【リク】小学生だってハイグレ人間だよ! その2

どうも、いつも通り筆不精な香取犬です。
今回は連続になりますが「小学生~」のその2をお届けします。

この手の話はあまりするべきではないのでしょうが、本編に数行分挿入しちゃったので、導入として手短に語らせてください。
宗教勧誘って、されたことありますか? ――自分はあります。数カ月前の話ですけど。
知り合いに外食に誘われた後、流れで家に連れ込まれ、そこで。まあ結論から言うと、その人が「香取犬が興味を持ってくれたらでいいんだけど」程度のスタンスでいてくれたことが幸いして、何とか何事も起こらず尾を引くこともなく、無事帰還することができましたが。
ちなみに大手の宗派ですがネットで有名な手のものではありませんでした(多分)。
とにかく印象に残っているのは、部屋の本棚に並んだ数多の宗教関連本と、自分への説得の際の真剣な口調と表情でした。その道を信じて疑わない意志が、双眸にありありと浮かんでいました。
で、いまさらになって思うのです。
「神様っていると思う?」という問いに対し、「ハイグレ魔王様ならいると信じています」と答えられたらどうなったんでしょうか。
「人が幸せになるためには教えを学ばなきゃいけないんだよ」と説かれて、「いいえ、人間はハイグレを着てハイグレポーズを捧げてこそ幸せになれるのです」と説き返したてたらもっと面白いネタになったでしょう。
残念ながらあの雰囲気の中で自分にそこまでの度胸はありませんでした。つーかいくらなんでもリアルバレは死ぬる。「そんな事言われてもウチ、ハイグレ教徒やし(´・ω・`)」なんて言えるはずありません。
ただ、心の中ではずっとハイグレを唱えて相手方に洗脳されないよう平静を保ってましたけどね。
――ハッ!? もしかしてそのお陰で生還できたのか!? こんな自分を守ってくれるなんてやはりハイグレ魔王様は偉大な方だったのですね! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!

はい、マジモンの体験談終了でございます。
ではでは本編をどうぞお楽しみください。他の方々には負けてらんないんだ!



小学生だってハイグレ人間だよ! Original by 犬太(>>15)
その2


目次
るる「うぅ、那穂ちゃんのいじわる……」
るる「や……私、そんなの着たく、な……っ」
那穂(あたしは嫌いだ。そういうあたしが誰よりも)
那穂「……るる、夕日……あたしの言うこと、分かって」

登場人物(前記事へ)
あとがき



   【東郷るる】

「ふぅ……もうゴミ、落ちてないよね?」
「落ちてるのはあたしたちの集中力の方だと思うよ」
 那穂ちゃんの口調は、ちょっと気だるげだった。
 私と那穂ちゃんは、広い体操場を何度も何度も見回ってた。ここの掃除は他に比べれば楽だけど、あんまり早く切り上げちゃうと皆にサボりって思われちゃうかもしれないから、隅々まで時間を掛けてゴミ探しをしてたの。
 それでも暇だから、アスファルトの隙間から生えてた雑草までキレイに抜いちゃったくらい。お陰で今は一面黒一色。こうなると結構達成感があるね。
「ほんと、よく草まで抜いたよね」
 那穂ちゃんがゴミ箱に草を放りながら言う。私はそこに近づいていく。
「ゴミ拾いしてたら何だか気になっちゃったの。でもほら、とってもスッキリして良い光景でしょ?」
「うん。前かがみになって草抜きしてたときのるるの胸なんか、特にね」
 ニヤリと笑う那穂ちゃんの視線は、私のお胸に注がれて――
「うぅ、那穂ちゃんのいじわる……」
 私はコンプレックスに思っているそこを両腕で隠した。そして、自分が前かがみになっているところを思い返してみて、無意識に変な格好をしてたことを恥ずかしく思った。
 元々遅生まれで背も高かった私は、当然のように女の子としてのセイチョウも他の子よりも早かった。そのことで誰かから酷いいじめを受けるようなことはなかったけれど、目立つのが苦手な私が余計に目立っちゃうってところでは、嫌だなって思うことも多かった。
「ゴメンゴメン。でも、あたしはいいなぁ、って思うけどな」
「え?」
「身体が大きいのって羨ましい。ほらあたし、こんなんですから」
 困ったように言って、片足を軸にくるりと回ってみせる。確かに那穂ちゃんは背も小さいし、他の子と比べても年下に見えちゃうかもしれない。
 だけど。
「こんなんでもどんなんでも、那穂ちゃんは那穂ちゃんだよ。だって小さいのも個性なんだもの。――あ、ご、ごめんね、変な意味じゃないの」
 自分が言われて嫌なことを、他人に言っちゃいけないのに。私は慌てて悪意がないことを付け加えた。
 すると那穂ちゃんはちょっと驚いた顔をしてから、笑った。
「ん。ありがとるる、少しスッキリした。けど、るるもそんな風に考えてたんだ。もっと悩んでるのかと勝手に思ってた」
 要するに、正反対だけど同じ悩みを持ってる私が、誰かにアドバイスできるくらいに身体のことを割り切ってるのが意外、ってことかな。
 だって、どんな身体でも私は私だもん。これだけは何をしたって変わらない。……まあ、注目されたら恥ずかしいのも変わらないけど。解決しないことで落ち込んだって、なんにもならないもんね。
「私も那穂ちゃんの悩み、知らなかったよ。……ふふ。私たち、何だか似てるね?」
「かもね。見た目全然違うのに」
 二人で言い合って、二人で笑った。いきなりだったけど那穂ちゃんと分かりあえて、嬉しくなっちゃった。
「じゃあ、他のところの様子見に行こう」
「うん。終わってなかったら手伝ってあげなきゃ」
 ということで体操場を後にする。ほんのり暖かいアスファルトを歩いて、交差点に出る。正面の道は更衣室、右はプール。プール掃除は大変だけど三人いるからいいとして、先に更衣室を見に行くことにした。
 隣り合う男子更衣室と女子更衣室は、どちらの扉も閉まってた。でも近づいていくにつれて、どちらからか二人分の変な声が漏れ聞こえてきた。
「……グレ!」
「……グレ!」
 私は那穂ちゃんと全く同じタイミングで顔を見合わせる。
「これ、夕日ちゃんと一条くんだよね?」
「だろうね。女子更衣室の方っぽいけど、閉まってるかな」
 そして女子更衣室の前に立って、中の様子を伺ってみる。と言っても曇りガラスの向こうは見えないようになってるから、耳を澄ませるだけだけど。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
 もう一度見合わせる。
「何この言葉。るる、知ってる?」
「ううん。……ハイグレ? マンションのこと?」
 すると那穂ちゃんが呆れた目を向けてくる。わ、私だって分かってるよ! この前郵便受けに入っていたハイグレードマンションのチラシを思い出して呟いてみただけだもん。普通そんな単語を何回も言うはずないよね。じゃあ、なんなんだろう。
 考えていても仕方ないから、本人たちに聞いてみることにした。
「――夕日ちゃん、一条くん。なんか声するけど、ここにいるの?」
 返事よりも前に、那穂ちゃんはドアノブに手をかけて、捻ってしまった。捻ることができちゃった。
「お、扉開いてるみたい。ちょっと確認してみようか」
 キィ、と金属の擦れる音を立てながら、扉が引かれていく。次の瞬間、更衣室の中に踏み入ろうとした那穂ちゃんの顔が固まった。普段取り乱したりなんかしない那穂ちゃんの、だ。見てはいけないものを見てちゃったような感じに、目を開いたまま。
 私は慌てて駆け寄り、そして、
「な、那穂ちゃんどうした……の……っ!?」
 部屋の中に広がっていた同じ光景を見て、同じように動けなくなった。
 だってそこには……そこには……!
「よう、東郷に田中。掃除は終わったかぁ?」
「二人ともちょうど良かった! ちょっと話したいことがあるの」
 いつもの口調で話しかけてくる、一条くんと夕日ちゃんがいた。女子更衣室に一条くんがいることもビックリの一部ではあるけれど、そんなことより何より驚いたのは、二人の格好が……ピンクと黄緑のハイレグカットのワンピース水着だったこと。
 私もスイミングスクールでは、ちょっとハイレグだけどスクール水着より動きやすい競泳水着を着る。でも、目の前のこれほどじゃない。こんな、その、見えちゃいそうなほど細いのなんて、見てるこっちが恥ずかしくなっちゃうよ。しかも一条くんなんて、ギリギリ見えてはないけど……形が……うぅ。なんだかほっぺたが熱いよ……。
 あまりにショッキングな光景を目の当たりにした私たち。先に頭の回転を取り戻したのは、やっぱり那穂ちゃんの方だった。
「あ、大丈夫だから。二人にそういう趣味があったこと、みんなには黙っておくから。うん。じゃ、そういうことだからお邪魔しま」
「まあ待てって。オレたちからも話があんだよ」
 那穂ちゃんは何も見なかったことにしてドアを閉めようとしたけれど、あっという間に寄ってきた一条くんの腕によって押し留められてしまう。流石は男子。那穂ちゃんが負けじと力を込めてみても、びくともしない。
 ドアを挟んで二人は、薄ら笑いを浮かべながら押し合いをする。
「一条くんにはあっても、あたしたちにはないから帰してくれないかな?」
「そうはいかねぇよ。オレたちのハイグレ姿を見られたからにはな」
 その言葉を聞いて、私は背筋に悪寒が走ったことを感じた。それは那穂ちゃんも同じだったようで、このままではマズいと手をドアノブからバッと放す。
 だけど、私たちの対処は遅かった。扉にかかっていた力のバランスが崩れたはずなのに、一条くんは前のめりに転ぶどころか大股で一歩踏み出してドアを開け放ち、もう片方の手で驚く那穂ちゃんの手首を掴んで、放り込むように暗い更衣室に引き込んだ。
「わ!?」
「那穂ちゃん――きゃぁ!」
 那穂ちゃんの身体が視界から消えたのと入れ替わりに、勢い良く夕日ちゃんが飛び出してきた。何が何やら全然わからない内に腕を引っ張られて、同じように私も部屋に連れ込まれちゃった。
 それが無理やりだったせいで足がもつれて床に転ぶ私。首だけ振り返って見たのは、一条くんによって鍵まで閉められてしまった扉だった。
「いっ……たたぁ」
 当たりどころが良かったお陰でそんなに痛くはなかったけれど、反射的に声が出てしまう。隣には上半身を起こして私を見下ろす那穂ちゃんがいた。
「るる、大丈夫?」
「うん。那穂ちゃんは?」
「あたしも平気。けど……」
 いつも以上に怪訝そうに細めた瞳を、ハイレグ水着姿で側に立つ二人に向ける那穂ちゃん。夕日ちゃんと一条くんはニコニコ笑っているけど、目を合わせるとどうしてもお化け屋敷に近い肌寒さを感じずにはいられなかった。それは私たちがスクール水着一枚の姿だからってわけじゃないと思う。何か、もっと別の予感。
 すると夕日ちゃんが口を開いた。
「突然ごめんね那穂、るる。でも、どうしても話を聞いてほしくて」
「――ただの話ならここまでしなくてもいいはず。それに、あたしたちを閉じ込めるなんて何のつもり?」
 那穂ちゃんの口調の中には、静かな怒りがこもっている。私も同調してうんうんと頷いた。
 やれやれ、とでも言いたげな様子で、次に一条くんが話しだした。
「怖がらなくてもいいぜ、痛いことは何一つしない。……お前らが抵抗しなきゃ、な」
「な、何の話をしようとしてるの……?」
「うーん、やっぱり口で言うより実際に見せちゃった方がいいよね」
 言って夕日ちゃんが近くの箱から取り出してきたのは、青と赤の、
「ハイレグ……!」
 私たちは思わず息を呑んだ。
 そうそれは、今現在夕日ちゃんと一条くんが着てる水着と、多分おんなじデザインのハイレグ水着。結構伸びそうな生地だけど、見た目にはだいぶ小さい。二人はキツくないのかな?
「――ハイレグじゃない。ハイグレだ」
 ビシッと指さして指摘してきたのは、一条くん。そういえば、扉の向こうから聞こえてたのも「ハイグレ」だったっけ。でも、普通はこういうデザインはハイレグって言うのに。ハイグレって、何?
 そんな心の声が聞こえちゃったのか、夕日ちゃんがこの疑問に勝手に答えてくれた。
「わたしたち二人はね、ここでこの水着を見つけて着たの。そしてあることをすると、ただの人間でいるのがバカらしくなるくらい気持ちよくなれるってことに気付いたんだ」
「その『あること』ってのが、ハイグレだ。オレたちはハイグレポーズをする人間、つまりハイグレ人間になった。ハイグレ人間が着てる水着だから、こいつの名前もハイグレってわけさ」
 ……説明を聞いても分からない。今、一条くんは何度「ハイグレ」って言ったんだろ。
 とりあえず一つだけ飲み込めたのは、この二人がハイグレ人間なんだ、ってこと。それがどういうことかは置いといて。
「って、まだ分かってなさそうだな」
「じゃあ陸斗くん、一緒にハイグレしてあげようよ」
「それもそうだな。よしやるか、夕日」
「うん!」
 嬉しそうに頷く夕日ちゃん。あれ? いつの間に一条くんは夕日ちゃんのこと、名前で呼ぶようになったんだろう。
 そんな違和感を抱いていると、二人は肩を並べて私たちの前に立って、いきなり足を大きく広げた。
「はわわっ!」
 私は思わず顔を背けちゃった。ハイレグ水着でそんなことするなんて、完全に予想外だった。何を考えてるの、二人とも……。
 そして、聞こえてきたのは。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
 威勢のいい、ハイグレという謎の単語だった。それに混じって、水着の繊維が伸び縮みしたり肌に擦れる音や、吐息混じりの荒い息遣いが僅かに届いてくる。
 一体何をしてるんだろう。ちらりと横目をやったとき、私は夕日ちゃんと一条くんの、変態みたいな姿を目の当たりにしてしまった。
「ハイグレ! ハイグレ! んふぅ……ハイグレ!」
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ……はぁ、はぁ」
 瞳はどこを向いているか分からないくらい虚ろで、頬を真っ赤に染めて、口はハイグレと言う以外はだらしなく開きっぱなし。反対に首から下の動きはまるでロボットなんじゃないかって思うほどピシッとしてる。だけどしているのは、水着の大胆なVラインに沿って両腕を上下に動かす、っていうなんともおかしな動作。胸を反らせつつ肘を肩の近くまで引き上げると、また限界まで下げる。これを何度も繰り返していた。
 隣の那穂ちゃんさえも、これには口をあんぐりさせてた。もちろん私も、全く意味が分からない。
 だけど二人は……とっても気持ちよさそうだった。
 一頻りやって満足したのか、ハイグレポーズをやめる二人。そして私たちに話しかける。
「るる、那穂、これで分かったかな?」
「うん、イヤってほど分かったよ。……二人が救いようのない変態だった、ってこと」
 冷や汗を浮かべながら、那穂ちゃんは挑発した。
 口には出来ないけど、正直私も同じように思ってた。もしさっきの話が本当なら、このハイレグ……じゃなくてハイグレを着ちゃったせいで夕日ちゃんたちは変になっちゃった、ってことなんだろうけど、水着で変になるってそれこそ変な話だよ。確かにピタッとした水着には着心地のいいものもあるけど、だからってこんなのは。
 でも、本当の本当に変になっちゃったのなら。あの水着には人の性格をこんなに変えちゃう魔法みたいな力がある、ってこと……?
「田中、お前……ハイグレをバカにすんのか!?」
 私が考え事を中断させられたのは、一条くんの震える声のせいだった。振り向くと一条くんは、今にも那穂ちゃんに殴りかかりそうなくらいに激怒していた。対して那穂ちゃんはいつ攻撃されても大丈夫なように身体に力を込めて準備していたけど、焦ってる。まさかここまで怒り出すなんて思ってなかったんだ。
 一条くんは夕日ちゃんから青のハイグレをひったくってズイズイ歩み寄っていく。そして、
「だったらお前も着ろ! そしたら分かるぜ、ハイグレの素晴らしさが!」
 と、目の前に水着を突きつけた。
 これだけの剣幕に、那穂ちゃんの表情も固まっていく。同級生とは言え、怒った男子はやっぱり怖い。那穂ちゃんなんか体格差があるから余計のはず。
 しかも、言っていることが普通じゃない。ハイグレを、着ろ? こんなに恥ずかしい水着を那穂ちゃんに? 今ここで? ……そんなの、私じゃなくたってイヤに決まってるのに。
「……お断りします」
 当然、那穂ちゃんは気丈に首を振った。けど、
「いいや許さない。田中が断っても、無理にでも着せてやるからな」
 もう一歩一条くんが踏み出すと、那穂ちゃんの顔色もサッと青ざめた。チカン、セクハラ、変質者……そんな言葉が私の頭のなかに浮かんできた。一条くんは本気だ。私も那穂ちゃんも、声を出すことすら出来なかった。
 そこに「待って」と横槍が入れられる。
「陸斗くん、やり過ぎだよ」
「何でだよ夕日! 田中はハイグレを――」
「だとしても、那穂は女の子なんだよ? 男の子に無理やり脱がされて裸を見られるなんて、嫌に決まってる」
 良かったぁ。そのまま止めさせて、夕日ちゃん!
「じゃあオレは後ろ向いてるから、夕日が着せてやれよ。ならいいだろ?」
「もちろんそれならいいけど」
 いいわけないでしょ!
 ダメだ、夕日ちゃんもやっぱりおかしくなっちゃってる。心の中で膨らんだ期待を一瞬で壊されて落ち込んでいると、今度はその夕日ちゃんが私の方を向いた。これ以上ないくらい、冷たい目に見えた。
「――でも、わたしは那穂より先に、るるにハイグレ人間になってほしいなぁ」
「ひぃ……っ!?」
 まるで童話の魔女みたいな雰囲気を全身から出しながら、片手に赤のハイグレを持ってやってくる、ピンクのハイグレ姿の夕日ちゃん。私は慌てて壁際まで後ずさったけど、その歩みは止まらない。
「恥ずかしがり屋のるるがハイグレの良さを分かってくれたなら、那穂だって心変わりするかもでしょ?」
「まあ、それもそうだな」
 その言葉で、夕日ちゃんの意見が通ってしまった。つまり、ハイグレを着せられるのは――
「や……私、そんなの着たく、な……っ」
 いくら夕日ちゃんであっても、裸を見られるなんて恥ずかしいよ。それにハイグレを着るなんて、もっともっと無理。
 逃げなきゃと思っても、扉の前には那穂ちゃんの手首を掴んだまま通せんぼしてる一条くんがいる。背後は壁。窓の外は空中だからこれもダメ。狭い更衣室の中、逃げられる場所はどこにもなかった。
「あぅ……!」
 見られちゃう。着せられちゃう。そう思うと、眼の奥からじわりと涙が溢れてきた。歪んだ視界の中、夕日ちゃんが迫ってくるのが分かった。そして私のお腹にハイグレをかぶせてから、両肩を掴んできた。
「大丈夫だよ、るる。怖いのも恥ずかしいのも、ハイグレを着ちゃえば全部なくなっちゃうんだから」
「だ、だけどぉ」
 スクール水着の生地越しに感じる、軽い感触。もうすぐそこまでハイグレは近づいてきている。でも、私は一歩も動けなかった。下手に抵抗して夕日ちゃんを怒らせるのが怖いってこともある。だけどそれ以前に、肩に手を添えられているだけなのに、何故か私は全く身動きが取れなかった。
「さぁ、そんな邪魔な水着は、脱いじゃおうね」
 夕日ちゃんの手が水着の肩紐の上に重なって、そしてスルリと外側へスライドさせていく。肌の上を、肩紐が滑っていく。
「っ!」
 もうダメ! 私、裸に……!
「るる!」
 そのとき、那穂ちゃんが私を呼ぶ。何とか一条くんの手を振りほどこうともがきながら。だけど、男の子の力は強かった。
 これ以上一条くんを怒らせたら大変なことになるかも知れない。私は目の前の恐怖をこらえて、言った。
「む、無理しないで那穂ちゃん。私、どうせもう……。だから、せめて私の着替え、み、見ないでくれたら……」
 那穂ちゃんの言葉による返事はない。その代わりに、私に背中を向けてくれた。
 ……こうするしか、できないよね。
「素直に着てくれる気になった?」
 夕日ちゃんの問いに、私は精一杯首を横に振る。
 ハイグレなんか着たくない。それは変わらないけど、誰にも夕日ちゃんを止めることはできないんだもの。諦めにも似た覚悟が、心のなかに生まれる。
「じゃあ、このままわたしがやってあげるよ」
 肩紐が腕を通過していく。その途中で、私のお胸が成す術なく露わにされた。水着で圧迫されていたそれが解放された瞬間、反動でブルンと揺れた。
 見られた。同性だけど、夕日ちゃんだけど、家族以外の人に。
 ついさっきできたばかりの覚悟を簡単に砕いてしまうほど、それを見られちゃったことが恥ずかしくて、
「ひゃぁっ!?」
 両腕で反射的に胸を隠してしまった。手を振りほどかれた夕日ちゃんはムッと不機嫌な顔になった。
「るる、そのままじゃ脱げないし着せられないままだよ。ほら、腕」
 そして片腕ずつ掴まれて、肩紐を完全に外されてしまう。私今、上半身が裸にされちゃったんだ……。まるで頭からお湯を掛けられたみたいに、素肌を晒してるところが熱い。
 そんな私を見て、夕日ちゃんが赤のハイグレを私に手渡した。
「今はこれで隠しててもいいよ。あと、仰向けに寝てくれる?」
「う、うん……」
 どんな薄布一枚でも、隠せることが今はありがたかった。優しくされたことが嬉しくて、私は無意識の内に夕日ちゃんの言うことに従っちゃった。
 寝転がってハイグレを胸の上に被せた後になって考えれば、こうした方が夕日ちゃんが水着を脱がしやすいってだけだったのに、自分からそうしちゃうなんて。私のバカ……!
 と後悔しても、夕日ちゃんの動きは止まらない。スクール水着を巻くように下ろしていき、遂におへその下までやって来た。こうなっちゃうと、もうパンツ一枚と大差ない。
 あと、これを脱がされたら……。
「顔赤いよ、るる。大丈夫?」
 体調の悪そうな友達を気遣うのと全く同じ調子の声で、夕日ちゃんが尋ねてきた。ううん、具合が悪いわけじゃないの。
 ただ、夕日ちゃんが今まさに手にかけている私の最後の一線が、破られることが怖いだけ。単純に、もう、それだけは……耐えられないの!
「あ、あの、夕日ちゃん」
「何?」
 頭に浮かんだその一言を口にするのが、こんなに大変だなんて。何度も喉で空気を詰まらせて、唇をぱくつかせる度に夕日ちゃんに首を傾げられる。
 だけど。私は何度目家の挑戦で、ようやく声にすることができた。
「わ――私が脱ぐから。……自分で、き、着るから。だから、お願い……脱がさないで……」
 その言葉を言うためだけにお腹から吐き切ってしまった空気を、もう一度取り込む。そうして落ち着いた私が見たのは、満足そうに頷いて離れていく夕日ちゃんだった。
「良かった、るるもやっとその気になってくれて」
「……ん」
 違うの、ハイグレを着たくなったわけじゃない。もうこれ以上、恥ずかしいところを見られたくなかっただけ。
 だけど、何にせよ私は結局、自分でハイグレを着ることになっちゃった。着せられるのも嫌だけど、着るのも当然嫌なのに。
「じゃ、着終わったら教えてね。着替えてるところは見ないから」
「うん……」
 もう、後には退けなかった。
 同じ空間に、私以外が三人いる。だけど、私を見ているのは誰も居ない。私は一人。だから恥ずかしくない。早くスクール水着を脱いで、ハイグレに着替えるの。
 そう必死に言い聞かせて、ローライズのショーツのようになった水着を脱ぎ去ろうと手をかけたそのとき、
「るる、ごめん……っ!」
 背中越しに、那穂ちゃんが声をかけてきた。泣いてるのかと思うほどか細い、初めて聞くような那穂ちゃんの声だった。
 那穂ちゃんは何を謝ろうとしてるんだろう。少し考えて、返答する。
「……那穂ちゃんが謝ることなんてないよ。だって那穂ちゃんじゃなくても、ああ言ったと思うもん。それにね、今でも私、ハイグレなんて着たくないって思ってるよ」
 瞬間、張り詰めた空気を気にしないように努めながら、えへへと小さく笑って、続ける。
「だから私はね、ハイグレを着て那穂ちゃんに言うんだ。『こんなの着てもいいことないよ、着ないほうがいいよ』ってね」
 そもそも夕日ちゃんの計画は、私をハイグレ人間にして那穂ちゃんを勧誘させる、ってこと。つまり私がハイグレを着てもそれを拒否し続けられれば計画は失敗。例え那穂ちゃんがその後で無理やりハイグレを着せられたとしても、私が耐えられたものが那穂ちゃんに耐えられないってことはない。二人ともハイグレ人間にならなければ、さすがに夕日ちゃんと一条くんも諦めるしかないはずでしょ。
 それが、私の計画。決して那穂ちゃんの身代わりなんかじゃない。
「東郷。早く着ろよ」
 いらだちが頂点に達したのか、黄緑のハイグレの背中をこちらに見せている一条くんが私を急かす。
「い、言われなくても」
 私は上半身をかがめて、一気にスクール水着を足首まで下ろした。右、左と足を外すともう、私は生まれたままの姿だった。
 そして手には派手な赤色のハイレグ水着。私は今からこれを着るんだ。……怖くはない。でも、恥ずかしい。
 でも、その恥ずかしさはちゃんと心に留めておかなくちゃいけない。ハイグレの魔法に掛けられたとき、自分の意識を保たせてくれるのはきっと、「恥ずかしい」って気持ちだと思うから。
 ……私は、絶対に夕日ちゃんたちみたいにはならないんだから……っ!
 強く決心してから、足を水着の二つの穴に通して、ゆっくり引き上げていく。ハイグレが、迫ってくる。
 足の皮膚を這い上がるハイグレの生地が、この時点でもう着心地の良さを予感させてくる。普通の水着とは触った感じも伸びる感じも、ちょっと違う気がする。繊維の成分や織り方のちょっとした違いは最終的には大きな違いになる。
 これから私はこのハイグレに包まれるんだ。そう思うと、また身体が熱くなった。恥ずかしさへの嫌悪感と、気持ちよさそうだっていう期待感に。……着たいなんて思っちゃいけないのに、ハイグレに触っていると不思議とそんな気持ちが湧いてきちゃう。
 生地はももを通り、あとは穿くだけで身体に密着する。矛盾する二つの気持ちに挟まれた心臓が、苦しそうに暴れてる。運動なんかしてもないのに、緊張だけで息が荒れる。意識が半分、ふわふわしてきちゃう。
 私にもう道はない。着て、耐えるの。だから――
「――っ! あぁぁんっ!」
 時間を掛けても仕方ないと、私は腰の辺りまでグイッと一気に持ち上げた。途端にハイグレは私の下半身に吸い付くようにまとわりついて締め付ける。鋭く切れ上がった水着が前と後ろに赤色のV字を形作る。そして食い込んじゃいけないところに容赦なく……食い込んでる……っ!
 喉の奥から出ちゃった悲鳴には、混ぜ込むつもりのなかった恥ずかしい色が混ざってしまった。幸いみんなは、背を向けたままだった。だけど絶対に聞かれちゃったよ、あの変な声……!
 それくらい、ハイグレは私の敏感なところを一瞬で刺激してきた。これ以上続けたら、ほんとにおかしくなっちゃうかも。夕日ちゃんみたくなっちゃうなんてイヤだけど、でも、着なきゃ。
 私は歯を噛み締めて、もう少しだけハイグレを着た。ワンピースなのに露出の多いハイグレの中で、唯一胴体をぐるりと一周する部分だ。ハラマキみたいって言うと少し違うんだけど、とにかくキュッとお腹が固定された感じがする。元が小さいサイズのせいでおへその窪みまでしっかり浮き出ているくらい、ピッタリとした着心地。
 なんていうか、とっても安心する。恥ずかしさなんて感じる必要はなくって、ハイグレを着て堂々としてもいいんだ、って言われているような安心感。あぁ、このままずっとハイグレを着てられたら。
 ――って何考えてるの私っ! そうなっちゃったら負けなのに、着切る前からもうそんなこと考えちゃうなんて!
「私……大丈夫かなぁ……?」
「どうしたの?」
「な、なんでもないっ! だから見ないで!」
 声に反応して振り返ろうとした夕日ちゃんを、すんでのところで制止する。だってまだ胸が出たままなんだもの。
 これは誰にも言えないけど、正直、ワンピースの水着は胸が苦しくてあんまり着たくない。しかも、変に隙間が出来るせいで動くと揺れて不安定になっちゃうし。スクール水着はあんまり伸縮性がないから安定しないし、競泳水着は仕方ないことだけどギュゥッと締め付けられて窮屈な思いをするから。
 あと……着づらくて。水着の胸の部分を目一杯広げて胸を覆うようにしながら肩紐を掛けて、そのあとポジションを直す、っていう作業が意外と手間が掛かっちゃう。関係のない人には些細なことに思うかもしれないけど、私にとっては大問題だった。
 まあ、水着の好き嫌いは今は関係ない。とにかく、面倒とか言ってないで胸を隠して水着を着ないと。
 すぅ、はぁ、すぅ、はぁ。何度も深呼吸をして決心のタイミングを見計らい、そして――せーのっ!
「えいっ!」
 グイ、ビヨン。信じられないくらいよく伸びるハイグレに驚きながら、胸の部分にスペースを作りつつまず左腕を輪の中に潜らせる。くるくるとねじれちゃった紐を肩の位置で直し、左胸を安定させようとして……私は驚いた。
 苦しくない。競泳水着と同じかそれ以上に胸が安定してるのに、それでいてキツく押さえつけられている感じはしなくて、生地がしっかりお椀型に膨らんでいた。胸は全方位から心地よい圧力を受けて、き、気持ちいい、かも。
 ――ダ、ダメダメ! さっきからどうしちゃったの!? 私はちゃんとハイグレを着て、そしてこんなのおかしいって言わなきゃいけないんだから!
 恥ずかしい。恥ずかしいの。気持よくなんてない。私は恥ずかしい格好をして、恥ずかしくなってるの。こんな水着、嫌なんだから。
 よく考えれば胸の膨らみが完全に出てるってことは、裸の胸を晒してることとほとんど同じ。うわ、私恥ずかしい! ハイグレ恥ずかしい! こんなの那穂ちゃんに薦められるわけないよね!
 私はハイグレに感じ始めてる魅力を掻き消すために、「恥ずかしい」って単語を連呼する。そうやって無理やり思い込ませれば、まだちゃんと抵抗感は心の中に生まれてくる。
 だけどそのことを裏返せば、もう私は何も考えなければそのままハイグレに飲み込まれていっちゃう、ってこと……!
 残す行程はただひとつ、右の紐を掛けるだけ。それが終われば、こんな昔のアニメの原始人みたいな格好じゃなく、ちゃんとしたハイグレ姿になれるんだから。そしたらもう恥ずかしくなんて……ってあれ? 結局私、何が恥ずかしいんだったっけ?
 裸の姿を見られること? 無理やりハイグレを着せられること? それとも、不完全なハイグレ人間でいることだったかな。
 でも、よく考えたらその三つのどれも、私の意志でハイグレを着れば解決することだった。なーんだ、簡単なことじゃない。早く着て、那穂ちゃんに言わなくちゃ。
 私は右肩に肩紐を掛けながら、また大事なことを忘れちゃったことに気付いた。……那穂ちゃんに、何て言えばいいんだっけ。
 その疑問の答えを思いつく前に、私の身体に大きな大きな変化が訪れた。
「き、きゃああああああああああッ!」
 それは赤いハイグレが完全に私を包み込んだ瞬間だった。右胸も左と同じようにキュッとくるまれるのと同時に、あるべき形になったハイグレが本来の力を発揮して身体に吸い付き、食い込んできた。それがあんまり突然で、苦しくて、だけどとっても気持ちよくて、思わず笛みたいな悲鳴を上げちゃった。
 ショックで体中がピクピク痙攣している。でも、その小さな震えのせいで、更にハイグレと肌が擦れて、擦れ続けて、
「っ、あぅっ、ひぁ! んっ、あんっ! あぁっ……」
 繰り返し何度も、息が吐けなくなるまでそれが続いた。必死の思いで深く呼吸しても、また更に気持ちよさがやって来て……ある意味拷問だった。でも、一生このままでもいいと思えるような。
 何で水着一枚で、こんな気持ちになるんだろう。実際に体感してみても、やっぱりほんとに魔法なんじゃないのかなって思う。ハイグレに掛けられた、着ると人間をハイグレ人間にしちゃう魔法。
 ハイグレを着て快感を覚えてる夕日ちゃんたちをバカみたいと思った過去の私は、ついさっき消えた。今の私は、夕日ちゃんや一条くんと同じ――ハイグレ人間。
 脱ぎたくない。ずっとずっとこのまま、ハイグレ姿でいたいよぉ……!
 私は、自分がハイグレ人間だってことを宣言するために、大事な大事なポーズをとる。さっき二人が見せてくれた、ハイグレ人間のポーズを。
「はい……ぐれっ! はいぐれっ! はいぐれっ! はいぐれっ! ふ、ふあぁぁっ!」
 見よう見まねで初めてやったハイグレは、たった数度で私の頭の中を真っ白に塗りつぶした。快感の波が今までの私のことを欠片も残さず洗い流して、新しい私に変えてくれたんだ。
 うぅ、気持ちよすぎて止められないよぉ! 足をこんなに開いて、ハイレグの水着一枚だけでこんなポーズしちゃって……でも、もう恥ずかしさなんてない。ううん、違う。恥ずかしくても全然いい。ハイグレして気持ちよくなれるなら、どんなに恥ずかしくても、誰に見られても全然いい。
「はいぐれっ! はいぐれっ! はいぐれっ!」
 だって私は、ハイグレ人間なんだから。
「る、るる……っ!」
 ハイグレに夢中で気づかなかったけど、いつの間にか三人は私の方を向いていた。二人は笑顔で、残る一人はこれ以上ないくらい悲しそうな顔で。
「東郷、やったな」
「るるもハイグレ人間になれたんだね!」
「うん! ありがとう夕日ちゃん、一条くん。私今、すごく幸せ! はいぐれっ!」
 私は心からの本音を言葉にした。ハイグレの線をなぞる度に体中に駆け巡る幸福感は、ハイグレを着なきゃ絶対に味わえないものだった。
「一応聞くけどるる、わたしや陸斗くんがるるのこと見ても、平気?」
「大丈夫だよ。だって私、ハイグレ人間だもの。ハイグレ姿を見てもらえて、逆に嬉しいくらい」
 自分のことながらほんとに不思議。人間だった頃の私って、ほんとにもったいないことしてた。自分に自信がなくて、うじうじして、恥ずかしがって、そして――ハイグレも嫌がって。でも今は違う。ハイグレのおかげで私、変われたの。
 だからね。言わなくちゃいけないことがあるんだ、那穂ちゃんに。
「――あのね那穂ちゃん」


   【田中那穂】

 あたしは卑怯者だ。自分でよくわかってる。
 そして臆病者だ。それも痛いくらい知ってる。
 あと口も悪い。物事を斜に構えるのが癖だから。
 あたしは嫌いだ。そういうあたしが誰よりも。
 これほど愚かとは、今まで気付かなかった。

 背後から衣擦れと吐息の音が僅かにする。るるがハイレグを着ようとしている音だ。……あたしの代わりに。
 そもそもこうなったのは、あたしが何も考えずにいつものように一条くんたちをおちょくったせい。そうしなければ、少なくともるるに自分からあんな姿をさせる事態にはならなかったはず。
 あのとき変に拒んだりしないで、大人しくハイグレとやらを着せられていれば、展開は違っただろうに。
 ……でも夕日が言ったように、あたしだって一応普通の女の子なりの恥じらいはある。男である一条くんにありのままの姿を見られるなんて、やっぱり嫌。青の水着を手に迫ってきた、黄緑のハイグレ姿の一条くんに、恐怖を覚えたのも確か。
 だけどそのせいで、るるは、
「――っ! あぁぁんっ!」
 今、こんな目に遭ってるんだ。ましてやあのるるのこと。誰も見てないとはいえ、どんなに恥ずかしい思いをしてるだろう。
 後悔してる。更衣室のドアを開いた瞬間からの行動、全て。でも、過去には戻れない。
 だったらせめて、とあたしは思った。今からでも遅くない、「あたしが着る」と、ただ言えばいい。
「……!」
 なのに、音となりかけた息は喉に詰まって出て来られなかった。何度も試しても、同じだった。
 そうしている内に、
「私……大丈夫かなぁ……?」
「どうしたの?」
「な、なんでもないっ! だから見ないで!」
 向こうで二人が会話した。その言葉を聞いて、あたしは安心してしまった。
 「見ないで」ということは「振り返らないで」ということ。なら、あたしがるるの身代わりになるなんて言い出す必要はないじゃん、と。助けるためには振り返らなきゃいけないんだから、るるは自分であたしの助けを拒んだんだ、という解釈。
 そしてあたしはあたしに嫌悪感を抱く。最悪だよ、あたし。さっきまで一緒に笑い合ってた友達がこんなにされてるのに、自分に危険が及ばないければそれでいいなんて。
 この部屋から逃げ出すための扉は目の前にある。だけど、手首を一条くんに掴まれているからそれは果たせない。きっとあたしはこのまま、ハイグレ人間にされるんだ。例えるるが宣言通り自我を保っていられたところで、夕日や一条くんの気が収まるはずない。秘密を知ってしまったあたしたちを自分たちの側に完全に引き込むまで、解放なんかしてくれないだろう。
 ……可能性があるとしたら。ハイグレ人間たちじゃ処理しきれないくらいの数の人間がここにやってきて、このことを目撃してくれるパターンかな。凪沙たちや先生なんかが、掃除が遅いって様子を見に来てくれたらいい。そのときまであたしかるるが人間の意識を持ったまま耐えて助けを求めれば、夕日たちを捕まえてくれるかもしれない。
 多分、このハイグレとかいうおかしな水着はピンク黄緑赤そして青の四着だけ。銃二丁はよく分からないけど、あの玉手箱っぽいのの中にはそれしかない。だからこれ以上被害が及ぶことはないとは思うんだけど、こいつらが何をするか予測もつかない。自分の着ていたハイグレを徐ろに脱いで着せるなんてことをしないとも限らないし。そう考えると、増援や目撃者は少しでも多い方がいい。
 まあ、単なる希望的観測なんだけどさ。
「えいっ!」
 とにかく今は、るるがハイグレなんかに負けないことを祈るしかない。
 あのハイレグ水着にどんな力があるのかも分からない。けど一つはっきりしてることは、着ると性格が変わってハイグレのポーズを喜んでとるようになっちゃう、ってこと。夕日や一条くんが、まさかあたしが言ったように元々こんな趣味があったとは思えない。というか思いたくない。夕日はハイグレを見つけたのはここって言ってたし、掃除中で間違いないはず。あたしたちが体操場で掃除してたたった数分で、二人はこんなに変わっちゃったんだ。
 いくらるるが恥ずかしがり屋でも、どれだけ耐えられるのか。そして、あたしは……。
 あんなに足のところが切れ上がってて、身体のラインが裸みたいに浮き上がってる水着なんて、恥ずかしくて着るのは嫌。それにもちろんあのハイグレポーズも。あんな変態みたいなこと、どんなに気持よくたってするもんか。
 もしあたしが着せられても耐えて耐えて耐えぬいて、「ほらねあんたたちがおかしいの」って言ってやる。
 るるもさっき、ああ言ってくれたんだ。きっと大丈夫。そう信じるしかない。
 そして更衣室にるるの声が響き渡った。
「き、きゃああああああああああッ!」
 ……悲鳴? 夕日に何かされたの? それともまさか、ハイグレを着ただけで?
「っ、あぅっ、ひぁ! んっ、あんっ! あぁっ……」
 続けて聞こえてきたのは、こっちが恥ずかしくなるようなほど可愛らしい素の喘ぎ声。一体何が……。
 こうなったらるるに怒られようと関係ない。あたしはゆっくり振り返って、様子を確認した。そして見た。
「はい……ぐれっ! はいぐれっ! はいぐれっ! はいぐれっ! ふ、ふあぁぁっ! はいぐれっ! はいぐれっ! はいぐれっ!」
 狂ったような笑顔で、大きな胸を上下に揺らしながらハイグレポーズを繰り返す、るるの姿を。
 言葉が出なかった。あのるるが、こんなにもあっさりハイグレに負けて、恥ずかしげもなくハイグレしているなんて予想もつかなかったから。そして同時に、ハイグレの恐ろしさも分かった。あれは本当に人間を壊して別の人間に作り変える、とんでもない力があるって。
 何度目を疑っても、赤のハイグレ姿のるるは元には戻らない。
「る、るる……っ!」
 さっきまであたしと話してたるるは、どこへ行ったの?
「東郷、やったな」
「るるもハイグレ人間になれたんだね!」
「うん! ありがとう夕日ちゃん、一条くん。私今、すごく幸せ! はいぐれっ!」
 少なくとも目の前にいる赤のハイグレ人間は、あたしの知ってるるるじゃなかった。
 今のあたしの状態には、呆然という単語しか当てはまらないだろう。もう、ものを考えること自体を、脳が拒否しているようだった。
 だから、るるが近づいてきていることに気付いたのも、声を掛けられてからだった。
「――あのね那穂ちゃん。ハイグレは……」
 やめて。言わないで。続きは、言わないで。お願いだから。
「ハイグレは、とっても気持ちいいんだよ。那穂ちゃんもハイグレ人間になって、私たちと一緒にハイグレしよ?」
 祈りも虚しく、あたしはるるの口から一番聞きなくなかった言葉を聞いた。返事として、一度首を振る。
 るるも、あっという間にあちら側の人間になってしまった。そうなったからには、することは一つ。
「じゃあ、私たちがハイグレに着替えさせてあげるね? 夕日ちゃん、手伝ってくれる?」
「もちろん!」
「二人とも、さっさと済ませてくれよ? 何もしないで待ってるの、結構退屈なんだからな」
「だったら陸斗くんはハイグレしてなよ。あ、その間振り返っちゃダメだからね」
「はいはい分かってるよ。――ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
 あたしのことを女子組に引き渡した一条くんは、窓際に移動して外に向かってあのポーズを繰り返し始める。窓開いてるから黄緑のハイレグ姿まで外から丸見えのはずなのに、恥ずかしいとか思わ……ないんだろうな、ハイグレ人間は。
 そんな変態の仲間に、これからあたしもされるんだ。夕日とるるは妖しげな笑みを浮かべて迫ってくる。逃げる方法は……ない。
「イヤ……イヤっ」
「那穂ちゃん、どうしてそんなに怖がるの?」
「ハイグレはあのるるでも着れるんだよ。那穂に似合わないはずないよ」
 多分次が最後の抵抗になるだろう。それが分かっていても、足掻かずにはいられなかった。
「あたしは着たくないって言ってるでしょ。そんなの、着たい人だけ勝手に着ればいい。わざわざあたしに着せる理由なんて――」
「わたしたちが那穂に着てほしい。それが理由」
「那穂ちゃんと私は似たもの同士だよね。私の好きなこと、那穂ちゃんにも知ってほしいの」
 それはさっきの掃除終わりの会話の一節。あたしにとっては珍しく本心を打ち明けることができたときの言葉を、逆に利用された。動揺したあたしは、辛うじてこれだけ言った。
「……ゆ、夕日もるるも、頭おかしい」
 すると二人はすぐさま眼の色を変えて、
「ほんとにおかしいのは、どっちかな」
「これから私たちが――教えてあげるよ!」
「っ!」
 ものすごい勢いで飛びかかってきた。身構えたり暴れたりする隙も与えられずにあたしは、背後に回り込んだるるによって羽交い締めにされた。お尻をついて足を前に伸ばした姿勢だ。肩ごと腕を抑えられて、動くことすらできない。るる、こんなに力があったの……? っていうか背中に柔らかいものが当たってるんだけど。
「それじゃ、お着替え始めよっか」
 後ろに気を取られていたせいで、いきなりの夕日の囁きに心臓が跳ね上がった。
 夕日の手には青のハイレグ水着がある。夕日はそれを、早くあたしに着せたくてウズウズする気持ちを発散するかのように弄ぶ。
「水着、脱がすよ」
「や、やめて……」
 るるは優しい声で言った後、あたしのスクール水着の肩紐を片方ずつ器用に外していった。そのときに一旦腕の拘束は解けるのだけど、隙は最小限でどうにもならず、加えて何故か心が落ち着いてしまって思うように力が出なかった。実際には羽交い締めとは言え、るるに抱かれている体勢になっているせい、なのかもしれない。そんな状況じゃないって分かってるのに、安心感がじわりと心を満たす。
 紐が両肩から外されてダランと垂れる。そして次に夕日があたしの足に跨るようにして近づいて、両手でそれらを掴んだ。
「那穂、ちょっと恥ずかしいかもしれないけどすぐだから、我慢してね」
 あたしは夕日にされるがままにするすると水着を下ろされて、上半身を裸にされた。身長と同じように、同学年の子と比べても無い胸。それはそれで恥ずかしいってこと、後ろにいるるるには理解してもらえるんだろうか。……まあ、ハイグレ人間になった今では気にもしないんだろうけど。
「うぅ……」
 隠したくても隠せない。いくら気にしないと言われていても、同性に見られるのだって耐え難い屈辱を感じる。息が浅くなり、頬が熱くなっていくのが分かる。
 夕日は慣れた手つきで脱がせ続け、やがてへそまで晒された。お腹って、その下や上に比べれば見せることに躊躇いはないけれど、自分からじゃなく他人によって暴かれるとすごく恥ずかしい。水着の圧迫感から解放されたお腹は少し湿っていて、空気が当たるとひやりと涼しかった。
 そして腰の辺りで一度手を止めて、夕日は顔を上げた。
「どうする那穂? るるみたいに自分で脱ぐ?」
 さっきのるるは、この先に耐えられずに自分でハイグレを着ることを選んだ。その気持ちは痛いほど分かる。
 でも、あたしは小さく首を振った。自分からあんな姿になるなんて、絶対に嫌だから。当然、他人に脱がされたり着せられるのも嫌だけど。
「ならわたしがやるよ。那穂、いい?」
 どうせダメって言っても脱がすくせに。あたしは何も答えず、その代わりに夕日を睨んだ。すると予想通り夕日は視線を落とし、あたしの脱ぎかけのスクール水着を左右交互に下ろし始めた。あたしは内股を作って抵抗をしたけれど、呆気なく水着は太ももまで外された。
「――!」
 その瞬間、言葉に出来ない思いがあたしを包む。全部剥かれた。全部晒された。全部見られた。ああ、あたし今、裸にされちゃったんだ。窓から吹き込む風がやけに冷たかった。
 夕日の表情も、るるの吐息も、どちらもこの状況を心底楽しんでいるようだった。ついでに未だにハイグレポーズをし続けている一条くんも。あたし一人だけ、こんなところで恥ずかしい思いをさせられている。理不尽だよ、こんなのって……。なんでこんな思い、しなきゃならないの?
 虚しさに身を摘まれながらも、最後の防衛線である膝を左右しっかりとくっつける。けれど夕日はいとも容易く突破してしまう。水着はふくらはぎを抜け、足首をくぐって……完全に脱がされた。
 無造作に投げ捨てられていくスクール水着を、あたしは無意識に目で追う。スクール水着はあたしが人間である証拠だった。それが剥がされ捨てられ、今は何者でもないあたし。
 そんな真っ白なあたしの上に新たに被せられるのが、青のハイグレだった。
「よし、それじゃあ着よっか」
 足元を見ると、ハイレグ水着が大口を開けて笑っていた。まるであたしを飲み込んで乗っ取るのを心待ちにするかのように……!
「嫌! 放して! イヤぁっ!」
 途端に恐くなってジタバタと手足を暴れさせる。でも、るるも夕日も動じさえしなかった。
 ああ、このまま着せられるんだ。諦めかけたそのとき、「夕日ちゃん」とるるが呼ぶ。足にハイグレを通そうとする手が止まる。
「お願いがあるんだけど……那穂ちゃんにハイグレを着せる役目、私がやってもいい……かな?」
「なんで?」
「あ、あのね。さっき那穂ちゃんと話したとき思ったの。もっと那穂ちゃんと仲良くなりたい、もっと同じ気持ちを分けあいたい、って。……ダメかなぁ」
 夕日はその嘆願に一瞬だけ顔を顰めたものの、すぐにハァと息を吐いて、
「るるがどうしてもって言うならいいよ。るるが那穂を、立派なハイグレ人間にしてあげて」
「――う、うんっ! ありがとう!」
 願いを聞いてもらえたるるが大きく頷いたのが、視界の外からでも伝わってくる。何がそんなに嬉しいのか、あたしには分からなかった。
 拘束から抜け出すチャンスかと思われた交代の瞬間は、しかし全く隙がなかった。何事も起こせず夕日があたしを捕まえて、代わりに那穂がハイグレを手に前に回る。
「那穂ちゃん、聞いて」
「な、に?」
 赤いハイグレを着たるるが、笑って呼びかけてくる。
「これから私が、那穂ちゃんをハイグレ人間にするよ。でも怖がらないで。ハイグレはとっても気持ちいいから。それに私たちみんな、おんなじハイグレ人間だから、恥ずかしくなんかないよ。私もハイグレを着るまで気付けなかったし、怖いって気持ちは分かるの。でも、ハイグレ人間になれば全部無駄な心配だったって分かる。――さ、那穂ちゃんもハイグレ着よ?」
 それを聞いて、ふと頭を過ぎったことがあった。数年前うちに来てお母さんが対応していた、何とかって宗教の勧誘の人。思い出したのはその人の口調だった。大丈夫、心配ない、これからの人生がもっと輝く。そんな言葉を並べて、しつこく構ってきたっけ。確か最後は、そのやり取りを覗いていたあたしに気付いた勧誘の人が「お嬢ちゃんは幸せになれる話に興味はなァい?」と尋ねてきたところでお母さんが怒って、「結構です! 娘にもうちにも今後一切関わらないでください!」と無理やり玄関の扉を閉めたはず。
 そのときのお母さんの剣幕があまりにも鮮烈で、強く印象に残っている。あと、直後に困ったような表情になって「ごめんね」とあたしの頭を撫でてくれたことも。
 あたしは当時と同じように、目の前にある無表情の笑顔に怯えた。るるに怯えて、身体がガクガクと震えだした。
「あ……うっ……た、助け……」
「うん。助けてあげるね。裸は恥ずかしいもんね」
 違う、違うの。そんなのを着るくらいなら裸の方がマシ。このまま凪沙や須藤くんのところに行った方が、ずっとずっとマシ。
 だけどその必死の心の声は届かない。届いてもきっと、るるたちは無視するだろうけど。そう思うと涙で視界がぼやけ、るるの表情は隠れて見えなくなった。
 そこに、両足を上ってくる繊維の感触が来る。さわさわと肌を撫でるように這い上がる生地。ハイグレが触れたのはほんの少しなのに、突然あたしの身体の中に電流が走った。
「んぃっ!?」
 な、何今の。足から快感の波が全身に回って、一瞬意識が吹き飛びかけた。
 これがハイグレ? あたしは改めて恐怖した。人間の人格を全て奪ってしまう、ハイグレという存在に。
 そんなあたしにお構いなく、るるは容赦なくそれを上げ続けてパンツのように穿かせた。ハイグレに締め付けられた途端に下腹部は痺れたように疼きだして、
「ん! はぁっ、うぁ! んんぅ!」
 という無意識の喘ぎと一緒に肺から空気が逃げていった。似た声をさっきも聞いたと思ったけど、それはるるのものだった。……そうか、るるもこんな思いをしたんだ。
 ようやくそれに慣れて声を抑えられるようになったときには既に、ハイグレが胸の下まで迫っていた。股には見事なV字が切れ上がっていて、お腹まわりを肌触りのいい生地が包んでいる。下半身はもう、ハイグレ人間のそれだった。
「そんな……こんなのって……」
 どんどん砕かれていく、人間としてのあたし。残っているのは上半分と、心のみ。この期に及んでもあたしは、ハイグレが怖くて仕方がなかった。
「次で最後だね。那穂ちゃん、ここに腕通して?」
「……いや」
 右の肩紐を伸ばして指し示するるに、あたしは絶対に首を縦には振らなかった。確かにさっき気持ち良さを覚えてしまったのは事実だけど、それでもハイグレに屈したくはなかった。こんな無様な姿を嬉々として受け入れる気には、今でも到底なれない。
「もう、なんでも人任せなんだから」
 るるは変な勘違いをしたまま話を進める。そして右手首を掴んできたので、あたしは気力を振り絞って毅然と立ち向かった。
「――やめて。こんなのあたしは絶対に着たくない。ハイグレ人間にもならない。……るる、夕日……あたしの言うこと、分かって」
 もう打算なんかない。あたしの冷静さの最後の欠片を使って、強く強く訴える。
「那穂ちゃん……」
 呟き、るるは哀しそうな顔をした。
「どうして私たちの言うこと、いつまでも信じてくれないの?」
 それは、あたしの心を容赦なく削り取る言い方。内容はあたしの訴えと変わらないのに、単語の選び方があたしよりもズルかった。
 後に続く言葉を考えようという意志を、その一言が軽く吹き飛ばしてしまった。あたしに残された手段は、
「だって、だってぇ……イヤ……や、やめて! 来ないでぇっ!」
 ただがむしゃらに拒むことだけだった。
 ハァ、と溜息をついたるるが、力ずくであたしの右腕をハイグレの肩紐に通しだす。
「は、放してるる! こんなのおかしいっ!」
「おかしいのは那穂ちゃんだよ。――話が通じないのはお互い様。なら言葉じゃなくて一度ハイグレを着てもらって、それから那穂ちゃんが脱ぐか決めればいい……そうでしょ?」
「違う! 一度でも着たらあたし――うああぁっ!」
 鎖骨の上まで運ばれた紐が、パチンと音を立てて肩に食い込んだ。その瞬間にのけぞる、あたしの身体。
 ハイグレを一度でも着たら、人間は人間じゃなくなる。九割着せられた今なら間違いないと断言できる。ハイグレを着たら、ハイグレ人間になる。人間には戻れなくなる。
 それは死ぬこととほとんど同じ意味を持つ。洗脳の果てに考え方を真逆にされたら、外から見ても中から見ても、見た目以外は同じ人とは呼べないだろうから。
 胴体を下から上までほとんどハイグレで覆われて、あたしは今、薄れていく意識を繋ぎ留めるので精一杯。しかもそれももう、左肩しか残っていない。
「これで那穂ちゃんも、ハイグレ人間の仲間だよ」
 言って、左手首と肩紐を掴むるる。人間としてのあたしが、最期の時を迎えようとしていた。
「お願いるる、それだけは……それだけはやめて……ひゃぁっ!」
 輪が肘を通過すると同時に引っ張られるハイグレの生地が、平らな胸の上にするりと被さる。
「あたし、ハイグレ人間にはなりたくない……!」
 るるの指先ひとつで簡単に消えてなくなってしまうくらい小さな存在。それが今のあたし。
 身体が震えるのは恐怖のせい? それとも、快感のせい? その問いに、あたしは結局答えを出すことができなかった。
「うぅ……やだ、あんなのいやぁ! っ、あぁぁ、う――ああああああああああああああああ!」
 無様に喚くあたしに今この瞬間、青いハイグレが着せられた。
 間髪あけずにハイグレは全身をくまなくキツく締め上げる。苦しいと思った途端にそれはまるまる気持ちよさに変わって、あたしを満たしていく。ハイグレに包まれている胴体もそうじゃない手足も、あらゆる場所がハイグレの快感で埋め尽くされた。
「……ぅ」
 だけど、完全に消え去ったかと思ったあたしの意識は、幸いにも辛うじてここにあった。
 いつの間にか夕日は腕を解いてくれていたようで、あたしは自分の力で上体を起こすことができた。と同時に背中のハイグレが伸びて、グイとお尻に食い込んでくる。こ、こんなちょっとの動きだけで気持ちよくなるなんて……。
 赤面するあたしに、二人が問いかけてきた。
「どう、那穂? ハイグレ人間になった感想は」
「すごく気持ちいいでしょ?」
「……うん」
 一度頷くと夕日とるるは、さっきまでとは打って変わって本当の笑顔を見せてくれた。
 ……気持ちよくなんてないと嘘をつくこともできた。でもそれを口にしようとした途端、何故かこれ以上友達を悲しませたくないって思いが浮かんできて、言葉を書き換えてしまった。感情を抜きにすれば、結局のところハイグレの着心地があたしの知ってるどんなことよりも気持ちよかったのは、本当のことだから。認めたくないけど。
 じゃあ、と夕日は続ける。
「那穂も一緒にハイグレしよ? 最初は一回でいいから」
 自分と全く同じ姿の夕日に言われてみて気付いたけれど、さっきまであたしがハイグレに抱いていた嫌悪感はだいぶ和らいでいた。ハイグレをしたくない、嫌いだ、と思っていた記憶ははっきり残っていて、現に今もそう思ってはいる。だけどその感情は、記憶の欠片に引きずられて思わされてるだけなのかもしれない。あたしは自分が分からない。
 記憶と感情―― 一体どっちが正しくて、あたしはどっちに従うべきなのか。きっとその答えは、ハイグレをすれば見えてくるはず。
「……分かった、やる」
 言った直後、ズキンと心が傷んだ。大丈夫、あたしはまだハイグレに屈したつもりはない。ただ、試すだけ。
 ハイグレした後にハイグレを嫌う気持ちが残っていれば、それが自分がハイグレ人間じゃないという何よりの証拠。万が一逆の結果になれば、きっと今の段階で手遅れで、あたしは既にハイグレ人間だってことになる。それならそれで諦めもつく。
 ――あたしはハイグレポーズを取ると決めた。あたしがハイグレ人間でないことの、証明のために。
 あたしの返答を聞いて、本当にずっと一人でハイグレし続けていた一条くんもこちらの輪に加わった。正面の一条くんは全く疲れた様子もなく、むしろ元気さがいつも以上に有り余っているようだった。
 右のるる、左の夕日が互いに目配せし、次に他の二人にも視線をやる。言われなくても何となく、これが合図だということが分かった。予想通り、四人は全く同じタイミングで両足を広げ、体勢を低くした。
 下に伸ばした腕も揃えれば、ハイグレの準備は完了。あれだけ嫌だと思っていたポーズなのに、意外とすんなりできてしまった。周りに同じハイグレ姿のみんながいるからだろうか、下品で恥知らずなポーズもなんとか耐えられる。
「う……」
 それでもやっぱり恥ずかしい……!
 ハイグレなんて絶対したくない。でも、しなきゃ何も分からないままだ。それにどうせあたしの次の行動に、ハイグレする以外の選択肢はないんだから。
 屈辱感が身体に重くのしかかる。対して他の三人は晴れやかな笑顔。こんなに不平等なことはなかった。
 一度だけ。一度だけ我慢すればいい。あたしは自分にそう言い聞かせて、目をつぶり歯を強く食いしばる。……したくない、けど。
 そして――四人の息が綺麗に重なった。
「ハイグレ!」
「ハイグレ!」
「はいぐれっ!」
「ハイグレッ!」
 水着の足ぐりの線を一思いになぞり上げる動きに合わせて、ハイグレが伸縮する。それによってあちこちが優しく撫でられたかのような感覚が全身に走った。
 だけど、それだけじゃない。心の奥底から暖かいものがじわりと溢れて、血流に乗って隅々まで行き渡った。――今の感覚を言葉にするには、こう表現するくらいしかない。
 だって自分でもよく分からない。どうして、あんなに嫌っていたハイグレポーズをしただけで、
「ん、あぁっ……」
 あたしはこんなに気持ちよくなっちゃっているんだろう。そんな自分が情けなくてたまらない……のに。
「那穂ちゃん?」
「――っ!?」
 気付くとあたしは、震える両腕をまた下ろしていたのだった。
「ち、違っ、これは――」
 慌てて直立姿勢に戻って首を振るあたし。こんなのは何かの間違いだと、三人にも、自分自身に対しても主張しようとする。
 だけどそれは、るるたちの言葉に遮られた。
「大丈夫だよ那穂ちゃん。だってみんなおんなじなんだから」
「初めは戸惑うかもだけど、那穂、自分に正直になって」
「じぶん、に?」
 駄々をこねる子供を宥めるように優しく、夕日が問いかけてくる。その声を聞くと、嘘をつこうとする思いが不思議と消えていってしまった。
「そう。さっきハイグレしたとき、どう思った?」
「……きもちよかった」
「だから那穂は、もう一度ハイグレしたいと思って、腕を下げた。だよね?」
「多分……そう」
「でも那穂だけ二度目するなんて、ちょっとズルイよ」
「ご、ごめん」
「じゃあさ、次はみんなで、ずっとしよ?」
 その夕日の提案に、あたしの心は弾んだ。今度はもっと一緒にハイグレ出来るんだ。
「うん……!」
 あたしの身体を包むハイグレが疼く。そして三人の目を順に見て、やっと理解することができた。
 やっぱりあたしはハイグレ人間なんだ、ってこと。過去の思いは過去のもの。今のあたしはみんなと同じ、ハイグレポーズで気持ちよくなるハイグレ人間だ。
 こうして認めてしまえば、肩の荷もすぅっと降りていく。もう自分が何者かなんて悩まないで済むから。あたしの存在は、この青いハイグレがいつでも教えてくれる。
「那穂ちゃん、嬉しそうっ」
「え?」
 るるに指摘され自分の頬を触ってみて、いつの間にかそれがだらしなく緩んでいることに気付いた。
「ハイグレしようって言われて笑うなんて、私と同じだね?」
 そう、小首を傾げるるるも、ふにゃっとした笑顔をしているのだった。
「かもね。……ううん」
 あたしはいつものように同意したけれど、すぐに言い直す。この同意はそんなに曖昧なものじゃないと思うから。
「――そう、だね」
 その後、やり取りを黙って見守っていた一条くんが「話は終わった?」と尋ねてきた。
「早くハイグレしようぜ。オレ、待ちくたびれたんだけど」
「一条くんは一人でハイグレしてればいいんじゃない? さっきまでしてたでしょ」
「また一人でかよ!?」
 ようやく調子の戻ってきたあたしがそう言い返すと、一条くんは背景に『ガーン』の文字が浮かんでいそうな表情で大げさに仰け反った。その様子に女子三人は思わず吹き出してしまう。
「那穂節、復活かな?」
「ハイグレ人間でも人間でも、あたしはあたしだからね」
 この心と身体でものを考えているのは、今も昔も田中那穂。ただの人間じゃなくなった今でも、それは変わらないから。
 すると、笑いの余韻が残っているうちに体勢を取り戻した一条くんがこう言い返してきた。
「そりゃ一人でもハイグレは出来るけどさ、一緒にする奴は多いほうが楽しいぜ? いいのかよ、一人減っても」
 だからあたしは少し考えてから頭を下げて上目遣いをして、
「……すいません、確かにそうかもです。やっぱり一緒にハイグレしてください、一条センパイ」
「お、おう……言われなくてもそうするつもり、だったけどさ……」
 と、突然敬語を使われたことでタジタジに戸惑う一条くん。両隣の二人の笑い声を再度聞きながら、あたしは思う。やっぱりあたしはこのポジションが一番落ち着く。あたしの性格を受け入れてくれるみんなに囲まれて、思ったことを口にできるここが。
 みんなのことが一層好きになったと同時に、あたし自身にもちょっとだけ自信が持てた気がした。
 そして再びアイコンタクトが始まる。今度こそはあたしもみんなと同じ笑顔で足を開けた。
 ――もう、あたしは迷わない。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
「はいぐれっ! はいぐれっ! はいぐれっ!」
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
 素直な気持ちで四人一緒に声と動きを揃えてするハイグレは、いつまでもこうしていたいと思わせるには十分すぎるほど、心地よかった。ハイグレポーズを一度するたびに、ハイグレ人間になって良かった、としみじみ感じる。
 みんなとハイグレができて、本当に嬉しい……!
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
 だけど、同時に『まだ足りない、もっと気持ちよくなりたい』という欲求も浮かんでくる。そのときに「ああ、だからか」と心の中で一つ腑に落ちることがあった。
 一条くんも言っていた。『一緒にする奴は多いほうが楽しい』――ハイグレは、大人数でやるほど高まるもの。だからハイグレ人間は、仲間を増やす。「君にもハイグレの良さを知ってほしい」という建前で、「自分がもっと気持ちよくなりたい」という本音のために。もちろん、建前自体も嘘じゃない。だけど結局本音は自分のためなんだ。
 まあ、真実を知って失望したかと言うと、全くそんなことはない。だってその思いは、現に今あたしが抱いてしまっているんだから。
 それに元々あたしには自己中なところがあるし、そういう意味ではハイグレ人間の考え方はあたしにぴったりだ。
 と、そんなことを考えていると、ハイグレポーズはクライマックスを迎えようとしていた。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!!」
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!!」
「はいぐれっ! はいぐれっ! はいぐれっ! はいぐれっ!!」
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!!」
 最後の一つを一際大きくし、四人はハイグレをピタリと止める。不思議と疲れはなく、代わりに充実感が身体に漲っている。本当に不思議だ。
 ……もっと大勢でハイグレしたい。
 その思いを、ハイグレ人間としては一番の後輩で、しかも散々抵抗し続けてしまったあたしが言い出すのは、どうしても憚られた。そんな都合のいいこと、流石にみんながいい顔をするはずがない。
 だけど、その鬱憤は表情に出てしまっていたのかもしれない。不意に顔を覗きこんできた夕日が、「ねぇ」と切り出した。
「もしかして那穂も、まだ足りない?」
 少し躊躇ってから、頷く。すると、思いもよらない返事が口々に飛び出した。
「実はわたしもなんだ。四人でも最初よりはすごく気持ちいいけど、それならもっと増えたらどうなるんだろう、って考えちゃって」
「あ、それオレも思った。いっそクラス全員で出来たらいいんだけどさ」
「わ、私も。でも、ハイグレは私たちの分で全部……だよね」
 眉をハの字にしたるるが向いた方を、一斉に向く。床に放置された玉手箱の中に、もうハイグレはない。
「仕方ねぇ。オレらのハイグレ、脱ぐか?」
「ふぇぇ!? 私、そんなのイヤだよ……恥ずかしいもん……」
 一条くんは肩紐に手を掛け、るるは自分の胸をぎゅっと隠した。
「誰もるるのハイグレ脱がそうなんて思ってないってば。それに一条くんだって本当は脱ぐの嫌なんでしょ。手、止まってる」
 あたしが言ったことで、二人は息を吐いて普通の体勢に戻す。それを確認して、次に夕日に問うた。
「ところで夕日。あの箱の中の銃は何なの?」
 夕日は箱に近づき、銃の一つを手に取った。引き金を引かないようにしながら、全体を眺めている。遠目に見た感じは実弾が出そうには思えない。
「ハイグレと一緒に入ってたんだけど、正直よく分かんないんだ。撃つのもちょっと気が引けて」
「一度くらい試し撃ちしてみろよ、天井とかにさ」
「わ、分かった」
 頷き、おっかなびっくり銃を掲げる。そんな夕日の格好は、まるで運動会でよく見る音の出るピストルを構えているようだった。
 そして目をつぶってトリガーを引いた瞬間、甲高い音とともに銃口からピンク色の光が一直線に発射された。眩しい光はすぐさま天井に当たると弾けて消えて、結局命中した部分には何の変化も見られなかった。
「……何も起きないね」
「でも変な光出たよ?」
 確かにさっきのは、アニメかCG映画で見るようなビームのようだった。でも、それなら天井が溶けるとかあるんじゃないかと思う。
 現実にはあり得ないという考えを抜きにして考えるとすると、アニメによくあるビームで、熱で破壊したりショックさせたりする攻撃系以外だと……変化、とか? 物体を何かに変える力、人間や動植物を何かに変身させる力。
 ――そうだ。この銃はそもそもハイグレと同じ箱に入っていたんだから、ハイグレに関係がある可能性が高いはず。それなら、もしかして。
 あたしは、「天井の次は人を撃ってみようぜ。東郷とか」「こ、こっち向けないで夕日ちゃぁん!」なんてやって遊んでいる三人に、一つの可能性を呟いてみた。
「撃たれた人間を、ハイグレ人間に変える力……とか。あ、いや、何となくそう思っただけだけど」
 キラキラ輝いた六つの瞳を向けられて慌ててただの妄想だと付け加えたものの、三人は後半部を全く耳に入れてくれてはいなかった。
「なるほど! 那穂頭いい!」
「だからその箱に入ってたんだね!」
「すげぇな! 早速晴馬たち三人、撃ちに行こうぜ!」
「ちょ、みんなまだそうと決まったわけじゃ――」
 早とちりするハイグレ姿の三人はもう一つの銃も持ち去って、弾丸のように更衣室を飛び出して行ってしまった。好奇心が強いというか欲望に忠実というか……もし違ったらどうする気なんだろう。呆れるあたしだけが、一人残された。
「もう……っ」
 溜息をついたあたしは、ふと心の乾きに気が付いた。そして次の瞬間には衝動的に、
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
 ハイグレをしていた。これじゃあたしも人のこと言えない。結局、四人ともハイグレ人間だから仕方ない、か。
 それに……やっぱり一人のハイグレより、みんなでやった方が気持ちいい。その虚しさは、実際にしてみてやっと分かった。
 だからあたしも夢中で三人の後を追った。予想が違った場合のことやリスクなんて、気にするだけ無駄だ。
 とにかく今は、あの銃がハイグレ人間に変身させる銃だったときのことしか頭に浮かばなかった。凪沙たちを含めて七人でハイグレ。クラス全員でハイグレ。考えるだけで心が踊る。
 あたしは笑みを抑えることをしないで、ドアノブを捻った。

   *その3に続く*


~更衣室の様子~
小学校_a更衣室_水着
ショタなんか要らん派の方向け
背景素材・消失点様 (c)安野譲
人物素材・キャラクターなんとか機様/キャラクターなんとか機 追加パーツ保管庫様/Cha.Pa.
 また、ハイグレはハイグレスレ用4のキャラクターなんとか機用ハイグレ.zipを元に改変させていただきました(詳細は後述)



自分でも分からないのですが、一人称だとどうしても細っっっかく書きたくなってしまうのでしょうか、今更新も「変わりゆく~」と同等の文量となってしまいました。決して「一人称は書きやすくて筆が乗る」ってわけではないのですが。
これほど一人ひとりをじっくりコトコト料理していると、あっさりとジェノサイドされる系ハイグレ小説が好きな方には申し訳ないなと思ってしまいます。テンポの良いジェノサイド系は自分も大好物ですが、いざ書くとなるといつの間にか味付けが濃くなってしまって……
前回も書きましたが「小学生~」だって当初はここまでするつもりはなかったんですよ、ええ。

じゃあ今回も即興IFをば。今度はほぼSS式にしときます。(IFスキップはこちらをクリック
【もしもるると那穂が同時にハイグレを着せられて、那穂が先に堕ちたら】

   *

陸斗「田中、お前……ハイグレをバカにすんのか!? だったらお前も着ろ! そしたら分かるぜ、ハイグレの素晴らしさが!」
那穂「……お断りします」
陸斗「いいや許さない。田中が断っても、無理にでも着せてやるからな」
夕日「ねえ陸斗くん。どうせなら一緒にるるにも着てもらおうよ」
るる「ふぇぇ!?」
陸斗「それもそうだな。じゃあ東郷の方は夕日に任せるわ」ニヤリ
夕日「うん、分かった」
那穂「で、一条くんはあたしの担当と。折角ならるるの方が男の子としてはいいんじゃない? それともこういうのがお好みだったりする?」
るる「な、那穂ちゃん……///」
陸斗「バカ言え。ハイグレ着てない奴なんか興味もねぇよ。――ほら、自分で脱がないなら脱がすぞ」
那穂「どっちがバカなことを――ぅあっ! うぅ……」グイッ
夕日「るるも、そんな邪魔な水着は脱いじゃおうね」
るる「きゃあっ! 夕日ちゃん、やめ……ひゃぁっ!?」グイックルクル
 徐々にスクール水着を脱がされて裸に近づいていく二人。悲鳴も抵抗もだんだんと小さくなっていき、遂には全裸にされてしまう。
那穂「く……」
るる「はぅ……」
陸斗「それじゃ、これからハイグレ人間になってもらうぜ」
夕日「裸は恥ずかしいもんね。早くハイグレ着せてあげるよ」
那穂「た、助け――んぃっ!? はぁっ、うぁ!」グイグイッ
るる「お願い、やめて――あぁぁんっ!」グイグイッ
 ハイグレの感触に快感を覚えると同時に、そのこと自体に恐怖する二人。しかしいくら泣き叫んでも、ハイグレを着せられることを阻止することはできなかった。
那穂「うぅ……やめて一条くんっ! あんなのいやぁ! っ、あぁぁ、う――ああああああああああああああああ!」
るる「き、きゃああああああああああッ! あぅっ、ひぁ! んっ、あんっ! あぁっ……」
夕日「さあ二人とも、立って。ハイグレを着たからには、ハイグレしなきゃだよ?」
陸斗「まあ初めてのハイグレで戸惑うのも分かるけどな。やればハイグレがどんだけ素晴らしいか分かるからな」
那穂「どうして、こんなの……!」
るる「み、見ないでぇ……恥ずかしいよぅ……んぁっ」
夕日「でも、気持ちいいでしょ? ハイグレしたらもっと気持ちいいよ!」
那穂「だ、誰がそんな、変態みたいなことを……あんっ!」
陸斗「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ最高っ!」
夕日「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! 那穂とるるも、一緒にハイグレしよ?」
 ハイグレ人間たちの恍惚のハイグレを目の前にして、自分の身体がうずうずしてくるのが分かる二人。抵抗はしばらく続いたが、やがて那穂がのそりと立ち上がる。
るる「那穂ちゃん、ど、どうしたの……?」
那穂「ゴメンるる……あたし、も……限界……!」
るる「何言ってるの、やめて! そのポーズは!」
那穂「んぁ、は、ハイグレ……ハイグレ……ハイグレッ! ハイグレッ!」
るる「那穂ちゃんっ! あぁぁぁぁ!」
 ハイグレの欲求に耐えられなくなった那穂が、初めは弱々しく、しかし慣れてくるとキビキビとした動きでハイグレポーズをとりだした。夕日と陸斗は笑みを浮かべる。唯一の味方を失ってパニックを起こするる。そんなるるの耳に、すぐにこんな声が飛び込んだ。
那穂「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! き、気持ちいい……こんなの嫌がってたなんて、バカはあたしだった……」
るる「そんな……嘘、だよね、那穂ちゃん? ハイグレ人間になんて、なってないよね……?」
那穂「ハイグレッ! 今のあたしはハイグレ人間。ハイグレを嫌がってた頃のあたしとは違う。ハイグレッ!」
るる「イヤ……もうこんなの、イヤだよぉ……」
陸斗「何がイヤだって? ハイグレ着たらハイグレするのが当たり前だろ。ハイグレ! ハイグレ!」
夕日「わたしたちみんなハイグレ人間なんだよ? だから恥ずかしくないよ。怖くないよ。ハイグレ!」
那穂「ハイグレッ! ハイグレッ! るる、早くハイグレを受け入れなよ。我慢しても辛いだけ」
るる「みんなが何言ってるのか、分からないよ……っ!」
夕日「一度ハイグレすれば、全部分かるよ」
るる「イ、イヤ、したくないっ!」
那穂「したくないなら――させたげる」
 局部を両腕で隠しながら後退する、ハイグレ姿のるるの更に背後に那穂は素早く回りこみ、その手首を掴んだ。腕がどかされ、隠していた部分が露わになる。と言ってもハイレグの生地でしかないが、るるが限界まで赤面するには充分であった。
るる「ひゃ!? 那穂ちゃ、やめっ、あぁっ……!///」
那穂「こうでもしないよハイグレしないくせに。はいもうちょっと我慢」
るる「み、見ないで一条くん、夕日ちゃん……///」
陸斗「だからそんなとこ見ないって、何度も言わすな」
夕日「るる、ハイグレ姿とっても似合ってるよ?」
るる「似合ってる……ほ、ほんとに……?」
那穂「力が抜けた――今だ! ハイグレ!」
るる「い――いやああぁぁぁっ!」
 その隙を那穂に突かれ、無理矢理ハイグレポーズを取らされてしまったるるは、初めてのハイグレのショックに打ち震える。
るる「あふ……んっ……あぁっ///」
那穂「もう一回やってみよっか?」
るる「ふあああああッ! な、那穂、ちゃ……」
那穂「何?」
るる「きもちい……も、いっかい……!///」
 るるは最早嫌悪感など忘れて完全に快感に呑み込まれて蕩けた顔でねだったが、しかし那穂は手を放した。
那穂「自分でやってこそ本当のハイグレ。さあ、るる」
るる「う、うん! はいぐれっ! はいぐれっ! んうぅ……はいぐれっ!」
夕日「これでやっとるるも仲間だね!」
 るるも那穂も、もう夕日と陸斗とハイグレを揃えることに躊躇いはしなかった。
るる「はいぐれっ! はいぐれっ! はいぐれっ!」
那穂「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
陸斗「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
夕日「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」

   *

てな感じで。
今回本編で陸斗くんの影が薄いのは仕様です。いくら彼がハイグレ人間とはいえ女の子をひん剥く描写をマジマジ書くのはちょっと気が引けて、こんな扱いにしてしまいました。代わりにIFではやったりましたが。
でも、前からやってみたかった「嫌がる子に光線無しで無理矢理ハイグレを着せるシチュ」が書けて個人的には満足です。補完もIFで出来ましたし。
「小学生~」はこのペースならその4で9人全員がハイグレ化するでしょう。ただ、ここから先は光線銃を使うので洗脳活動が高速化して、その3で終わる可能性もあります。逆に、洗脳銃+一人称の前例である「変わりゆく~」と同じように長文化する事態も否めませんが……まあそのときに考えましょうか。


今回の挿絵&人物素材について(主にキャラクターなんとか機持ちの方向け)。
これまでキャラクターなんとか機を使ったキャラ絵の素材は、先程のリンク先での拾い物そのものかそうでなければ名前、縮尺の変更やピクセル移動程度の改変しか加えていませんでした。
しかし先程の絵を見てもらえれば分かる通り――陸斗についてますね、ふぐり。
「ま、まあこのくらいマウスでも書けるやろ」ということで、ちょちょいと数時間かけて生やしました。やっぱり慣れないことはするもんじゃないね。それに出来も試行錯誤の痕のせいで酷いし、直し方も分からんし。
そもそも男の子三人とるるについてはなんとか機付属の"default"ではなく、デフォルトを男の子用に改変したバージョンである柚木様作成の"defaultx"を使っていました(ちなみにdefault用パーツのdefaultx用への改造は、体パーツなら105%に拡大して10ピクセル上へ移動、頭パーツは大きさそのままで13ピクセル上へ移動が具合が良かったです。例えば男子海パンは短パン1(服)というアクセサリーを拡大移動したものを使っています)。
そして使い初めに書いた通り「転校生~」の時からキャラクターなんとか機用ハイグレの色可変版を使っています。ハイグレ(青)の色みを雑に調節してリネームしたものです。
で、折角なので需要があるか分かりませんが、これらなんとか機用ハイグレを元に作った改変パーツを配布させていただきます。
内容はただの色可変版である"ハイグレ(色)"と、ふぐり付きの"ハイグレx(色)"がdefault用、defaultx用にそれぞれ2枚ずつ、となっています。他のパーツを導入するのと同様にして導入してください。
但し、元のなんとか機用ハイグレのファイルの中にはreadmeに当たる文書が入っていませんでした。なので改変・再配布の是非はおろか作者様の名前や連絡先も分かりません。
これらのパーツを利用する際には、上記のように「元作者様の不明なパーツを香取犬が無断で改変・配布している」という事情を踏まえた上でお使いください。また、アップローダーからファイルが削除された時点で、パーツの利用全般をお控えいただくよう、よろしくお願いします。
作者様につきましては無断の改変配布ということで心苦しい限りなのですが、「ハイグレ及びキャラクターなんとか機での創作活動の幅を広げるため」ということで何卒お許しいただければと思います。もし公開差し止めの要請がありましたらなるべく迅速に対応致しますので、メールにてご連絡ください。
 →キャラクターなんとか機用ハイグレ(色可変&男女用同梱).zipのダウンロードはこちら
 (パスワードはいつものです)
  試しにDLしてみたところ、ファイル名が"&"の前で切れてしまっていて、拡張子の無いファイルの状態になってしまっていました。このままでは解凍ができませんので、同様の状態になった場合はお手数ですがDL後、ファイル名の末尾に".zip"と書き加えるようお願いします。そうすることでzipファイルの解凍ソフトで解凍出来るようになります。

ふぐりの付いたハイグレをどう使うのかはご自分でお考えください。男の子に使うのが本来の仕様ですが、折角女の子素体用があるんだからふt(自主規制)

話題をハイグレパーツから絵そのものに移します。
フリー素材やなんとか機で作成している絵は、全てイメージです。本文中の描写と食い違っている、かけ離れている絵があった場合、作者の脳内での設定である本文の描写を正しいものとします。
要するにですね、なんとか機のデフォルトの女の子素体がつるぺたなだけで、るるはきょぬーです。東郷るるは年齢に見合わぬきょぬーの持ち主です。大事なことなので二回言いました。
自分にスク水やハイグレの胸を盛る技術があればそうしていますが、そうもいかないのでこれで妥協よしとしているだけですので、そこのところよろしくお願いします。
るるに限らず、「小学生~」の中でなら他にも「更衣室に窓」だとか「プール等は屋上」といった点で背景素材様とは相違していますので、お間違えのなきよう。間違えてどうなるのかというのはともかく。

あ、それとは別ですがプロのハイグレ教徒ならお気づきかと思いますが、夕日から那穂までの四人のハイグレの色は原作映画リスペクトです。上のイメージ絵もあの並び順を意識してみました。
多分残りの五人の色も映画に揃えると思います。


それではこれで今回の更新は終了とします。
そして前回お伝えした通り、一身上の都合により今後2~3週間(予定)はハイグレ小説の執筆をストップさせていただきますのでご了承ください。
ブログ、メール、掲示板等のチェックはなるべくしますが、対応が遅くなったら申し訳ありません。
とりあえず用事が済んだら適当に記事を更新しますね。

ではまたー

……「一日一日迫りくる〆切」ほど怖いものって、世の中にはそう多くないと思うんだ。
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遂に自らハイグレ小説を書くようになってしまいました
いつでもネタ募集中です
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 →変わりゆく若人たち
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