【リク】転校生はハイグレ戦士 Scene2-1:友達
週末は終わってるけど気にしない気にしない。
さて、今回は表題の通り「転校生」の続きなのですが……ん? Scene2-1?
えっとですね、Scene2は学校編です。本当ならそれを全部書ききってから更新したほうが良いのでしょうが、ずっと待たせ続けるのも良くないと思うので分割して逐次更新していくことにします。
というのはただの言い訳で、実際はこのところ忙しかったりで調子が乗らず(本編の真ん中辺り特に疲れてます)長々と書くことが出来なかっただけです。
まあその……謝罪の続きはあとがきで。
邂逅から一夜明け、桜はいつもどおりに家を出た。唯一異なるのは、制服の下にあのハイレグ水着を着込んでいること。
「ん……」
ハイグレは一歩ごとに擦れ、隠されて尚存在を主張する。今はサマーベストの下のワイシャツの下の白のTシャツの更にその下に、薄ピンクの生地は隠されている。ただでさえ服を着ていて暑いのに、人間にバレてしまってはいけないので三重の隠蔽を行っていた。本当は、このように江戸時代の切支丹が如くこそこそとしているのは不本意なのだ。早く町中をハイグレで埋め尽くし、ハイグレ魔王さまのお役に立ちたい。桜の心はそればかりであった。
朝の気温と歩行の熱に、肌はじっとりと汗ばんでいく。水分を吸収したハイグレはより桜の身体に張り付いて、快と不快を同時に感じさせる。学校へ行くためにも、とりあえず南駅行きの電車に乗らねば。しかし、その混雑ぶりを思うとどうしてもげんなりしてしまう。
この町の住民にとって、電車はバスと並んで重要な足である。おおよそ町の北側は住宅地、南側は商業地や公共施設という配置になっており、鉄道がそれらを繋いでくれているのだ。ちなみに桜の越してきたこの都市は三方を山に、東を海に囲まれている。海沿いに隣町へと続く鉄道が一本、始発駅を含め駅は二つ。南と西の山にはそれぞれ一つだけトンネルが開いており、これら三つを除けば峻険な山々を越えるしか外界との接点はない。
桜に与えられた最初の任務は、この街にいるはずのハイグレ人間を探すこと。しかし、ただ闇雲に探して回っても見つかるはずはない。かと言っておおっぴらに「来たれ!」と喧伝するわけにもいかない。満員電車で押しつぶされながら、早くも桜は同胞を探し当てることを諦めてしまう。
だったら、と桜はもう一つの考えの方を思いだす。
――アナタの手でハイグレ人間にしてあげても構わないわ。
魔王は確かにそう言った。だけど、
……どうやってハイグレ人間にするんだろう?
南駅で電車を降り、同じ学校へ向かう生徒の列の中、桜はそう疑問を抱く。すると、その手の鞄がぼうっと熱を帯びたのを感じた。
「え……!?」
見れば、何の変哲もない手提げ鞄がハイグレ光線と同じピンク色に輝いているではないか。桜は慌ててそれを抱きかかえる。後ろの人に奇妙がられていたらマズい。恐る恐る振り向くと、二人の女子生徒は周囲も気にせず夢中で談笑しているようだった。
胸をなでおろす桜。鞄は今はもう通常通りに戻っている。この現象に思い当たることがあるとしたら、それは自分がハイグレ戦士となったということだ。もしそのことによって身体からハイグレ光線が出るようになっているとすれば、説明がつく気がする。
やがて、教室にたどり着く。桜が来ても、誰も一瞥以上の視線すらくれない。それはそうだ。つまらない転校生よりも、気心の知れた仲間たちと話していたほうが楽しいに決まっているのだから。
……でも、おしゃべりなんかよりももっと楽しいことがあるんだけどね。
この人たちはハイグレのことを知らない。自分はそれを知っている。一頻り優越感に浸ったところでふと、思いついた。
……学校の生徒達を、ハイグレ人間にすれば……!
学校という場所は閉鎖的だ。そこで過ごす千人近くの生徒たちは、基本的に自宅と塾などくらいしか移動範囲がない。しかも学校内の出来事が外部に漏れる可能性も高くはない。そして自分はそこに属している。つまるところ、ハイグレ人間化のターゲットとしては最適なのである。全校生徒千人分のハイグレパワーが集まれば、きっと侵攻作戦は第二フェイズまで進むだろう。
桜の脳内で未来のビジョンが固まっていく。あの人もこの人もハイグレ人間になって、そこら中でハイグレポーズを繰り返す。思い描く光景は夢のようで、夢物語ではないのだ。
「ふふふ、楽しいだろうなぁ……!」
「――鈴村さん、おはよう」
トリップしていた桜の背中に、突然挨拶の言葉が突き刺さる。パニックに陥り硬直する桜の反応を見て、声の主は前に回りこんで言った。
「あ、ごめんねいきなり。驚かせるつもりはなかったの」
「こっ、こっちこそごめんなさい! えっと……」
必死で謝る桜の心には不安――呟きが聴かれてなかっただろうかとか、聴かれていたら変人のように思われていないだろうかとか――が渦巻いていたが、それに反して眼前の彼女はにこりと微笑んでいた。メガネの奥のおっとりとした瞳は、桜を親愛の情を込めて見つめている。
……後ろの席の人だよね。
しかし、これまでまともな会話をしたことはない相手だ。せいぜいが転校初日の帰りに「また明日ね」と声を掛けられた程度。正直に言って、桜は彼女の名さえ覚えていなかった。故にここで言葉が詰まってしまう。
そんな桜の様子に合点がいった彼女は嫌な顔ひとつせず、
「瀬野雫だよー」
と名乗った。
「瀬野、さん。あの、ごめんなさい、名前もまだ覚えてなくて……」
「ううん、気にしないで。転校してきたばかりでそれどころじゃないよね」
更に気を遣われて余計に申し訳なくなる桜。
これまでの二週間、桜は全く友達を作る努力をしなかったわけではなかった。挨拶しようとしたり、プリント配布のついでに話しかけようとしたりはしていた。しかし迷惑がられないかだろうかと思うと一歩を踏み出せなかった。以前出来たことが出来ないのは、自分で自分を転校生であるという壁を作ってしまっていたからだ。
本当は誰かと友達になりたかった。他愛無い話をしたかった。それが果たせないならいっそ開き直ってしまおうかと、最近は思っていた。
でも今日、こっちで初めてまともに会話ができた。なんだか懐かしい気持ちがした。
そこまで考えて、一つの疑問が生じる。口に出してしまっては雫に失礼極まりないので心の中に留めておくが。
……どうして瀬野さんは今日に限って挨拶をしてきたんだろう。
その答えは、直後に彼女が話してくれた。
「あのね、今日はわたしたちが日直なんだよ。もしかして鈴村さん、知らないかなと思って」
「え? ……あ」
慌てて黒板の右端を見ると、そこには確かに『日直:鈴村 瀬野』の文字があった。席順もそうだが、日直当番も名前順なのか、と桜は初めて気づいた。
「そういうことだから今日一日、よろしくね。仕事のやり方とかは教えてあげるから」
「う、うん。よろしくお願いします」
顔を伏せるようにお辞儀した桜に、雫は少し困ったように声をかける。
「あの、もし話すの嫌だったら、言ってくれていいからね。突然馴れ馴れしくしちゃったわたしがわる――」
「――そんなことない! 嬉しいよ!」
直球で言ってしまった。桜は慌てて取り繕う。
「あ、いやその、日直ってことを教えてくれたことがありがたいっていうか」
それを阻むように、雫は安堵の声を出した。
「良かったぁ。嫌われてるわけじゃなかったんだね。わたし、ずっと鈴村さんと話がしたかったの」
「そう……なの?」
雫が、二つ結びの髪を揺らして頷く。
「うん。前の席だし、本当は話しかけようと思えばいつでも出来たけど、何だか鈴村さん、いつも緊張っていうかそわそわしてて、ちょっと声掛けづらかったんだよね。でも今日は一緒に日直だから、丁度いいかなって思って」
声掛けづらかった、などという言葉をサラリと口にしてしまう点に少し驚く。しかし、桜の中での雫の印象は寧ろ好転した。隠し事せず素直に話してくれる相手には、こちらからも心を開きたくなるものだ。
「確かに私、ずっと緊張してた。自分から話しかけるの躊躇しちゃって、ずっと一人で。だから――ありがと、瀬野さん。良かったら今日だけじゃなく、これからも話したいなって」
すると彼女は一層笑顔になって、
「もちろん! だってもう友達でしょ?」
その有無を言わせぬ決め付けが、桜にはとても心地良かった。
「――うん!」
それから桜は、久しぶりの友達との会話を楽しんだ。互いのこと、学校のこと、色々話した。大人しそうな外見の割に雫は人懐っこく、話していて飽きなかった。
数分が経って、ふと廊下から別の話し声が耳に入ってきた。
「ええ? それマジ?」
「嘘じゃないってば。あたし見たもん」
「しかもここの制服だったんでしょ? そんな変人がすぐ近くにいるかもってことかぁ」
“変人”に心当たりのある桜は思わず意識を集中させてしまう。喋っていた女子二人のうち一人は、この教室に入ってきた。別の女子が話しかける。
「ねえ沙羅、さっきは何の話をしていたのかしら?」
沙羅と呼ばれたポニーテールの女子が、薄ら笑いをしつつ返答する。
「ああ、千種。いやね、隣のクラスの美智留が昨日、北町商店街の方で変な女子生徒を見かけたらしいんだ」
一息入れて、
「その子、駄菓子屋の中で――コマネチしてたんだって」
刹那、教室内の空気がピシリと音を立てた。
「……っ!」
窓際の席から会話する彼女たちを鋭い眼光で見つめる女子がいる。
また、千種は薄く垂れた目を限界まで開いて沙羅に食いつく。
「一体どういうこと? その子について詳しく教えてもらえないかしらっ?」
そして桜は、
「……あれ? ねえ鈴村さん、どうしたの?」
雫に呼びかけられても返事ができないくらい、動揺していた。
……間違いない。今の話、絶対に私のことだ! あの時逃げてったのは隣のクラスの子だったんだ。
何をするべきか。口封じ? けれど自分はその人の顔も分からない。恐らく自分のことをその人は知らないのだろうが、顔を見られたら特定されてしまう危険性もある。うかつに探しに行くことも出来ない。
そのようにぐるぐると考えを巡らせるが、答えは出なかった。
「おーいっ、大丈夫?」
「――あ、う、うん」
二度目で桜はようやく思考の海から帰還する。
雫はそのことを気にする様子もなく、率直な感想を漏らす。
「コマネチってあれだよね、両手をクイッてやるやつ。そんなのやってる女の子って、なんかちょっと――面白いね」
「面白い?」
ハイグレ人間である桜は当然、ハイグレを素晴らしい行為、神聖な行為と思っている。また、ただの人間はハイグレを嫌がるだろうという想像も出来るし、だからこそその先にあるハイグレの素晴らしさを教えてあげたいとも思う。しかし目の前の少女はどうだ。まさか「面白い」などと言うなんて、考えてもみなかった。
「うん。わたしね、テレビで初めてあれ見たとき、笑っちゃったの。それを女の子がやってたら、また笑っちゃうかも」
なんだそういうことか、と思いつつ、
「じゃあ、もし瀬野さんがやれって言われたら、出来る?」
すると雫は一頻り悩んで、こう口にした。
「うーん。わたし一人じゃ流石に恥ずかしいよ。でも、一緒にやってくれる人がいるならやってみてもいいかなぁ、なんてね」
半ば冗談めかした言い方だったが、桜の脳裏にもしやという言葉が浮かんできた。
……単なる勘だけど瀬野さん、ハイグレ人間の素質があるかも知れない……!
桜が瞳の奥に妖しげな光を宿しているのと丁度同じ頃に、千種の沙羅に対する追求はやっと終わったようだった。貴重な情報ありがとう、と礼をした千種は近くにいた女子となにやら目配せをし、席に戻っていった。沙羅の方は不思議がっていたが、追求はしなかった。いつの間にか窓際の女子も視線を外している。
「何の話だったんだろうね」
雫が言い、桜はそうだねと頷いた。
「さっきの人たちは?」
「えっとね、話しかけてた方の髪の長いのが千石千種さん。最近、おうちで“お茶会”をやってるんだって」
「お茶会?」
「実は千石さんの家はすごいお金持ちなの。で、隣にいた保倉文さんの一家はその執事をしていて、保倉さんは千石さんの幼なじみで世話係でもあるんだって。千石さんは夏休み明けから、時々“お茶会”を開いてるらしいの。そこには保倉さんと、千石さんにお呼ばれされた誰かだけしか入れない。帰ってきた子に話を聞いても、どんなことがあったかは口止めされてて教えてくれないんだ。きっと優雅に紅茶を飲みながら豪華なお菓子を食べるんだよ。いいなぁ……」
言葉の最後の方はうっとりとした感じになっていた。少なくとも、雫が羨ましがっているのがお茶会への招待というよりは振る舞われる茶や菓子であることだけは、桜にも理解できた。
「――おはよー雫」
そこにやって来たのは、件の千種の話し相手であった。雫は振り向き、小さく手を振る。
「沙羅ちゃん、おはよう」
「おお、やっと転校生と話せたん?」
チラリと猫のような目が桜を向き、反射的に顔を背けてしまう。
対して雫は嬉しそうに答えた。
「うん! わたしたち、もう友達になったんだよ。ね?」
「あ、えっと、そう、だね」
困惑する桜の様子を見て、沙羅は「はははっ」と笑った。
「転校生も早速、雫節の餌食かぁ。ま、ちょうどいい機会だし、被害者同士仲良くしよーよ。アタシは間室沙羅、よろしくっ」
ちょっとヒドいよー、という雫の抗議を無視して、沙羅は桜の視界に入るように手を差し伸べた。桜はそれを、はにかみながら掴んだ。
「す、鈴村桜です」
ポニーテールを高い位置でリボンで括る彼女、沙羅は雫の親友でストッパー役なのだという。
「雫ってこの見た目でこんなんだからさ、なんか目が離せなくってさ」
「あ、なんか分かる気がする」
「桜ちゃんまでそんなこと言うの!?」
「はいはい大人しくしようねー」
腕を振って迫る雫を沙羅が後ろから抑えこむ。それに桜は思わず笑ってしまうと同時に、一つのことに気づいて驚いた。
「今、私のこと……」
名前で呼ばれたのだ。それに雫は慌てて謝った。
「ご、ごめんね鈴村さんっ。沙羅ちゃんを呼ぶのと同じ感じでつい……」
確かに突然で驚きはしたけれど、全然不快ではなかった、と桜は思う。
だから仕返しとばかりに、こう言うのだった。
「別にいいよ――雫。……で、いいのかな」
言い切ってから少し恥ずかしくなって顔を掻く。目だけを前に向けると、雫は比喩でないくらいに笑顔を輝かせていた。
「うんっ! 改めてよろしくね、桜ちゃん!」
「じゃあアタシのことも沙羅でいいよ。アタシも桜って呼ばせてもらうけど、いい?」
「分かった。よろしく、沙羅」
下の名前で呼び合うと、何だか一気に距離が縮まった気がした。
転校前に名前で呼び合った友達がいたかな、と桜は思い返す。しかし、すぐには思い当たらなかった。
……きっかけがあれば、こんなに簡単なことだったんだなぁ。
これまでの孤独な日々は何だったんだろう。こちらから話しかける勇気があれば、みんなきっと心を開いてくれただろうに。
しかし今更悔いても仕方ない。それに今、分かったではないか。今からでも遅くはないと。
……みんなと仲良く、なれるかな。
思った瞬間、ドクンと心臓が脈打った。
……みんなとハイグレ、できるかな。
「う、あぁ……!」
服の下のハイレグが、その存在を忘れるなと叫んでいるかのように、キツくキツく桜の体を締めあげた。特に脚ぐり、下腹部が熱く疼く。そのせいで桜は思わず腹を抱え、唸り声を漏らしてしまった。
……ハイグレがしたい、ハイグレがしたい、ハイグレ! ハイグレ!
脂汗を浮かべて机に突っ伏した桜を見て、雫と沙羅は焦り出す。
「大丈夫桜ちゃん!?」
「マズそうなら保健室連れてくか?」
そんなことをされたらハイレグがバレてしまう。桜は手の位置はそのままに立ち上がり、
「だ、大丈夫。ちょっとトイレ、行ってくる」
「あ。わたしも一緒に――」
「ううん、ごめんね」
雫の申し出は女子に特有のあの行動である。付き合いでトイレに来てくれては、流石に今回の場合は不都合だ。そう考えて桜は断った。
その時雫と沙羅を一瞥したのだが、桜の目には何故か彼女らが制服姿ではなく、ハイレグの水着姿に映った――そんな気がした。教室から出て行く際に確認したが、やはり見間違いだったようだ。
「あと十分くらいしか無いからねーっ」
水着の疼きを必死にこらえて、桜は一目散にトイレへ駆けた。
「おっきい方かな。それともおん――」
「あんま口に出すなよ……」
恥ずかしげもなく言う雫と呆れる沙羅を尻目に、一人の女子生徒が席を立った。
バタンと個室の扉を閉めたとき、桜の頬は真っ赤に燃え上がっていた。一刻も早くこんな服を脱ぎ捨てたい。焦れば焦るほど、ボタンやホックは指から滑る。
およそ一分をかけて薄ピンクのハイレグ水着一枚だけの姿になると、桜は心の奥から本当の自分が解放されたかのような爽快感を覚える。
……やっぱりハイグレ人間は、ハイグレ姿じゃなきゃ。
狭い個室で目いっぱいに脚を広げるため斜めに向き、両腕を引き下げたまさにその瞬間、隣の個室に誰かが入る音がした。バタン、ガチャ。これでは小声を出すことさえままならない。桜は涙目にならんばかりだった。
……ハイグレ、したいのにぃ……!
その欲求は頂点まで達していた。もう止めようがない。ならばと、
「……っ! ……っ! ハィ……ぇっ!」
桜は奥歯を強く噛み、ハイグレの単語を必死で押し殺してハイグレポーズを取った。
時間の許す限り、何度も何度もハイグレをした。
「……ぅぇっ! ハ……っ! ……!」
桜は思う。自由にハイグレが出来ない学校なんて、監獄も同然だ。今に全校生徒をハイグレ人間にして、いつでもどこでもハイグレを出来るようにしないと、と。
そのためにはまず。
……雫、あなたは私がハイグレ人間にしてあげる!
*Scene2-2:潜伏に続く*
*登場人物紹介・1*

旧・なんとか絵ver
鈴村桜

旧・なんとか絵ver
ハイグレ戦士・鈴村桜

瀬野雫

間室沙羅
Powered by キャラクターなんとか機
初回の「~若人たち」裏話記事の、「一更新一ハイグレ以上」の項の中で、毎回ハイグレさせるのが俺のジャスティス(意訳)と書きましたが、読んでもらえれば分かる通り今回は洗脳描写なしです! 申し訳ない!
代わりに宣言通り、なんとか機製のイメージ絵を上げましたのでご容赦下さい。
ハイグレ戦士コスチュームについて。
まずは素材の出処をば。
ピンクのハイレグはアップローダー・ハイグレスレ用4から頂いたハイグレを色替え可能にしたものを。
頬の赤星は参式氏の参式専用highgleアップローダー2内、矯正ハイグレ人間(ロリ).psdのフェイスペイントのレイヤーを抽出縮小してアクセサリー素材化させて頂きました。
その他パーツ(制服版含む)はキャラクターなんとか機 追加パーツ保管庫様からです。
……で、このコスなのですが、自分の記述したハイグレ戦士そのもの、というわけではありません。
あくまでも、拾い物の中でなるべく記述のイメージに近づけようとした結果です。
手袋はもうちょっと戦えそうなグローブがいいし、手首は出さないで欲しいし、腕カバーはタイツのようにピッタリしていて欲しいし、そいつとニーハイの縁には輪っかが欲しいところです。あ、あとハイグレストーンのネックレス。
ですが自分に出来るのは他人様の既存の絵や素材をちょこっと変更する程度です。ああ悔しい、誰か描いt(ry
キャラのイメージをなんとなく掴むのにお役立て下さい。キャラが増えれば(ハイグレ化すれば)、その都度追加していきます。
それとアクション仮面好き さん、(非公開)さん、コメントありがとうございます。
一応Side:LAB.は映画の外伝のつもりでしたので、結末は本編と同じにせねばと思っていたのですが……ご要望とあらば書くことも考えておきますね、ハイグレ勝利パターン。
(ほらやっぱりみんなハイグレ側に勝って欲しいんだ。物語のセオリーとしては人間側が勝たなきゃいけないのに、需要の問題でやっぱり全員洗脳エンドになりがちになってしまう。いやもちろん自分だって全滅は大好きな展開ですけれど。でも、いち物書きとしてはたまには人間が勝つ作品も作りたいなあ)
では今回はこれにて。
次は何か他のリクを消化しようかしら。
ああでも映画公開記念日に向けて作ったものがあったりなかったり。
木曜夜をお楽しみに!
さて、今回は表題の通り「転校生」の続きなのですが……ん? Scene2-1?
えっとですね、Scene2は学校編です。本当ならそれを全部書ききってから更新したほうが良いのでしょうが、ずっと待たせ続けるのも良くないと思うので分割して逐次更新していくことにします。
というのはただの言い訳で、実際はこのところ忙しかったりで調子が乗らず(本編の真ん中辺り特に疲れてます)長々と書くことが出来なかっただけです。
まあその……謝罪の続きはあとがきで。
邂逅から一夜明け、桜はいつもどおりに家を出た。唯一異なるのは、制服の下にあのハイレグ水着を着込んでいること。
「ん……」
ハイグレは一歩ごとに擦れ、隠されて尚存在を主張する。今はサマーベストの下のワイシャツの下の白のTシャツの更にその下に、薄ピンクの生地は隠されている。ただでさえ服を着ていて暑いのに、人間にバレてしまってはいけないので三重の隠蔽を行っていた。本当は、このように江戸時代の切支丹が如くこそこそとしているのは不本意なのだ。早く町中をハイグレで埋め尽くし、ハイグレ魔王さまのお役に立ちたい。桜の心はそればかりであった。
朝の気温と歩行の熱に、肌はじっとりと汗ばんでいく。水分を吸収したハイグレはより桜の身体に張り付いて、快と不快を同時に感じさせる。学校へ行くためにも、とりあえず南駅行きの電車に乗らねば。しかし、その混雑ぶりを思うとどうしてもげんなりしてしまう。
この町の住民にとって、電車はバスと並んで重要な足である。おおよそ町の北側は住宅地、南側は商業地や公共施設という配置になっており、鉄道がそれらを繋いでくれているのだ。ちなみに桜の越してきたこの都市は三方を山に、東を海に囲まれている。海沿いに隣町へと続く鉄道が一本、始発駅を含め駅は二つ。南と西の山にはそれぞれ一つだけトンネルが開いており、これら三つを除けば峻険な山々を越えるしか外界との接点はない。
桜に与えられた最初の任務は、この街にいるはずのハイグレ人間を探すこと。しかし、ただ闇雲に探して回っても見つかるはずはない。かと言っておおっぴらに「来たれ!」と喧伝するわけにもいかない。満員電車で押しつぶされながら、早くも桜は同胞を探し当てることを諦めてしまう。
だったら、と桜はもう一つの考えの方を思いだす。
――アナタの手でハイグレ人間にしてあげても構わないわ。
魔王は確かにそう言った。だけど、
……どうやってハイグレ人間にするんだろう?
南駅で電車を降り、同じ学校へ向かう生徒の列の中、桜はそう疑問を抱く。すると、その手の鞄がぼうっと熱を帯びたのを感じた。
「え……!?」
見れば、何の変哲もない手提げ鞄がハイグレ光線と同じピンク色に輝いているではないか。桜は慌ててそれを抱きかかえる。後ろの人に奇妙がられていたらマズい。恐る恐る振り向くと、二人の女子生徒は周囲も気にせず夢中で談笑しているようだった。
胸をなでおろす桜。鞄は今はもう通常通りに戻っている。この現象に思い当たることがあるとしたら、それは自分がハイグレ戦士となったということだ。もしそのことによって身体からハイグレ光線が出るようになっているとすれば、説明がつく気がする。
やがて、教室にたどり着く。桜が来ても、誰も一瞥以上の視線すらくれない。それはそうだ。つまらない転校生よりも、気心の知れた仲間たちと話していたほうが楽しいに決まっているのだから。
……でも、おしゃべりなんかよりももっと楽しいことがあるんだけどね。
この人たちはハイグレのことを知らない。自分はそれを知っている。一頻り優越感に浸ったところでふと、思いついた。
……学校の生徒達を、ハイグレ人間にすれば……!
学校という場所は閉鎖的だ。そこで過ごす千人近くの生徒たちは、基本的に自宅と塾などくらいしか移動範囲がない。しかも学校内の出来事が外部に漏れる可能性も高くはない。そして自分はそこに属している。つまるところ、ハイグレ人間化のターゲットとしては最適なのである。全校生徒千人分のハイグレパワーが集まれば、きっと侵攻作戦は第二フェイズまで進むだろう。
桜の脳内で未来のビジョンが固まっていく。あの人もこの人もハイグレ人間になって、そこら中でハイグレポーズを繰り返す。思い描く光景は夢のようで、夢物語ではないのだ。
「ふふふ、楽しいだろうなぁ……!」
「――鈴村さん、おはよう」
トリップしていた桜の背中に、突然挨拶の言葉が突き刺さる。パニックに陥り硬直する桜の反応を見て、声の主は前に回りこんで言った。
「あ、ごめんねいきなり。驚かせるつもりはなかったの」
「こっ、こっちこそごめんなさい! えっと……」
必死で謝る桜の心には不安――呟きが聴かれてなかっただろうかとか、聴かれていたら変人のように思われていないだろうかとか――が渦巻いていたが、それに反して眼前の彼女はにこりと微笑んでいた。メガネの奥のおっとりとした瞳は、桜を親愛の情を込めて見つめている。
……後ろの席の人だよね。
しかし、これまでまともな会話をしたことはない相手だ。せいぜいが転校初日の帰りに「また明日ね」と声を掛けられた程度。正直に言って、桜は彼女の名さえ覚えていなかった。故にここで言葉が詰まってしまう。
そんな桜の様子に合点がいった彼女は嫌な顔ひとつせず、
「瀬野雫だよー」
と名乗った。
「瀬野、さん。あの、ごめんなさい、名前もまだ覚えてなくて……」
「ううん、気にしないで。転校してきたばかりでそれどころじゃないよね」
更に気を遣われて余計に申し訳なくなる桜。
これまでの二週間、桜は全く友達を作る努力をしなかったわけではなかった。挨拶しようとしたり、プリント配布のついでに話しかけようとしたりはしていた。しかし迷惑がられないかだろうかと思うと一歩を踏み出せなかった。以前出来たことが出来ないのは、自分で自分を転校生であるという壁を作ってしまっていたからだ。
本当は誰かと友達になりたかった。他愛無い話をしたかった。それが果たせないならいっそ開き直ってしまおうかと、最近は思っていた。
でも今日、こっちで初めてまともに会話ができた。なんだか懐かしい気持ちがした。
そこまで考えて、一つの疑問が生じる。口に出してしまっては雫に失礼極まりないので心の中に留めておくが。
……どうして瀬野さんは今日に限って挨拶をしてきたんだろう。
その答えは、直後に彼女が話してくれた。
「あのね、今日はわたしたちが日直なんだよ。もしかして鈴村さん、知らないかなと思って」
「え? ……あ」
慌てて黒板の右端を見ると、そこには確かに『日直:鈴村 瀬野』の文字があった。席順もそうだが、日直当番も名前順なのか、と桜は初めて気づいた。
「そういうことだから今日一日、よろしくね。仕事のやり方とかは教えてあげるから」
「う、うん。よろしくお願いします」
顔を伏せるようにお辞儀した桜に、雫は少し困ったように声をかける。
「あの、もし話すの嫌だったら、言ってくれていいからね。突然馴れ馴れしくしちゃったわたしがわる――」
「――そんなことない! 嬉しいよ!」
直球で言ってしまった。桜は慌てて取り繕う。
「あ、いやその、日直ってことを教えてくれたことがありがたいっていうか」
それを阻むように、雫は安堵の声を出した。
「良かったぁ。嫌われてるわけじゃなかったんだね。わたし、ずっと鈴村さんと話がしたかったの」
「そう……なの?」
雫が、二つ結びの髪を揺らして頷く。
「うん。前の席だし、本当は話しかけようと思えばいつでも出来たけど、何だか鈴村さん、いつも緊張っていうかそわそわしてて、ちょっと声掛けづらかったんだよね。でも今日は一緒に日直だから、丁度いいかなって思って」
声掛けづらかった、などという言葉をサラリと口にしてしまう点に少し驚く。しかし、桜の中での雫の印象は寧ろ好転した。隠し事せず素直に話してくれる相手には、こちらからも心を開きたくなるものだ。
「確かに私、ずっと緊張してた。自分から話しかけるの躊躇しちゃって、ずっと一人で。だから――ありがと、瀬野さん。良かったら今日だけじゃなく、これからも話したいなって」
すると彼女は一層笑顔になって、
「もちろん! だってもう友達でしょ?」
その有無を言わせぬ決め付けが、桜にはとても心地良かった。
「――うん!」
それから桜は、久しぶりの友達との会話を楽しんだ。互いのこと、学校のこと、色々話した。大人しそうな外見の割に雫は人懐っこく、話していて飽きなかった。
数分が経って、ふと廊下から別の話し声が耳に入ってきた。
「ええ? それマジ?」
「嘘じゃないってば。あたし見たもん」
「しかもここの制服だったんでしょ? そんな変人がすぐ近くにいるかもってことかぁ」
“変人”に心当たりのある桜は思わず意識を集中させてしまう。喋っていた女子二人のうち一人は、この教室に入ってきた。別の女子が話しかける。
「ねえ沙羅、さっきは何の話をしていたのかしら?」
沙羅と呼ばれたポニーテールの女子が、薄ら笑いをしつつ返答する。
「ああ、千種。いやね、隣のクラスの美智留が昨日、北町商店街の方で変な女子生徒を見かけたらしいんだ」
一息入れて、
「その子、駄菓子屋の中で――コマネチしてたんだって」
刹那、教室内の空気がピシリと音を立てた。
「……っ!」
窓際の席から会話する彼女たちを鋭い眼光で見つめる女子がいる。
また、千種は薄く垂れた目を限界まで開いて沙羅に食いつく。
「一体どういうこと? その子について詳しく教えてもらえないかしらっ?」
そして桜は、
「……あれ? ねえ鈴村さん、どうしたの?」
雫に呼びかけられても返事ができないくらい、動揺していた。
……間違いない。今の話、絶対に私のことだ! あの時逃げてったのは隣のクラスの子だったんだ。
何をするべきか。口封じ? けれど自分はその人の顔も分からない。恐らく自分のことをその人は知らないのだろうが、顔を見られたら特定されてしまう危険性もある。うかつに探しに行くことも出来ない。
そのようにぐるぐると考えを巡らせるが、答えは出なかった。
「おーいっ、大丈夫?」
「――あ、う、うん」
二度目で桜はようやく思考の海から帰還する。
雫はそのことを気にする様子もなく、率直な感想を漏らす。
「コマネチってあれだよね、両手をクイッてやるやつ。そんなのやってる女の子って、なんかちょっと――面白いね」
「面白い?」
ハイグレ人間である桜は当然、ハイグレを素晴らしい行為、神聖な行為と思っている。また、ただの人間はハイグレを嫌がるだろうという想像も出来るし、だからこそその先にあるハイグレの素晴らしさを教えてあげたいとも思う。しかし目の前の少女はどうだ。まさか「面白い」などと言うなんて、考えてもみなかった。
「うん。わたしね、テレビで初めてあれ見たとき、笑っちゃったの。それを女の子がやってたら、また笑っちゃうかも」
なんだそういうことか、と思いつつ、
「じゃあ、もし瀬野さんがやれって言われたら、出来る?」
すると雫は一頻り悩んで、こう口にした。
「うーん。わたし一人じゃ流石に恥ずかしいよ。でも、一緒にやってくれる人がいるならやってみてもいいかなぁ、なんてね」
半ば冗談めかした言い方だったが、桜の脳裏にもしやという言葉が浮かんできた。
……単なる勘だけど瀬野さん、ハイグレ人間の素質があるかも知れない……!
桜が瞳の奥に妖しげな光を宿しているのと丁度同じ頃に、千種の沙羅に対する追求はやっと終わったようだった。貴重な情報ありがとう、と礼をした千種は近くにいた女子となにやら目配せをし、席に戻っていった。沙羅の方は不思議がっていたが、追求はしなかった。いつの間にか窓際の女子も視線を外している。
「何の話だったんだろうね」
雫が言い、桜はそうだねと頷いた。
「さっきの人たちは?」
「えっとね、話しかけてた方の髪の長いのが千石千種さん。最近、おうちで“お茶会”をやってるんだって」
「お茶会?」
「実は千石さんの家はすごいお金持ちなの。で、隣にいた保倉文さんの一家はその執事をしていて、保倉さんは千石さんの幼なじみで世話係でもあるんだって。千石さんは夏休み明けから、時々“お茶会”を開いてるらしいの。そこには保倉さんと、千石さんにお呼ばれされた誰かだけしか入れない。帰ってきた子に話を聞いても、どんなことがあったかは口止めされてて教えてくれないんだ。きっと優雅に紅茶を飲みながら豪華なお菓子を食べるんだよ。いいなぁ……」
言葉の最後の方はうっとりとした感じになっていた。少なくとも、雫が羨ましがっているのがお茶会への招待というよりは振る舞われる茶や菓子であることだけは、桜にも理解できた。
「――おはよー雫」
そこにやって来たのは、件の千種の話し相手であった。雫は振り向き、小さく手を振る。
「沙羅ちゃん、おはよう」
「おお、やっと転校生と話せたん?」
チラリと猫のような目が桜を向き、反射的に顔を背けてしまう。
対して雫は嬉しそうに答えた。
「うん! わたしたち、もう友達になったんだよ。ね?」
「あ、えっと、そう、だね」
困惑する桜の様子を見て、沙羅は「はははっ」と笑った。
「転校生も早速、雫節の餌食かぁ。ま、ちょうどいい機会だし、被害者同士仲良くしよーよ。アタシは間室沙羅、よろしくっ」
ちょっとヒドいよー、という雫の抗議を無視して、沙羅は桜の視界に入るように手を差し伸べた。桜はそれを、はにかみながら掴んだ。
「す、鈴村桜です」
ポニーテールを高い位置でリボンで括る彼女、沙羅は雫の親友でストッパー役なのだという。
「雫ってこの見た目でこんなんだからさ、なんか目が離せなくってさ」
「あ、なんか分かる気がする」
「桜ちゃんまでそんなこと言うの!?」
「はいはい大人しくしようねー」
腕を振って迫る雫を沙羅が後ろから抑えこむ。それに桜は思わず笑ってしまうと同時に、一つのことに気づいて驚いた。
「今、私のこと……」
名前で呼ばれたのだ。それに雫は慌てて謝った。
「ご、ごめんね鈴村さんっ。沙羅ちゃんを呼ぶのと同じ感じでつい……」
確かに突然で驚きはしたけれど、全然不快ではなかった、と桜は思う。
だから仕返しとばかりに、こう言うのだった。
「別にいいよ――雫。……で、いいのかな」
言い切ってから少し恥ずかしくなって顔を掻く。目だけを前に向けると、雫は比喩でないくらいに笑顔を輝かせていた。
「うんっ! 改めてよろしくね、桜ちゃん!」
「じゃあアタシのことも沙羅でいいよ。アタシも桜って呼ばせてもらうけど、いい?」
「分かった。よろしく、沙羅」
下の名前で呼び合うと、何だか一気に距離が縮まった気がした。
転校前に名前で呼び合った友達がいたかな、と桜は思い返す。しかし、すぐには思い当たらなかった。
……きっかけがあれば、こんなに簡単なことだったんだなぁ。
これまでの孤独な日々は何だったんだろう。こちらから話しかける勇気があれば、みんなきっと心を開いてくれただろうに。
しかし今更悔いても仕方ない。それに今、分かったではないか。今からでも遅くはないと。
……みんなと仲良く、なれるかな。
思った瞬間、ドクンと心臓が脈打った。
……みんなとハイグレ、できるかな。
「う、あぁ……!」
服の下のハイレグが、その存在を忘れるなと叫んでいるかのように、キツくキツく桜の体を締めあげた。特に脚ぐり、下腹部が熱く疼く。そのせいで桜は思わず腹を抱え、唸り声を漏らしてしまった。
……ハイグレがしたい、ハイグレがしたい、ハイグレ! ハイグレ!
脂汗を浮かべて机に突っ伏した桜を見て、雫と沙羅は焦り出す。
「大丈夫桜ちゃん!?」
「マズそうなら保健室連れてくか?」
そんなことをされたらハイレグがバレてしまう。桜は手の位置はそのままに立ち上がり、
「だ、大丈夫。ちょっとトイレ、行ってくる」
「あ。わたしも一緒に――」
「ううん、ごめんね」
雫の申し出は女子に特有のあの行動である。付き合いでトイレに来てくれては、流石に今回の場合は不都合だ。そう考えて桜は断った。
その時雫と沙羅を一瞥したのだが、桜の目には何故か彼女らが制服姿ではなく、ハイレグの水着姿に映った――そんな気がした。教室から出て行く際に確認したが、やはり見間違いだったようだ。
「あと十分くらいしか無いからねーっ」
水着の疼きを必死にこらえて、桜は一目散にトイレへ駆けた。
「おっきい方かな。それともおん――」
「あんま口に出すなよ……」
恥ずかしげもなく言う雫と呆れる沙羅を尻目に、一人の女子生徒が席を立った。
バタンと個室の扉を閉めたとき、桜の頬は真っ赤に燃え上がっていた。一刻も早くこんな服を脱ぎ捨てたい。焦れば焦るほど、ボタンやホックは指から滑る。
およそ一分をかけて薄ピンクのハイレグ水着一枚だけの姿になると、桜は心の奥から本当の自分が解放されたかのような爽快感を覚える。
……やっぱりハイグレ人間は、ハイグレ姿じゃなきゃ。
狭い個室で目いっぱいに脚を広げるため斜めに向き、両腕を引き下げたまさにその瞬間、隣の個室に誰かが入る音がした。バタン、ガチャ。これでは小声を出すことさえままならない。桜は涙目にならんばかりだった。
……ハイグレ、したいのにぃ……!
その欲求は頂点まで達していた。もう止めようがない。ならばと、
「……っ! ……っ! ハィ……ぇっ!」
桜は奥歯を強く噛み、ハイグレの単語を必死で押し殺してハイグレポーズを取った。
時間の許す限り、何度も何度もハイグレをした。
「……ぅぇっ! ハ……っ! ……!」
桜は思う。自由にハイグレが出来ない学校なんて、監獄も同然だ。今に全校生徒をハイグレ人間にして、いつでもどこでもハイグレを出来るようにしないと、と。
そのためにはまず。
……雫、あなたは私がハイグレ人間にしてあげる!
*Scene2-2:潜伏に続く*
*登場人物紹介・1*
【8月5日】
正太郎氏より鈴村桜の支援絵を戴きましたので掲載致します
フルサイズを見るには、サムネイルのリンク先である氏のブログからどうぞ
本当に感謝感謝です!

旧・なんとか絵ver
鈴村桜

旧・なんとか絵ver
ハイグレ戦士・鈴村桜

瀬野雫

間室沙羅
Powered by キャラクターなんとか機
初回の「~若人たち」裏話記事の、「一更新一ハイグレ以上」の項の中で、毎回ハイグレさせるのが俺のジャスティス(意訳)と書きましたが、読んでもらえれば分かる通り今回は洗脳描写なしです! 申し訳ない!
代わりに宣言通り、なんとか機製のイメージ絵を上げましたのでご容赦下さい。
ハイグレ戦士コスチュームについて。
まずは素材の出処をば。
ピンクのハイレグはアップローダー・ハイグレスレ用4から頂いたハイグレを色替え可能にしたものを。
頬の赤星は参式氏の参式専用highgleアップローダー2内、矯正ハイグレ人間(ロリ).psdのフェイスペイントのレイヤーを抽出縮小してアクセサリー素材化させて頂きました。
その他パーツ(制服版含む)はキャラクターなんとか機 追加パーツ保管庫様からです。
……で、このコスなのですが、自分の記述したハイグレ戦士そのもの、というわけではありません。
あくまでも、拾い物の中でなるべく記述のイメージに近づけようとした結果です。
手袋はもうちょっと戦えそうなグローブがいいし、手首は出さないで欲しいし、腕カバーはタイツのようにピッタリしていて欲しいし、そいつとニーハイの縁には輪っかが欲しいところです。あ、あとハイグレストーンのネックレス。
ですが自分に出来るのは他人様の既存の絵や素材をちょこっと変更する程度です。ああ悔しい、誰か描いt(ry
キャラのイメージをなんとなく掴むのにお役立て下さい。キャラが増えれば(ハイグレ化すれば)、その都度追加していきます。
それとアクション仮面好き さん、(非公開)さん、コメントありがとうございます。
一応Side:LAB.は映画の外伝のつもりでしたので、結末は本編と同じにせねばと思っていたのですが……ご要望とあらば書くことも考えておきますね、ハイグレ勝利パターン。
(ほらやっぱりみんなハイグレ側に勝って欲しいんだ。物語のセオリーとしては人間側が勝たなきゃいけないのに、需要の問題でやっぱり全員洗脳エンドになりがちになってしまう。いやもちろん自分だって全滅は大好きな展開ですけれど。でも、いち物書きとしてはたまには人間が勝つ作品も作りたいなあ)
では今回はこれにて。
次は何か他のリクを消化しようかしら。
ああでも映画公開記念日に向けて作ったものがあったりなかったり。
木曜夜をお楽しみに!
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