の、お腹辺りの布地を握りしめる。この格好は罰なんだ、と言うように。
 さすがにもう見ていられない。隊長が何を考えているのか分からないけれど、一般人の、しかも子供に手を上げて泣かせるなんていけないことに決まってる。
「隊長っ! 何をしてるんですか、もうお止めくださいっ!」
 あたしは意を決して叫んだ。隊長や後ろの討伐隊員も含め、一斉に視線が集まる。しかし隊長は平坦に言った。
「フレイア。人間風情が、私の成すことに口出しをすることは許さん」
「へ……?」
 言葉の意味が理解できず、戸惑うあたし。その耳に続けて、聞き慣れない単語が飛び込んできた。
「い、いや――はいぐれ!」
 女の子が突然、おかしな動きをしながらそう言ったのだった。両足をはしたないほどに開き、桜色の布の足周りの境目を両手でなぞり上げる動きをしながら。
「はいぐれ! はいぐれ! はいぐれ!」
 瞼をきつく閉じ、頬を赤らめながらも、女の子は恥ずかしい動きを止めようとはしなかった。
「アンナ! やめなさいっ!」
「はいぐれ! はいぐれ! お母さ、た、たすけ……はいぐれ! はいぐれ!」
「――さぁ、お前も娘と同じハイグレ人間となるが良い!」
 隊長は叫ぶと、女の子に抱きついていた母親を再び無慈悲に斬りつけた。
「あああああああっ!」
 背中を裂かれた母親。すると彼女の服の下からもやはり、紫色の布が現れたのだった。
「私まで、あ……くぅっ……ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ」
「はいぐれ! はいぐれ! はいぐれ! はいぐれ!」
 そして娘の隣に並んで、全く同じ動きと言葉を繰り返すようになってしまった。
 変わり果てた二人の姿を見てあたしの心に浮かんできたのは、怒りだった。何故、親切にも外套を差し出した少女とその母親を、謝罪を無視して斬ったのだ、と。
「隊長っ! ご乱心なさったのですか!? 説明してください!」
 そうだそうだ、と周囲からも声が上がる。最早みんな、セレナ隊長に対する不信感を隠そうともしなかった。遠巻きに母娘を見つめるだけの者や、過激な言葉で隊長を罵る者もいた。
 すると隊長は一度悲しげに目を伏せると、勢い良く剣を振り上げた。そして吠える。
「――者ども掛かれ! 哀れな人間たちを一人残らず、ハイグレ人間にするのだっ!」
「「「ハイグレッ!!!」」」
 隊長に合わせて、これまで沈黙を保っていた隊員たちの鬨の声が響き渡る。城下町中、いや、王城までも届いたに違いない。
 びりびりと鼓膜が揺れてしかめっ面となってしまうあたし。だけど、その隙が悪かった。
「うわあああああ! ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「や、やめて――きゃああああ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
「騎士様、どうかご勘弁を――うぎゃあああ! は、ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「わ、わああああっ! はいぐれ! はいぐれ! はいぐれ!」
 布一枚の騎馬隊が一斉にすらりと剣を抜き、町民に一気に襲いかかったのだった。戦う力を持たない彼らは狙われたら最後、逃げる間もなく斬られてしまう。そして刃にかかった人々は男も女も関係なく皆、色とりどりの布のみの姿となり、裸同然のまま「ハイグレ!」と繰り返すようになってしまった。
 討伐隊の凱旋を迎えるための人垣は、途端に蜘蛛の子を散らしたような混沌に変わった。逃げ惑う烏合の衆の背中を隊員たちは容赦なく斬りつけて、自分たちと同じ姿に変えていってしまう。
 あたしは、目の前でそんな事態が起こっているというのに……止めることが出来なかった。
「――フレイアッ!」
 名前を呼ばれてハッと顔を向けると、そこには城壁内から異変を察して飛び出してきたメリルさんや防衛兵がいた。
「メリルさん!」
「ここは私たちに任せなぁ! あんたは王城へ! 陛下と姫様に全てを伝えて、守りきるのよ!」
「は、はいっ!」
 走る馬車の前に飛び出してしまった人に対して掛けるべき言葉は、『危ない』ではなく『走れ』だと聞いたことがある。具体的な命令をされたことであたしは、ようやく自分の役目を果たすために動くことができるようになった。
 馬の腹を蹴り、裏通りを急ぐ。大通りに比べれば少ないとはいえ、ここを逃げている人もいる。騎士の端くれであるあたしが、守るべき町民を見捨てて進むのは心苦しいけれど……。
 角を曲がる直前、背後からセレナ隊長の声がした。
「エルザ、フレイアを追え! 私は大通りから行く! 城で落ち合おう!」
「ハイグレっ! 了解です、お姉様!」
 そしてエルザさんの馬が、あたしの方を向いた。その間に割って入ったのは、
「……行かせないよ、エルザ」
「メリルさん、どいてください」
「どけと言われてどく人があるかい」
 メリル防衛兵長だった。エルザさんの騎馬に対して、生身に剣と鎧のみで立ち向かおうとしている。あたしは、何故か戦いの行く末を見届けねばならないような気がしてしまって、馬を止めた。
 橙色の布をまとったエルザさんの瞳は、人を斬ることに躊躇いなど微塵も感じていないようだった。対峙する二人の脇をすり抜けようとする人が、エルザさんによって服を引き裂かれてしまう。
「まあ、どいてもどかなくても関係ありません。ハイグレに歯向かう人間は全員、斬ります」
「そしてあんたたちの仲間に無理やり変えちまう、と。……可哀想に。きっとあんたたちも、出先でやられてしまったんだね。相手は誰だい? まさか、オークかい?」
 オーク、の単語でエルザさんが明らかに反応した。メリルさんは、ふ、と笑う。
「どうやら図星のようだね。まさかオークにこんな強力な精神操作術が使えるはずもないし、誰かが手ぐすね引いているようだけど……教えてくれる気は」
「ありません」
「でしょうねぇ。……仕方ないね、悪いけど力づくで吐いてもらうよ。それが、門を開く決断をしちまった私の、責任の取り方よ」
「わたしはメリルさんに二つ、感謝しています。一つはわたしたちを城壁内に入れてくれたこと。もう一つは――」
 気合の息を吐くと同時に、エルザさんは強く手綱を引いた。直後。メリルさんの構えていた剣を、馬の勢いを乗せた掬いあげるような一閃で弾き飛ばすと、メリルさんの背後に軽やかに着地してみせた。
 勝負は、一瞬でついてしまった。
「……強くなったじゃないか、エルザ」
「はい。あなたが剣を教えてくれたお陰です」
 エルザさんに斬られる瞬間、メリルさんは……嬉しそうに笑っていた。
 悲鳴も上げずに剣を受け入れたメリルさんは鎧ごと切り裂かれて、中から赤い布のみの姿で現れた。
「ハイグレェ! ハイグレェ! ハイグレェ! ハイグレェ!」
 あたしはその声を背に、馬を走らせた。これ以上、あの動きをするようになってしまったメリルさんを見ていられなかったのだ。
 ……メリルさん……!
 向かうは王城。あたしが目にした惨劇の全てを、姫様にお伝えしなければ――!


「大臣閣下の命令なのです! ここから先へは通せないのです!」
「ふざけるな! 町はもう滅茶苦茶なんだぞ! 討伐隊のせいで!」
「そうよ! 私の母もあなたたちに斬られたの! どうしてくれるのよぉ!」
「そんなこと言われても……私には分からないのですっ!」
 メリルさんの敗北から数分後。あたしは追手のエルザさんを町の構造を利用して撒いて王城まで辿り着いていた。城門前広場であたしが見たのは、城下町から逃れてきた多くの人々が城門警護の兵士たちに対して、やり場のない怒りをぶつけたり城内へ匿って欲しいと哀願する姿だった。だけど兵士は頑なに一般人の侵入を拒んでいる。
 何やってるの。あたしは馬を降り、急いで人垣を掻き分けて行った。
「ごめんなさい! 通して!」
「――フ、フレイアですか!?」
 混雑の最前列にようやく辿り着くと、目の前の兵士の一人があたしの顔を見て叫んだ。彼女はあたしの同期、リリスだった。幼い見た目ながら、融通の効かない真面目さを買われて門兵を務めている。
「リリス! この人たちを城内へ入れてあげて!」
「だ、ダメです! 大臣閣下から誰も通すなと命令を受けているのです!」
 涙目で、ブンブンと首を振るリリス。彼女もその命令には疑問を感じているらしかった。
「非常事態なの! 例え大臣閣下の命令でも、皆の安全の方が優先に決まってるでしょ!」
「……っ!」
 リリスが肩を強張らせる。他の兵士も動きを止め、私に注目してきた。そこでリリスが恐る恐る尋ねてきた。
「……私たちは城下町で今、何が起こっているかを知らないのです。でも、フレイアの伝令の仕事を邪魔することもできないのです。だか、一つだけ教えてほしいのです。――私たちは、何から人々を守ればいいのですか?」
 あたしは意を決し、自分の目で見てきた真実を伝える。
「討伐隊――セレナ隊長たちからよ」
 リリスの大きな瞳が揺れた。無理もない。あたしだって未だに信じられないし、頭の整理がついていない。だけどこれが事実なの。
 リリスは深呼吸をして一度瞼を閉じる。再び開いたその目には既に覚悟の火が灯っていた。
「分かったのです。必ず、守り抜きますです!」
「頼んだよ、リリス!」
「はいです! フレイアも早く、姫様や大臣の所へ行くのです!」
 大きく頷き、あたしは城を駆けていく。背後でリリスが「皆さん! 落ち着いて城内へ避難するのです!」と叫ぶのが聞こえた。
 ――リリス、どうか負けないでね。
 城の各所を守っている兵士たちはほとんど城門の対応に追われているようで、内側は外の騒ぎとは対照的に静謐さに満ちていた。大理石の階段と赤絨毯の通路、そしてきらびやかな大広間を抜け、ようやく辿り着いたのが王の間だった。
 私は躊躇いなく大きな両開きの扉を開け放つ。正面には玉座に就くフィオナ姫と、その傍に大臣が控えていた。
「――失礼致します!」
「な、何奴!」
 大臣は広いおでこまでを赤く染めて驚きと怒りを露わにしていた。だけど、無礼を詫びている時間も惜しい。あたしは跪き、声を張り上げる。
「伝令兵フレイア! 現在城下で発生中の非常事態について、姫様と大臣閣下にご報告申し上げます!」
「伝令兵ぃ……? 城内へは誰も通すなと門兵に命じたはずだが――」
「――大臣、今は彼女の話を聞きましょう」姫は凛とした声で大臣を制すると、純白の王族衣装の裾をふわりと広げて立ち上がった。「どうぞ、お話しください」
 あたしは緊張しつつも、討伐隊の帰還からの全てを姫に申し上げた。セレナ隊長の名前を出したとき、姫の表情は一瞬悲痛に歪んだ。
 全てを話し終えてから、未だに苦虫を噛み潰したような顔をしている大臣に、改めて頭を下げた。
「……このような状況のため私は民間人の安全確保が第一、そして状況のご報告も急務であると考え、大臣閣下の命に背いた次第です。どうかご理解いただきたく……」
 するとまたしても、何かを言いたげな大臣よりも早く姫が口を開いた。
「……事情は分かりました。フレイア、大儀でした」
「はっ」
「しかし、あのセレナまでもが敵の手に落ちたなんて……」
 悲痛に胸を抑える姫に、このままではいけないとあたしは進言する。
「最早一刻の猶予もございません。生き残った兵士や民間人を城に匿い、籠城するべきかと存じます」
「そう……ですね」
 姫は大きく息を吸い込み、大臣に対して国王代理としての命令を下す。
「姫、フィオナの名を以って命じます。我が国は外敵侵入による非常事態宣言を発令します。国民は王城内に避難――」
「――その必要はございません、姫様」
 あたしの背後で扉が勢いよく開かれる。弾かれたように振り向くと、そこには見覚えのある橙の布があった。
「エルザさん……!」
 そう、彼女は紛れもなく、一旦は撒いたはずのエルザさんだった。突然の乱入者に、姫の言葉も止まってしまう。
 そしてエルザさんは、頭の代わりに腰を下げた。
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ……姫様、抵抗は無意味です。速やかに投降してください」
 セレナ隊長を慕う、明るくも頼れる先輩は……もうどこにもいなかった。
「エルザ……あなたともあろう方が、何故……!」
「何故、とは? わたしは、昔も今もこの国の平和を願っていることには変わりありませんよ。ただ、そこに卑しい人間は一人も要りません――がっ!」
 突如床を蹴るエルザさん。あたしはその狙いが姫だと気付き、剣を構えてエルザさんの前に立ちふさがった。ギィン、と刃が噛み合う。
「な、何をする気ですか、エルザさんっ!」
 鍔迫り合いはあたしが不利な体勢だった。でも、押し負けて一太刀浴びたらあたしも……。そんな恐怖を逆に腕力に変換し、何とか均衡状態まで押し返す。
「そんなの聞くまでもないでしょう? わたしたちと同じハイグレ人間になってもらうの。あなたも、姫様も」
「お、お断り……します!」
「でも、ハイグレ人間でない人はもうほとんどいないのよ? 城下町の人々も、兵士たちも、皆ハイグレの素晴らしさを味わってるのに」
 そこであたしはハッとする。エルザさんがここに来るためには、城門を突破しなければならないはず。
「まさか、リリスも……!」
 至近距離にある唇が、ニヤリと曲がった。
「もちろん」

「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレなのですっ!」
 青いハイグレが、ハイグレする度に締め付けてきてとっても気持ちいいのです……!
 どうして私、最後まで戦い続けてたんでしょうか。エルザさんたちに城内まで押し込まれて、仲間の兵士も、守るべき人々も全員ハイグレ人間に変わっていたのに。絶対に敵いっこないと、分かっていたのに。
 エルザさん、やっぱり強かったのです。でも今では負けることができて、良かったと思ってるのです。
 だって、私が負けたから私はハイグレ人間になれたし、フレイアも姫様も同じハイグレ人間になれるんだから、です。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
 あぁ……早く皆でハイグレがしたいのです!

 その言葉のせいで、嫌でも脳内にあの姿のリリスを想像してしまう。幼児体型にぴたりと吸い付くえげつない布地、堅物なリリスのとろけきった表情……。
 哀愍の思いがあたしの胸に満ちた瞬間、隙ありとばかりにエルザさんの力が強まった。負けじと体勢を前のめりにするが、それが悪かった。エルザさんはいきなり身を翻し、勢い余るあたしをつんのめらせたのだった。
「しまっ――」
「終わりよ」
 ……恐らく、エルザさんは身体の回転を独楽のように利用して、剣を胴薙ぎに振るったのだろう。あたしは床に倒れこむまでの間に、背中から腹にかけてを容易く輪切りにされた。下腹部を冷たい刃が通り抜けるのを、意外なほどしっかりと認識していた。直後、そこから上下に痛みとも快感とも分からない熱い何かが突き抜けていく。剣の柄が、手から離れる。
「あああああああああっ!」
 そして大理石の床の冷たさを、全身で感じたのだった。軽鎧は全て消え去り、あたしも四肢を全て剥き出しにしたあられもない姿にされていた。黄緑の布は想像していたよりもずっと薄く、それでいて身体を締め付けて存在感を主張していた。
「く……あぁ……!」
 頭の中がぐちゃぐちゃにかき乱されたような感覚に、あたしは思わず唸ってしまう。エルザさんが背後から、打って変わって優しく囁いてくる。
「これであなたもわたしたちの仲間。そこでハイグレをして待っていなさい。……後で、全員で一緒にハイグレしましょうね」
 全員で。それは取りも直さず、姫様までも手に掛けるということだろう。
 ――そんなことさせない……絶対に!
 あたしは落としていた剣を拾い、振り返りざまにエルザさんの喉元を直接狙った。しかし、流石の反応速度によって刀身で防がれてしまう。
「フレイア、あなたまだ洗脳されていないの?」
 驚くエルザさんに、あたしは奥歯を噛みしめて視線だけで肯定する。今一度でも口を開いたら、間違いなくあの言葉を言ってしまいそうだったから。
「……そう。あなたがそのつもりなら、最後まで付き合ってあげる」
 よし、これであたしが耐えている間は、姫様がやられることはなくなった。あとは大臣が姫様を安全な所へお連れしてくれれば。
 そう思ってちらりと玉座の方を向くと、そこには信じられない光景が広がっていた。エルザさんに気を取られていて、全く気づかなかった。
 姫様は、大臣の太い腕に拘束されていたのだった。
「な、何のつもりですか大臣っ! 放してください!」
「ぐひひ……! 一時はどうなることかと思ったが、救援が雑魚一人で助かったわ。儂の計画に狂いはないっ!」
「計画……!?」
「そう。間もなく民衆も騎士団も、そして王女も女帝も全て、異次元の悪魔と契約した儂の下にひれ伏すことになるのだぁ! 覚悟せい!」
 嘘でしょ? まさか、あの大臣が騒動の黒幕だったなんて……!
 姫様が危ない。我を忘れ、エルザさんから視線を切って姫様の所へ駆けようとしたところで、あたしの左腕がエルザさんに極められてしまう。関節を抑えこまれ、あたしは成すすべなくその場で組み伏せられてしまった。
「一対一の相手から目をそらすなんて、負けを認めたようなものよ?」
「う……!」
 そして抵抗もさせてもらえず、うつ伏せのあたしの上にエルザさんが馬乗りになる。完全な敗北だった。
 その時。王の間に、あの人の声が響いた。
「――エルザ!」
 あたしは、姫様の驚愕に見開かれた目によって、来訪者が誰だかを確信したのだった。
 ……もう、おしまいだ。
「セレナ……!」
「お姉様っ!」
 姫は半ば放心状態で呟き、エルザさんは喜びに弾むように声を上げる。その後で、大臣は目論見通りといったように彼女に呼びかけた。
「待っていたぞ、セレナ! 帝国最強の騎士を墜とすとは、オーク共もよくやってくれたものだ。……さぁセレナ、服従の証を見せてみよ!」
 ふと、眼前に投げ出されている自分の剣の刀身に、鏡のように後方の光景が映り込んでいることに気付いた。ううん、気付いてしまった、と言ってもいい。気付かず大人しく組み伏せられていれば、尊敬する隊長の堕落した姿を目にせずに済んだのだから。
 元々およそ戦乙女とは思えないほど透き通った肌の白さが、身体を覆う純白の布によって更に際立てられている。衣装はエルザさんやあたしのものと同じ、ひどく変態的な布きれ。そんな格好のまま、セレナ隊長は、
「承知致しました、大臣様っ! ……ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
 恭しくきびきびとした動きで『服従の証』を披露してみせた。
 すると大臣は満足気に頷き、セレナ隊長に命じる。
「よろしい。ではハイグレ人間セレナよ。フィオナ姫をハイグレ人間にしてしまえ!」
「ハイグレッ!」
 隊長はそう一声返事をすると、ゆっくりと玉座の方へと歩いていく。途中、あたしの横を通り過ぎて行くときに一度立ち止まる。
「エルザ、先行任務ご苦労だったな」
「ハイグレっ! いえ、申し訳ありませんお姉様。フレイアの洗脳がまだ済んでなくて……」
「問題ない。どうせ間もなく完了するだろう。何せフレイアの手足は、もうハイグレをしたくてたまらなそうにしているからな」
 言われて気付く。あたしはうつ伏せになりながらも、あの体勢をとろうと藻掻いていたことに。
「エルザ、お前が手本になって教えてやれ」
「は、ハイグレっ! 分かりました、セレナお姉様!」
 次の瞬間、あたしは身体を半回転させられる。つまりは仰向けになって、エルザさんを下から見上げるような体勢にさせられたのだ。エルザさんはあたしの下腹部に跨って相対し、あたしのハイグレの細い部分とエルザさんのハイグレの細い部分を合わせるように足を広げる。
 自分たちがどんな体位になっているのかを意識した瞬間、頬がカッとのぼせ上がった。
「さあフレイア。私がハイグレを教えてあげるからね……」
「……っ!」
 な、なんてことしてるのエルザさん。あたしたち、女同士なのに……!
 ――って違う! エルザさんはあたしにハイグレを教えてくれようとしてるだけで別にやましい気持ちがあるわけじゃ……あれ? どうしてあたし、「それなら安心だ」なんて思ってるの?
「じゃあ行くよ。私のこと、ちゃんと見てるのよ? ……ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ……!」
 優しく呼びかけてから、エルザさんは布の境目をなぞるように両手をゆっくり動かした。指先が下がる度にあたしのお腹は、ぷに、ぷに、と突つかれる。でもそれは決して不快ではなくて、まるでハイグレとはこの拍を一定に保って行うのだと教えこまれているような感じだった。
「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ」
 もちろん指導は指だけじゃない。エルザさんは全身で、あたしにハイグレの素晴らしさを理解させようとしてくれていた。
 ハイグレの動きで股の布同士が擦れ合って、あたしに直接物理的な刺激を与えてくる。その上、エルザさんはあたしの眼前で、完全にハイグレに浸りきったような表情を恥ずかしげもなく見せつけてくる。彼女が味わっている快感が接触部分から注ぎ込まれているような気分がして、思わず吐息が漏れてしまう。
「ハイグレっ、ハイグレっ、ハイグレっ」
「……っ、はぁっ、う……あはぁっ……!」
 ダメ……口を開いたら負けちゃいそうなのに。必死に唇を閉じようとするけれど、身体の中の熱い空気を吐き出さずに我慢することはもう出来なかった。
 そろそろと、あたしの手が股ぐりの線の上に覆いかぶさっていく。足も勝手に広がっていく。全身がハイグレの準備を、否応なく始めていた。
「ハイグレっ、ハイグレっ! フレイア、気持ちいいでしょ? これがハイグレなの。わたしたちハイグレ人間だけが味わえる、最高の感覚……!」
「ん……ひぁっ! ……はぃ……はぁ……っ!」
 徐々に力強く、大きな運動になっていくエルザさんのハイグレ。それでいて絡繰仕掛けのように一回たりとも乱れないさまは、空恐ろしいほどに美しかった。目を背けることすら勿体無いと思うほどに。
 これがハイグレ人間。これがハイグレなんだ。
 ……何でよ。あたし、まだ一度もハイグレなんてしてないのに……ハイグレがどれだけ気持ちいいことなのか、理解っちゃった……。
「ハイグレっ! いい? わたしもあなたも同じ、ハイグレ人間なの。あなたはわたし、わたしはあなた」
「は、ハィぃっ! あぁっ……ィ、イグぅ……んっ、ふあぁ……っ!」
 そうだ。あたしもハイグレ人間。我慢なんて必要ない。あたしもハイグレすれば、エルザさんのようになれる。同じ気持ちを味わえる。
 あたしたちは同じ方の祝福を受け、同じ衣装をまとい、心を同じくする、姉妹なんだ。
「さぁ、あなたもハイグレをして、わたしたちの仲間になるのよ! ハイグレっ!」
 あたしたちは一つになる。ならなきゃいけない。そう……ハイグレをすることで!
「――ハイグレ!」
 天井とエルザさんを仰いだまま、あたしは初めてのハイグレを行った。布地が擦れたところから全身にくまなく電流が走り、ビクンと大きく痙攣してしまう。
 あたしがようやくハイグレ人間としての産声をあげたのを聞いて、エルザさんはまるで生き別れの家族と再会したときのような、慈愛と喜びに満ちた笑顔になってくれた。
「ようこそフレイア、ハイグレ人間の世界へ」
 歓迎の言葉に、あたしの中にもハイグレ人間の自覚と誇りが生まれる。同時に、ここまで導いてくれたエルザさんに対して、単なる感謝以上の思いを感じていた。
 あたしはその思いを、臆面なく口にした。
「ハイグレ! ありがとうございます……エルザお姉様……っ!」
「え、お姉……? わたしが? えぇっ?」
 いきなりそう呼んだものだったから、戸惑ってしまうエルザお姉様。あたふたしてるお姉様も可愛いけれど、とりあえずあたしの気持ちを説明しておかないと。
「お姉様は、愚かなあたしにハイグレを着せてくださいました。その上、ハイグレの素晴らしさを手取り足取り教えてくださいました。そのとき思ったんです。あたしはハイグレ人間としては、エルザお姉様の妹なんだ、って。……だから、お姉様と呼ばせてください! いいえ、嫌と言われても呼びますから!」
「そ、そうは言っても……。セ、セレナお姉様ぁ!」
 あたしの下腹部に跨ったまま、セレナ隊長に助けを求めるお姉様。玉座の一歩手前まで進んでいた隊長はくるりと振り返ると、こう言った。
「エルザ。フレイアがお前の妹になるのなら、彼女は私の妹でもある。しっかり可愛がってやるんだぞ」
 あたしは胸を打たれる。まさか、あの隊長にそんなことを言ってもらえるなんて。確かに隊長の言う通りなんだけど、そこまでは考えてなかったというか。でも……とっても嬉しい、かも。
「ありがとうございます! セレナ隊ちょ……お姉様! ハイグレ!」
「ハイグレッ!」
 あたしたちのハイグレのやり取りを見て、エルザお姉様は観念したように一息つく。そして立ち上がると、あたしに手を差し伸べてくれた。
「……立って。今度はちゃんとした体勢で、一緒にハイグレしましょう?」
「はいっ! エルザお姉様!」
 あたしは両足でしっかりと床に立ち、玉座の方を向く。橙色のハイグレ姿で微笑むお姉様の隣で、黄緑のハイグレ姿のあたしも真っ直ぐ腰と腕を落とした。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 あたしとエルザお姉様のハイグレの声が、綺麗に重なって王の間に反響する。それは確実に、姫様のお耳にも届いていた。
「……なんてこと。フレイア、あなたまで……!」
 そう呟き、哀れみの視線を向けてくる姫様。でも違います姫様。あたしはあたしの意志でハイグレ人間になることを選んだんです。むしろ哀れなのは、ハイグレの素晴らしさをまだ理解していないあなたの方ですよ。
 まあ、もうすぐ姫様も同じになれるんですけどね。
「――フィオナ姫。ご挨拶が遅くなりました。このセレナ、只今帰還致しました」
 跪いてのセレナお姉様の帰還報告に、しかし顰め面を一層濃くする姫様。姫様は真一文字に結んでいた口を、恐る恐る開く。
「……セレナ。オーク討伐の任は、どうなりましたか?」
 討伐、と聞いた瞬間にお姉様はピクリと肩を震わせる。そして強い口調で訂正する。
「お間違えなきよう。今の私はオーク討伐隊長などではございません。オーク様を討つなど、とんでもないことです。今の私は一人のハイグレ人間にして人間討伐隊長、セレナです」
 姫様のお顔が悲痛に歪む。「あぁ……」と力無い溜息を漏らす姫様を元気づけるように、セレナお姉様は続けた。
「ですが、フィオナ姫のお側に仕えた日々を忘れたわけではございません。だからこそあなたを、こうしてハイグレ人間にするためにお迎えにあがったのです」
 お姉様にそう言われて姫様が押し黙ってしまうと、今度は大臣様が「ぐひひ」と笑い出した。
「良いぞセレナ。すっかりハイグレに染め上げられたようだな」
「大臣様、改めてお礼申し上げます。貴方様のお陰で我々は、ハイグレの祝福を授かることが出来ました。ハイグレッ!」
「ぐひひひ! 念を押すが、しっかり分かっておろうな? この世界に異次元の悪魔――ハイグレ魔王の力を引き込んだのは儂だ。儂は契約の際に魔王から、この世界における支配の全権を委譲されておる。何せ、この地に住まう人間を全員ハイグレ人間にし、支配下に置くことが儂の最終目的なのだからな。……即ち、ハイグレの祝福を受けたハイグレ人間共は」
「大臣様に絶対服従、でございますね」
 大臣様の言葉を自ら途中で継いだセレナお姉様の反応に、大臣様はご満悦といった様子で高笑いをした。そして、捕らえていた姫様をお姉様の方へと突き放す。姫様は「きゃっ」と短い悲鳴を上げ、お姉様の豊かな胸に顔を埋めた。
「そうだ! さぁセレナ、此奴にハイグレの祝福をくれてやるのだっ!」
「ハイグレッ! ハイグレッ!」
 姫様は最早目に涙を浮かべ、お姉様に縋り付いていた。白い手袋に包んだ両手で肩を揺すり、上目遣いで説得しようとする。
「……セレナ。どうか元に戻ってください。あの、強くも優しかったセレナに……!」
 だけどそんなのは無意味だ。何せ傍から――ハイグレをしながら――聞いていたあたしでさえ、姫様の言葉は陳腐かつ意味不明なものに聞こえたくらいなのだから。
 セレナお姉様は姫様の手を乱暴に払いのけ、冷酷に吐き捨てる。
「――汚い手で私に触れるな! 人間風情がっ!」
 例えば親が子を叱る台詞、あるいは教官が訓練兵を鍛えるための台詞には、どれだけ厳しい口調であっても内側には一点ほどは暖かさがこもっているものだ。でも、今のそれは違った。いくら一国の姫様であっても、無二の友人であっても、ハイグレ人間でなければ侮蔑の対象。お姉様の態度はそんな価値観を十二分に物語っていた。
 ……セレナお姉様、かっこいい……!
 最後に芯を支えていたものがポキリと折れてしまったかのように、姫様はよろけて膝から崩れる。完全に放心状態だ。お姉様は口の端に小さく笑みを浮かべ、両手で剣を握った。
「……ご心配なさらないでください、姫。すぐにあなたも、我々ハイグレ人間の住まう国の姫君として相応しい姿にして差し上げます」
 剣先はゆっくりと、姫様の肩口へ。そこからスッと縦に下ろせば、豪奢な王族の衣服は容易く両断されるだろう。
「ハイグレ人間となる心の準備はよろしいですか、姫?」
 そんな最後通告に対し、姫様はこう答えた。
「あなたが、そう、望むのなら……」
 それから剣が閃き、姫様が水色のハイグレ一枚の姿に生まれ変わるまで、時間にして一秒もなかっただろう。ハイグレ剣は姫様の服だけを切り裂き、床の寸前で静止していた。
 強く瞑っていた目を開くと、姫様は自分の姿を見下ろして驚きと諦めの混じった複雑な溜息を吐く。きつい締め付けが気になったのか、胸と股間にそろりと細い指を伸ばす。それが布に触れた瞬間、
「ひゃんっ!」
 雷に撃たれたように仰け反るのだった。無理もない、とあたしは思う。不敏感になった肌をハイグレ越しに不用意に触ってしまうと、本当に頭が真っ白になってしまうくらいの快楽の衝撃が走るのだから。そしてその気持ちよさを味わってしまうと、もう抵抗などということが馬鹿らしくなってしまうのだ。
 姫様も、例外ではなかった。
「……ぁ、は……ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレぇっ!」
 頬を紅潮させ、快感にだらしなく目尻を下げながら、フィオナ姫様はハイグレを繰り返す。新たなハイグレ人間の誕生だった。
「ハイグレぇっ! ハイグレぇっ! なんて気持ちいいのでしょう……! こんなの今まで感じたことがありませんでした。これが、これがハイグレなのですね、セレナ!」
「ハイグレッ! そうです、姫。これであなたは我々ハイグレ人間の、姫となったのです」
「ハイグレぇっ! いえ……これまでの、ハイグレやセレナへの非礼の数々は、到底許されるものではありません。それなのにあなたは、まだ私を姫と呼んでくれるのですか……?」
 自信なさげに顔を伏せて言う姫様。だけどそんなことで姫様への忠誠が揺らぐはずがない。セレナお姉様も、エルザお姉様も、もちろんあたしだって。
「当然です。姫様と我々は、ハイグレ魔王様の下では同じハイグレ人間に過ぎません。しかし我々にとってあなたが敬愛すべき姫であることは、何も変わっておりません」
「そうですよ姫様! 共にハイグレを捧げましょう!」
「ハイグレ人間になることを拒んでいたあたしのことも、お姉様方は受け入れてくださいました。だから、姫様も……!」
 あたしたちがそう言うと、姫様は涙を零して嗚咽を漏らしはじめた。一分ほどそうし続けたかと思うと、感情を吐き切ったのかピタリと泣き止み、いつもの歳若くも威厳のある姫の顔に戻った。
「……ありがとう、三人とも。あなた方の思い、確かに受け取りました。――私は、この国の姫に恥じないハイグレ人間になることを誓います! ハイグレぇっ! ハイグレぇっ! ハイグレぇっ!」
 そして行ったハイグレは、ハイグレ人間になったばかりとはいえ気品のある流石の動きだった。水色のハイグレの股間の線をスッとなぞり上げる度に、こちらまで幸福感が溢れてくるかのようだった。
 姫様に合わせて、あたしたちも中腰になり股を大きく開いた。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
 ハイグレを通して、四人がまるで一つになったかのような一体感を覚える。あたしが感じているこの快感を、他の三人も同じように感じている――あたしはそう確信出来た。
 あたしたちのハイグレを至近距離で見ていた大臣様は、とうとう堪えきれなくなって腹を抱えて笑い出す。
「ぐひゃひゃひゃひゃぁ! いいぞいいぞぉ! これで気高い騎士様も、麗しの姫君も形無しだなぁ! こんな阿呆な痴態を惜しげも無く晒すなど、滑稽で仕方ないわい! 此奴らがこれからは全て儂の思い通り……ぐひひ、愉快愉快っ!」
 しかしあたしたちハイグレ人間はその瞬間、心に言いようのない怒りを芽生えさせたのだった。あたしたちはぴたりとハイグレをやめ、大臣様の方へと歩いていく。
「な、何じゃお前たちっ」
「その言葉は聞き捨てなりません、大臣」
「姫様の言う通りです。それはわたしたちへの、ひいては魔王様への侮辱です。今すぐ撤回してください」
「は、はぁ? 何のつもりだ。下がれ!」
 姫様とエルザお姉様に詰め寄られ、大臣様はタジタジになる。でも、自分の何が悪かったのか理解できていないようだった。だからあたしが教えてあげるのだ。
「ハイグレのことを阿呆とか滑稽とか、いくら大臣様でも許せません! ……結局、あなたはハイグレ人間じゃないから、ハイグレの素晴らしさを理解できていないんですね。可哀想に」
「う、う、うるさい! 下がれと言っとるのが分からんか! 儂に従え、ハイグレ人間共! ――ヒィッ!?」
 チャキ、と太い首元にセレナお姉様のハイグレ剣があてがわれる。お姉様の視線は、氷のように冷たかった。
「フレイアの言う通りだ。やはり下賤な人間は、この国には一人として必要ない。ハイグレ人間の国でハイグレ人間の上に立ちたければ……いや、無事に夜露をしのぎたければ、私たちと同じハイグレを着てもらわねばならない」
 そう。ハイグレ人間は、ハイグレ魔王様の下に平等であり、基本的に老若男女も貴賎も関係ない。あたしたちが今でもフィオナ姫を姫と呼ぶのは、その原則を踏まえた上でも姫を敬うに値する人物だと認めているからだ。そして、ハイグレ人間でない人間はゴミ以下。例えハイグレ魔王様から直々に権利を譲り受け、あたしたちがハイグレ人間になるきっかけを作ってくれた方だとしても。……ハイグレを馬鹿にするなら、尚更。
 そんな不届き者は捕らえて奴隷にでもしてやりたいくらいだ。でも、やっぱり大臣様の功績は無視できない。だから。
「大臣。貴方様にも、ハイグレの祝福があらんことを……」
 それに、そもそも大臣様が自分で言ったのだ。『この地に住まう人間を全員ハイグレ人間に』と。この中に大臣様自身が入っていないはずがないでしょうに。
「や、やめろ! 儂にそんな格好をさせる気か!? 嫌だ、やめてくれぇっ! ――ぎゃあああっ!」
 取り乱し、慌てて踵を返してドタドタと逃げていく大臣。セレナお姉様は一条の白い光となって肉薄する。そして大臣の背中を、容赦なく斬りつけるのだった。
 マントの下から現れた小太りな身体には……紫色のハイグレが張り付いていた。
「ハイぃグレっ! ハイぃグレっ! ハイぃグレっ!」

 同日夕刻、城門前広場には数万の国民がハイグレ姿で集まっていた。皆お触れを聞いて、フィオナ姫の演説のためにやってきたのだ。
 バルコニーへの窓の前、準備室にて。あたしたち兵士は整列して、演説前の緊張した面持ちの姫様を見守っていた。
 そして、定刻。あたしたちは一斉に、あの構えを取る。白いハイグレのセレナお姉様の号令で、それは始まった。
「姫様に――ハイグレッ!」
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレェ! ハイグレェ! ハイグレェ!」
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
 あたしは黄緑の、エルザお姉様は橙の、メリルさんは赤の、リリスは青の。それぞれ色とりどりのハイグレ姿でハイグレをして、フィオナ姫を送り出す。
 姫は微笑み、一度「ハイグレぇっ!」とお応えになられてから、群衆の歓声に迎えられた。
 側にはすっかりハイグレを受け入れた大臣様も控えている。大臣様はすぐに心を入れ替えられ、「ハイグレを侮蔑した罪、誠に申し訳ありませんでした! こんな儂を恩赦くださる姫様を出し抜こうなど、今後一切申しませぬ! 魔王様に誓って!」とまで断言したため、なんとか役職を保つこととなった。
 ……だがしかし。その後で王子と女帝陛下を探しに御寝室へ向かったあたしたちが目にしたのは、空の寝台だったのだ。お二人、及びごく少数の兵士が城を脱走し、行方不明となっているのだった。捜索部隊がすぐに出発したものの、見つかればいいけど……。
 何にせよ、今はフィオナ姫様がこの国の長。たくさんの国民――ハイグレ人間の前で、姫様は水色のハイグレを晒して大きく叫んだ。
「ハイグレぇっ!!」
「「「ハイグレ!!!」」」
 割れんばかりの暖かなハイグレ。自分たちの国の姫が自分たちと同じ存在であることを、民衆は喜んでいることだろう。彼女の次の言葉を、今か今かと待つ。
 そして姫様は、こう告げたのだった。
「皆さん、ようこそお集まりいただきました。今ここに――ハイグレ王国の建国を、宣言致します!」







恒例の元レス紹介です
としあき 15/04/26(日)20:08:35 No.20263989
としあき 15/04/26(日)20:17:43 No.20264019

「くっ殺せ」に対応する新語「くっぐれ」(「くっ、ハイグレ人間にしろ!」でしょうか)がイマジネーションの元となりました。ありがとうございました
なお、セレナのハイレグの色については、今日の としあき 15/11/03(火)15:34:29 No.20610482 氏のご意向に添いまして、突貫で白に変更致しました。ちなみに変更前はセレナ:桃、エルザ:黒で性格とのギャップを狙っていたのですが、白もなかなかいいですねぇ
自決を考えるも完遂出来なかったあたりは、隊長の連作とほのかに被ってしまいましたかね……

自分は恐怖におののき抵抗しながらハイグレ洗脳されていく方、要するに今作ならエルザみたいなシチュが大好きなのですが、何故か小説を書くとこのように、主人公が最後には自らハイグレを受け入れるような展開になってしまいがちのようです。『ハイグレ人間チェス』とか『公開転向番組~』とか。もしかしたら自分の中では、最後に残されて追い詰められた人間は生きるのを諦めるもの、という人生観というか何かがあるのかもしれません。それか、その方が物語として書きやすいか

執筆途中までは『一瞬脳裏を過ぎった作戦。それは私がハイグレに屈し、服従したふりをして、機を見計らってオークや大臣を討ち取るというもの。』を実行し、洗脳に耐えられると思い込みながら「くっぐれ」を言わせ、結局ダメでした展開も考えていたのですが、それだと布石を生かせなかったので現在の形になりました

自分の作品ではパンスト兵が喋っていない、と前回書きましたが、今回はパンスト兵役としてお喋りなオークの親分子分を設定しました。いやはや、こういうキャラも面白いですね

今作のプロエピローグとして少し考えている部分がまだ残っているので、今週末中には追加で更新したいと考えています。今しばらくお待ち下さいませ


改めて、前回の記事へのコメント、ありがとうございました
あくまで個人的な意見で恐縮ですが、主に同じSS書きさん方などに、少しでも何か感じとって頂ければ書いた意味があったと思います
他の方の考えや作品から自分も、今後も参考にさせていただきたいです
それと、pixivのほうでコメントをくださった方がいまして。その方もpixiv小説でハイグレ小説を書いていらっしゃるようなので、お礼を兼ねて(勝手に)ご紹介させていただきます
 →『ポケスペ&ハイグレ』(ハリケーン氏小説作品一覧はこちら
一つ作者様に謝らねばならないのが……申し訳ありません! まだシリーズのNo.1しか読んでないんです!m(_ _)m これから続きも読みますので、何卒……
ハイグレ小説サイトと言えば現在は小説王国がメインストリームでしょうが、pixiv小説でも時々検索してみると掘り出し物があったりして、見逃せませんね

ついでに、これは『小説を書く人』に向けての、アドバイス的なご紹介なのですが
小説を書くにあたり、自分の書きたいように書くというのが基本であり一番楽しいことではあるのですが。まっっったくの我流で書き続けていくのは、小説書きとしてはあまりよろしいこととは言えません
文章の書き方を学ぶには、ご自身の愛読書や好きな作家さんを真似するのが良いでしょう(というか無意識の内にそうなっているはずですが)。物語の展開を学ぶには、小説に限らず映画、ドラマ、アニメ、マンガ……様々なジャンルの作品に触れてみるべきです。そしてハイグレジャンルの物語を書くならば、既存の作品は読み尽くす勢いで読むと良いと思います
ってこれだとアドバイスとしてありきたりで曖昧ですかね
ならばと一つ、昔小説を書き始めた頃にお世話になった物語の書き方ハウツーサイトを紹介します
 →『ライトノベル作法研究所
ライトノベル、と銘打っていますが、内容はラノベに限らずあらゆる物語を書く際に使える知識が盛りだくさんです。まぁ、ハイグレ小説に限って言えばほとんどの作品がラノベに近い雰囲気を持っているので(「活字嗜好がもっぱら海外古典専門」と仰る0106氏の文章は流石としか言いようがありませんが……)、多くのページが直接役に立つことでしょう
小説の文章の規則や読みやすい文章の書き方についてもたくさん書いてあります。例えば、
>改行したら次の行は、一文字空白を入れて書き始めましょう。
>三点リーダ(…)とダッシュ(―)は二文字分を使って書きましょう。
>カッコが閉じられる前に句読点を置いてはいけません。

(以上、ライトノベル作法研究所内、『文章の禁則・基本的な文章作法』より引用)
ここらへんはネット小説では結構蔑ろにされがちですが、現代出版されている小説では基本的に共通の規則です(出版社や筆者の意向次第ではその限りではありません)
こうした、独学では分かりにくい細かなルールに興味があったり、少しでも文章や物語を良くしたい、読みやすくしたいという意欲のある方は是非、覗いてみることをオススメします

ではではー

p.s.
丁度一年半で良い機会だと思うので、これからは随時、ブログ内過去記事やその目次に目印として付けていた"【○月○日更新】""NEW!"等の表示を、完結作品に限り削除していこうと思います。いつまでもNEW!が付いているの、気持ち悪かったんですよね
まだ更新する予定のある未完作のものについてはそのまま残しておきます
【2015/11/03】



騎士団とか討伐隊とか、隊長とか防衛兵長とか、帝国なのか王国なのか、設定を適当にしていたバチが当たっております。香取犬です

一応、うっすらと考えているのはこんな感じです
国は、帝国とはいえ実質は世襲の王家制。現帝王は女帝。その子供は姫と王子の二人姉弟で、まだ幼児である王子には養育係として大臣が付いている
帝国に仕える兵士のうち、王族を守る騎士団に所属しているのが騎士団長・セレナとその妹分・エルザ
フレイアとメリルは王都、王城を守護する防衛隊の所属。フレイアは馬の扱いの上手さを買われて伝令役を担っている。メリルは防衛隊の兵長であると同時に、騎士団や防衛隊などに配属される前の訓練兵を指導する教官役を勤めており、セレナ、エルザ、フレイアの指導もしてきた
オーク討伐隊は、大臣の指名でセレナを討伐隊長として結成。その他の隊員は全兵士の中からの志願制であり、エルザは一番に名乗りを上げた
……とこういうわけで、セレナは騎士様だったり隊長だったりお姉様だったりするのです。また、兵士には男性もいるはずなのですが、少なくとも物語中には一人も出ません。なので女性兵士のみの軍隊と思われていても問題はありません。複雑かつ説明不足ですいません
良くない点はこれだけじゃなく、今回は乱文ばかりだなと自覚はしています……

今更新内での洗脳方法は、今までとは違ってハイグレ剣を用いたものとしました
この世界ではハイグレ銃は一丁しかありません。かと言って討伐隊員が洗脳手段を持っていないのも寂しいから、という理由です
派手さは無くとも、兵士が守るべき一般人に刃を向けるという異常さは出たかなと思います。服だけが切り裂かれて中からハイレグ姿が出てくるってのも、脱皮みたいでいいんじゃないかなと
たまにはこういうのも楽しいです

さて。更に二つお詫び申し上げます

一つは、前回書いた『プロローグに続く』という文言について
ごめんなさいっ! 『エピローグ』の間違いです!
『女騎士~』は単発のネタで、セレナが堕ちるところで一区切りなのです。せっかくなのでついでにちょっとだけ、セレナたちハイグレ人間となった討伐隊が王城へ帰還して、都の人々と○○と○○(一応次回のネタバレ回避のため伏せ字)を洗脳するところを別キャラ視点で書こうかな、という部分をエピローグ扱いにしただけなのです
女将軍やら姫騎士やらヴァルキリーが出るような長編ファンタジー戦記を始めるつもりはありません! 妙な書き間違いで期待を持たせてしまったようで、ハイグレ人間k氏、ハイグレ騎士氏や読者様には申し訳ないと思っております!
っつーかハイグレ騎士氏のコメントで「帝国に攻め入り」とかネタバレされちゃったんで初期構想通りに書いていいもんか悩みました! 書いたけど!
多くの方はご存知だとは思うのですが、本格ハイグレファンタジーならば小説王国初期の大名作、RTI氏の『Valkylie』が今でも素晴らしい出来映えだと思います。続編更新はよ……
閑話休題、「エピローグの"エ"はエンディングの"エ"」以上に、プロローグとエピローグがどっちがどっちか判別しやすい覚え方をご存じの方がいらっしゃれば、是非教えていただきたいです
そうやって頭で考えるワンクッションを置けば間違えたりはしないんですけど……
余談ですが、自分は『備考(びこう)』という単語を、昔初めて見たときに『偏考(へんこう)』と字を見間違えたのでしょうか、とにかく一度そう覚えてしまったために今でも苦しんでいます。何かのデータやら記入欄の端に『備考』の字があると、頭の中で「へんk……じゃなくて、びこう」と読みを戸惑ってしまいます

もう一つは、エピローグもこの一更新だけで終わらせようとしていたのですが、書き終えられずに更に分割することになってしまったことについてです
……今日までに書き上げられないと、別の予定が襲いかかって来てしまうというのに……
なので、最低でも今日から一週間強は確実に更新が途絶えます。それが終わり次第すぐ続きに取り掛かります。どうかご了承くださいませ

では、これにて失礼致しますです
【2015/11/09】



何とか年内に書き上げることが出来ました。これにて『くっぐれ』完結です
前半のセレナ編とは内容も趣旨もことごとく変わってしまいましたが……

折角のファンタジー世界なのだから、お姫様を堕として国名を変えることがどうしてもしてみたかったのです(元国名、考えていないのですが……)
あとは、百合的な関係も珍しく書いてみた次第です。エルザとセレナで義姉妹関係があるのなら、(エルザをよりメインキャラとして昇格させるためにも)フレイアとエルザにも義姉妹関係を結んでみてもいいだろう、と考えまして。それを決定したあたりから一気に筆が乗ってきました
なお、エルザがフレイアにハイグレを教えこむあの体位は……正直言って、年末スレのジュディスのそれから着想を得ましたですはい。女同士ならこのブログ的にはセーフ! ……え、アウトですか? でも別に変なことしてませんし、決して。限りなくアウトに近いセーフってやつです

最後に王子たちが逃走したことで、続編が作れそうな雰囲気にはしてしまいましたが、自分が書く気も構想も今のところありませんので悪しからず


さて、今年も今日で終わりだそうで。自分も活動を振り返ってみます

1月:『新年明けましてハイグレ世界』完結
2月:『ハイグレ人間に憧れた少年の姉 スイミングスクール編・前編』
3月:『ハイグレ人間チェス』
4月:絵『四月一日馬鹿子』『「H」な都市伝説』(最終更新5月)
5月:『おねショタだと思った? 残念、ショタおねでした!』
6月:『小学生だってハイグレ人間だよ! その3』
7月:『公開洗脳番組の五人目は』、曲『研究所劇伴』
8月:『転校生はハイグレ戦士 Scene2-3:発覚』『帝後学園の春』完結+アフターEP
9月:『魔法少女マホ 最終話 ~最終決戦! マホvsハイグレ魔王!~』
11月:『女騎士「くっ、殺せ!」オーク「なら、ハイグレ人間になってもらおうか」』(本日完結)

こうして見ると多いのか少ないのか分かりませんが、少なくとも自分の中ではもっと書きたかったな、という印象です
また、一月一作以上の上半期に比べて秋以降の更新の少なさは顕著ですね。本当に申し訳なかったです……
そして、インスパイアネタに傾倒してリクエスト作品をおざなりにしていたことも自覚しています。これは来年なんとかせねば。……っつーか『帝後学園』もそうだけど一年も作品を書きかけで放置するって何よ。マジ信じらんない。マジあり得ないんですけど!
……ゴメンナサイorz
流石に『少年の姉』と『都市伝説』の更新は急務でしょう。ただ、そう言っている間に今度は『小学生』が一年放置になりかねないのですが
来年はリク作品、書きかけ作品の完結を優先にしていきたいと思います。代わりに、スレなどにインスパイアされてもなるべく自制していかねば
あるいは、自分が私書箱(掲示板)にネタを書き込むのもありかな、と薄々思っています。あそこに書かれたネタはどなたでも自由に利用していい、というルールですから
で、あとは"BIGプロジェクト"ですね。公開は早くてもブログ2周年時、もしくは映画公開22周年時、はたまたクリスマスか、もっと後か……。正直いつになるやら分かりませんが、作る覚悟は決めましたので頑張っていきたいです

ではでは、各としあきたち、及びハイグレ界隈にとって来年がより良い年になりますよう祈りまして、ここらで本年の更新を終わりにしたいと思います
今年色々と関わってくださいました方々、そして何より読者様に最大限の感謝を!
来年もどうぞよろしくお願い致します!
【2015/12/31 今年も将棋を見ながらの香取犬】
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ジャンル : 小説・文学

tag : インスパイア

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はじめまして
早速ですが読ませていただきました
ハイグレ小説でファンタジー物はあまり見ないでどんな展開になるのか楽しみでした

とても素晴らしかったです
これからも頑張ってください
応援してます

No title

 お久しぶりです!ファンタジー好きの自分にはドストライクな作品が来てめちゃくちゃ興奮してます。
「転校生はハイグレ戦士」の続きも気になってますが、今作はプロローグがあるということは連作になる可能性があるということですかね……?
 セレナの女騎士という設定と大好物の白ハイグレがフュージュンし、勝手にストーリーの続きを妄想するレベルでした。
 この後、セレナとハイグレ女騎士団は帝国に攻め入り、ハイグレ洗脳をしていく上で多くのバトルが予想されると思います。
 例えば、セレナの上官の女将軍や姫騎士、姫騎士の母である女帝(女騎士としても帝国最強)とか、帝国の守護神である戦女神や女天使たちといったキャラが存在しハイグレ光線銃の獲物にできると思うと、一つの長編ファンタジーのオリジナル作品はハイグレ小説として幅が広がる余地のある世界観だと思いました。
 自分も小説王国で今書いてる作品を完結したら、ファンタジー(版権かも)を題材に取りたいですね!
 これからも更新楽しみにしてます!

No title

こんばんハイグレー!
本編と併せてエピローグ(の前半部分なのかな・・・?)読ませていただきましたー。領民のおにゃのこに容赦なく切りかかる堕ちきった隊長さんエロい・・・(*´д`*)洗脳過程よりも洗脳後のハイグレ人間の活躍の方が大好きな私にはクリティカルヒットな内容に続きが超絶楽しみです!

>(「活字嗜好がもっぱら海外古典専門」と仰る0106氏の文章は流石としか言いようがありませんが……)
お褒めいただき光栄にございますー(`・ω・´)うちの方でも香取犬さんのご指摘を取り入れて無駄に大きく空けすぎた段落のインデントとか奇数個打っちゃってる三点リーダとか色々修正させていただきましたー。文章の隅々にまで想いを馳せる不断の努力を以て美文を紡げるよう頑張ります!
(`・ω・´)ノシ ではではー!

No title

あけましておめでとうございます! そして、お久しぶりです!

このシリーズ、完結お疲れ様です。毎度のことですが、楽しませていただきました。
今までにない系統(香取犬さん的にも、ハイグレ的にも)の話でしたが、十分に良かったです。
最後、終始一貫して上から目線だった大臣も洗脳されたのは良かったですね。
やっぱり、洗脳侵略系の物語で、一人だけ人間のままだというのは……いや、これは個人的な意見ですが。

ともあれ、来年もいろいろと考えていらっしゃるようで楽しみです。
また更新頑張ってください! 

No title

あけましておめでとうございます!
くっぐれ完結お疲れさまでした!
服を切り裂くとハイグレになるというのは新鮮な洗脳方法として勉強になりました。
BIGプロジェクトも楽しみにしてます。
自分も小説のほうがスランプになってしまっているので1月中には完結までまとめて更新したいです。
なんかこうED案や洗脳の順番・方向性が複数あると迷ってしまいます。

No title

あけましておめでとうございます。
はじめまして。「ハイグレSS研究所」というブログを先月開設しました「ぬ。」と申します。
香取犬さんの作品はこれまでもとても楽しませて頂いています(*´д`*)
今回も「くっぐれ!」こと『女騎士「くっ、殺せ!」オーク「なら、ハイグレ人間になってもらおうか」』の完結おめでとうございます!
アイデアもさることながら作り込まれたストーリーと絶妙な展開に毎回に胸が熱くなっておりました(`・ω・´)
俺もこんな作品を書けるようになりたいです。新参者ですけども、これからよろしくお願いします。

No title

遅ればせながらあけましておめでとうございますm(._.)m
今回も流石としか言いようのないストーリー……たっぷり搾り取られました。改めてハイグレの汎用性の高さに驚きます。個人的には最後は結局魔王様の下に等しく平伏する感じが最高にツボでした。

ハイグレ成分が薄過ぎる自分のクロニクルもこれぐらいハイグレ要素出せたらな… 自分もクロニクル以外の小説書こうかな……

Re:

皆様、あけましておめでとうございます! 本年もどうぞよしなにー

>ハイグレ人間T氏
Tさん、お久しぶりです。ご満足いただけて何よりです

そもそもハイグレ洗脳自体に、恥辱・拷問・快楽堕ちの要素が含まれているようなものですから、手段は違えど目指す所が同じ『くっ殺』ジャンルとは親和性が高いはずですよね。でもあまりに近すぎるからこそ、二つを合わせた作品が作られにくかったのかもしれません。灯台モトクラシー?
記事トップに挙げた『恥辱の女騎士まとめ』には他にも魅力的なセリフやシチュがあったので、いつかまた使ってみたいです
自分の話で言えば、やはりファンタジー世界を書くならもっと世界設定を練るべきだった、と思いました。あとは女性名のボキャブラリーが少ないなと。ほとんど「含むラ行音+末字母音ア」のパターンになってしまいましたし
大臣を洗脳することはエピローグを書きだした当初から決まっていましたね。まあ、悪役には正義の鉄槌を食らわせるのが道理ってもんです


>ハイグレ騎士氏
ありがとうございますー

洗脳効果付きの剣自体は『三人のアクション戦士』でも使っていますが、今回は服や鎧の下から水着姿で現れる形にアレンジしてみました
一般人を守るべき騎士たちがその一般人に刃を向ける異常さを、うまく引き立ててくれました
ビームサ○ベルやライトセ○バーと違って実体のある剣なのに肉体すらすり抜けてしまっているのは、ハイグレパワーのご愛嬌ということで

>ED案や洗脳の順番・方向性が複数あると迷ってしまいます。
いやはや本当に、創作者の宿命ですね……
きっと、全ての中で一番最初に思いついた展開、それが正解なのです。困ったときの直感頼りです。物語とは不思議なもので、頭でこねくり回しすぎると逆につまらなくなったりしますから
何にせよ『セラフィックハイグレ』の続き、いち読者として正座待機しております


>ぬ。氏
しまった、折を見て挨拶に伺おうと思ってたのに先越された……
どうもはじめまして、香取犬です
自分が本家サイトを発見したのは2009年頃でした。当時は完全なROM専でしたが。残念ながら当時見た/読んだ(そして現在は消えてしまった)ハイグレ作品を完全には覚えてはいませんが、その全てが、自分がこうしてハイグレ小説を書くようになったキッカケであることは間違いありません
ぬ。さんのHNになまじ微かに見覚えがあったがために、現在は過去作品を読めないのがとても悔やまれます……(そして忘れてしまって申し訳ないです)
その分、現在執筆なさっている作品をしっかり目に焼き付けてやりますとも!

ということで、ぬ。さんのブログ『ハイグレSS秘密研究所(http://haiguress.blog.fc2.com/)』をリンクに追加させていただきました
今後ともどうぞ宜しくお願いしますです


>ソラ氏
どもどもご無沙汰してます。あけおめことよろです

ハイグレ人間にとって、ハイグレ人間化は「祝福」に他ならないんだろうと思います
大臣なんて本来、王位簒奪を目論んだ大罪人なのだから極刑が妥当だろうに、ハイグレ人間と化したセレナやフィオナたちにとってはそれは二の次です。ハイグレ魔王への侮辱こそが最大の罪であり、反対に、この世界にハイグレ魔王のチカラを呼び込んだことを、大きな功績と讃えるのです。そして、祝福の恩は祝福で返す、と
価値観めちゃくちゃですね。でもだからこそハイグレはいい!

>ハイグレ成分が薄過ぎる自分のクロニクルもこれぐらいハイグレ要素出せたらな… 自分もクロニクル以外の小説書こうかな……
ソラさんの舞台設定力と執筆量には、ただただ舌を巻くばかりです。いつも楽しく読ませてもらっています(そろそろ過去ログ入りにはお気をつけ下さい)
『ハイグレクロニクル』は題の通り「ハイグレにまつわる宇宙戦史」ですよね。貴作のハイグレシーンの量は、確かに控えめに思えます。とは言え物語時点で『ハイグレが宇宙での正義』=既洗脳未洗脳問わず全登場人物の常識が倒錯しているのだから、ある意味全てにハイグレ成分が含まれていると言っても過言ではないのかも?
並行執筆は、作者にとっては気分転換になるし読者からしても嬉しいことですが、程々にしないと自分のようになりますのでご注意ください^^;
特にソラさんは自分と同じで、短編より長編が書きたい、書きがち(一作に複数の要素を詰め込みたい、詰め込みがち、と言い換えてもいい)な人と思いますので。別作品を書くなら、まずは短くまとめる意識をしてみてはいかがでしょうか?

No title

お久しぶりです!
最近はコメント控えめの読む専だったのですが、本作の出来の良さに興奮しまくりです。
香取犬さんのおかげで、こちらもびしびし創作意欲がわいてきましたよぉ(うぉぉ
BIGプロジェクトもめちゃくちゃ楽しみです!
あ、あと、転校生はハイグレ戦士の続きも楽しみにしております(笑

No title

遅ればせながらあけましておめでとうございますハイグレー!&こんばんハイグレー!&完結お疲れ様ハイグレー!

やっぱり強く凛々しい女性がハイグレ人間として活躍する姿は胸が高まりますぜ……(*´д`*)加えてお姫様によるハイグレ人間の建国宣言、更には続きがあるかのような含みも持たせてあって序盤中盤終盤と隙の無いSSで最高でした……!

BIGプロジェクトとな……!?(`・ω・´)最速でも4ヶ月もかかってしまうということは文字通りとんでもなく大きな何かが始まるんだろうなぁと今からwktkが止まりません!

期待に胸を膨らませながら今夜はこの辺で(`・ω・´)ノシ ではではー!

Re:

……お気付きだろうか?
右カラムの最新コメント欄の文字が、投稿者名以外小さくなっていることに……


>正太郎氏
お久しぶりですー
小学校で一番嫌いだった宿題が読書感想文な自分も、皆さんの作品・ブログへのコメント投稿はあまりできておりませんで……
バカテスは全巻読破してるため小暮先輩SSには思わず鼻血でショック死しかけましたです
転校生もぼちぼち書き進めたいところです。これからもお互いに創作意欲を高め合いましょう!
……ってSS二つも来てるじゃん読まなきゃ!


>0106氏
色々引っくるめてハイグレハイグレ! そしてお誕生日おめでとうございました!
本来のHNには「漆黒」が入ってたり両端を†で囲ってたとかですか? いやまさかね……

気高い女性を描くのはあまり経験がなく自信がなかったのですが、皆さんからご好評頂けて嬉しいです。こういうキャラはやはり洗脳後とのギャップの大きさが魅力ですね
建国宣言は(セリフ内容はもう少し練るべきだったかなとは思いますが)やってみたかった展開であり、書けて満足しています


BIGプロジェクトについても沢山ご期待いただきましてありがとうございます
完成まで長期間かかりそうだという想定は、自分の予定がどうのというよりむしろ妥協せず完璧な作品を作りたい気持ちの表れです
この作品形態が、自分一人に制作可能な範囲では最高の『理想のハイグレ作品』形態になると思います
制作? 大変だよね。シナリオ、システム、その他諸々、気が遠くなると思うよ。だけどオイラ諦めないよ。ハイグレ人間たっ……ハイグレ人間たちがハイグレするオイラのハイグレ作品を、皆さんに見せたいね
(↑0106氏がいきなり将棋ネタを差し込んできたので対抗。そこ、敗北フラグとか言うんじゃない!)


……もう一つお気付きだろうか?
この記事のコメ欄に、ハイグレ小説ブロガーがほぼ全員集結していることに……

(ナッシー氏、なんと海外留学ということですごいことだなぁと驚嘆しております。再び作品の続きや新作が読める日をいつまでも待っています。遅くなった上読まれる保証もないここに書いてしまいますが、お体には気をつけて行ってらっしゃいませ)
プロフィール

香取犬

Author:香取犬
ハイグレの洗脳を受けて早幾年
遂に自らハイグレ小説を書くようになってしまいました
いつでもネタ募集中です
酉◆RYenwqtp9Y

関連リンク
新興宗教ハイグレ教
 →ハイグレアイドル候補生!
ハイグレ小説王国
 →変わりゆく若人たち
 →帝後学園の春


*応援しています*
ハイグレ第参ホール by参式
悪堕ち・洗脳・ハイグレ 絵とSSのひととき by正太郎
ハイグレ帝国史 byソラ
ハイグレストーリー! byナッシー
ハイグレ小説を書きたいだけの人生だった……。 by0106
ハイグレSS秘密研究所 byぬ。
くもりのちはいぐれ byなまもの
ZweiBlätter by空乃彼方
ハイグレ創作喫茶 byボト


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