【ツイッター1hリク】No.5 『恐怖のハイグレ人間事件!』
とりあえず投稿。記録68分。
経緯とか諸々は明日までには追記します。
(03/01追記&体裁整理)
どうも、香取犬です。
香取犬の即興小説企画第5弾はツイッターで、お題箱による公募にて行いました。
絵師さんのワンドロ企画を見るたび、「よくもまあ一時間でこのクオリティのイラストが描けるよなあ」と思います。
同じ時間を小説の執筆にあてたところで、まともな作品を作るのは非常に難しいです。でもだからこそ、小説書きにもチャレンジのしがいがある企画なのではないでしょうか。
今回、4通の応募の中から作為的に選ばせていただいたのはこちらのお題です。
果たして一時間クオリティでどこまで到達できたのでしょうか。
以下、投稿時の原文のまま載せています。
仮に文章のミスや誤字脱字があっても事情を汲んで温かい目で見てくださいな。
『恐怖のハイグレ人間事件!』
Request from お題箱
「というわけで、浅香さん。これ、お願いね?」
文化祭実行委員の宮本さんが、ニヤニヤどころかニタニタと表現したほうがいいような笑顔を貼り付けて、私に黒いビニール袋を渡してきた。
私に拒否権は無かった。なぜなら昨日は私は体調不良で学校を欠席していて、文化祭のクラスの出し物決めの会議に出られなかったから。欠席裁判と言うやつだ。死人に口なし(死んでないけど)。
まあ、私抜きでもこのクラスがまとまってちゃんと意見を出せるんだなと分かったことは収穫かもしれない。この人達ときたら、好き勝手な意見ばっかり出して一つの目標に一致団結して向かおうという意識が足りなさすぎるから。
クラスの出し物は短編のオリジナル劇に決まったという。配役も調整済み。なんだ、手際が良いじゃない。口には出さずに褒めながら、私は宮本さんから渡された袋――私の役の衣装を受け取った。
やけに軽い。それに、手触りも薄い。一体どんな服なのかと中を確認した私の眼に飛び込んできたのは――
「ねえ宮本さん。もう一度、なんて劇で私が何の役か教えてもらえない?」
宮本さんは口元を抑えながら即答した。
「だから、タイトルは『恐怖のハイグレ人間事件!』、浅香さんはその被害者の、ハイグレ人間役だってば」
――学校でも嫌われ者のガミガミ女教師が、ある日学校でハイレグ水着姿で発見された。生徒が話しかけても、一心不乱に「ハイグレ!」と水着の線に沿って手を上下に動かす滑稽なポーズを繰り返すばかり。表情は真剣そのものだ。これは事件に違いない。クラスの生徒数人が、この怪事件の謎を解き明かそうとする――!
『で、その間ハイグレ人間は、ずっと舞台の上でハイグレポーズしててねー。ハイグレ人間なんだから、一瞬も止めちゃだめだかんね』
「何よそれ!!」
バスッ、と私はベッドの上に赤いハイレグ水着を叩きつけた。自室に帰れば、素の私に戻れる。学校でのストレスを思う存分吐き出せる。
「こんなのほとんどイジメじゃないの? なんで誰も反対しなかったのよ……」
と嘆いていても決まってしまったものは仕方ない。私一人が反逆したところで覆すのは無理だ。多勢の論理には逆らえない。
私は制服を脱ぎ、下着姿になる。普段なら部屋着である、中学の時着ていたジャージに着替えるところだけど、今日手にとったのはジャージではない。
「こんなの着たことないし……これで人前に出ろっていうの?」
姿見の前に立ち、自分に与えられたハイレグをつまんで体に合わせてみる。現実には見たことのないほど鋭いV字の切れ込みが目の前にある。そしてそれは間もなく、自分の下腹部に描かれることになる……。
「無理っ!」
耐えられずに頭を抱えてしゃがみ込む。でもやっぱり無理ですと宮本さんに突き返したとして、本当に耐えられないのはその後私がクラスの全員から非難され、立場を失うこと。それだけは、決して……。
「そうよ、私が着たいわけじゃない。み、みんなのせいなんだから……」
誰にともなく言い訳して、上下の下着を脱いで真っ裸になる。……誰も見ていないとは言え、部屋で裸になるって不思議な気分ね。プールの授業が終わってから整えていなかったアンダーヘアが気になるけれど、今は強い気持ちでスルー。
そして真っ赤な変態的な衣装に空いた2つの穴に、パンツを穿くのと同じように足を通し、立ち上がって引き上げていく。パンツと違って、腰骨の辺りでは止まらない。みぞおちぐらいまできて、ようやく生地が伸び始めた。
「……っ」
下は見ない。下は見ない。どうなってるかなんて見たら心が揺らぐ。後は普段の水着同様に胸を収めて肩紐を通すだけ。着崩れた部分を整えて、着替え完了。
姿見に映る自分の身体を恐る恐る覗き込む。そこにいたのは私――じゃない。私の顔と身体をした、ハイグレ人間。
「はぁ……はぁ……」
吐く息が熱い。せめて私じゃないと思わないと、恥ずかしくて死にそう。
そのままハイグレ人間は、自分に与えられた使命を果たそうとする。すなわち――
「……ハ……」
心もとない生地にのみ覆われた恥部を見せつけるかのように大きく足を開き、上体を前かがみにし、おもむろに両手を股間の前でクロスさせる――宮本さんは「三種類ほどの流派があるけれど今回はクロスね」と宣っておられた。いや流派って何よ――。
そうして、そのときは来た。
「ハイ、グレ!」
グイッと音がするくらい大胆に。縮めたバネが戻るような勢いで、上半身を反り返らせる。当然、腕は空中に大きなVを描いた。
ああ、やっちゃった……。でも、仕方ないんだ。みんなのせい。私はハイグレ人間にならなきゃいけないんだから。
私に求められてるのは、完璧なハイグレ人間の役。そのためにだったら、何でもやってやる。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
私はすべてを捨てて、ハイグレ人間になるために全力を尽くした。
二週間後、教室でのリハーサル。宮本さんがメガホンを取る。
私は本番同様、コートを羽織った姿で舞台袖に立っている。中にはもちろん赤いハイレグ。今までの練習では制服のままだったし、流石に疲れるだろうという配慮からハイグレポーズを取り続けさせられることはなかった。
だから、これが初披露なのだ。
「はーい、用意スタート!」
宮本さんの合図で劇の冒頭のワンシーンを演じる。私=教師が放課後の教室を見回りに来る。残っていた生徒を叱って追い出す。周囲に気配を感じるかのようにキョロキョロとして、その後照明が落ちて断末魔が響き渡る。
……ねえ、分かってるでしょ? みんなが私を選んだの。だから、しっかり眼に焼き付けなさい。
……みんな、完璧なハイグレ人間になった私を見るのよ!
「ハイグレ!! ハイグレ!! ハイグレ!!」
明かりが、私の赤いハイグレ人間姿を照らし出した。
<劇終>
いかがでしたでしょうか?
今回のタイムは、
お題を開封して決めるまで:7分
プロットを練る:8分
執筆:50分
投稿にちょっとグダったぶん:3分
の68分となりました。多少タイムオーバーしたけどしょうがない。
自分の作品の中ではあまり数のない、羞恥メインのお話になりました。
ハイグレ光線によって洗脳されたわけではなく、責任感や同調圧力によって仕方なくハイグレ姿とハイグレポーズを強制される……はい、自分も大好きなシチュです。
ある意味、合法的に変態行為を衆人環視の中で曝け出すことができるわけですよね、なんて羨まs(強制終了
プロットを練るときに一番難産だったのは、「どんな劇なら主人公一人だけがハイグレ姿になるだろうか」ということでした。
誰か他の人と一緒だと、恥ずかしさは多少軽減されるはず。だとすると「ハイグレ侵略される劇」だと他にも被害者がいるため却下。ならば……とひねり出した結果がこれでした。
――以下、本編ではタイムアップにより書ききれなかったアイデア供養欄。「答え合わせなんてオイラ聞きたくないやい。語られないからこそ想像する余地を楽しめるんだい」って方は目をつぶってください――
まずは浅香さんの本性や心情から。
こうしてハイグレ人間になることを強いられてしまった浅香さん。学級委員として完璧であることを自分に課していた彼女ですが、心のどこかでは破壊願望もあったようです。すなわち、今まで積み上げてきた立場が全て壊れてしまったらどうなるのだろうか、という好奇心。もちろんその後の人生のことを考えたら普通は叶うはずのない夢でした。しかし、今回の配役はまさにうってつけでした。
ただのド変態に成り下がった姿をまざまざと不特定多数の人に見られてしまうことになるにも関わらず、役に真面目に取り組むほど、表向きはどんな汚れ役でもこなす模範的な学級委員としての評価が上がっていくのですから。
練習期間中には、制服姿で何度かハイグレポーズをとることになりました。そのときに感じたクラスのみんなからの蔑みや同情の視線に、もしこれがハイレグ姿だったらもっと白い目で見てもらえるだろうなと考えてしまう浅香さん。その日を待ちわびて、完璧に役を仕上げてやろうとひたむきに自主練習をしていました。
こうしてついにリハーサルの日がやってきました。みんなの前で初お披露目となったハイグレ姿に集まる視線に、浅香さんは胸の中でどれほど興奮していたことでしょうか?
なにも最初から変態だったわけではないですが、そうなる資質はあって、ハイグレのせいで目覚めてしまったような形です。
本番で、学校中の生徒や全く知らない来客にも破廉恥な姿を見られてしまうことを想像したら、前日は夜も眠れないかもしれないですね。
それと、劇について。
当初考えていた劇のオチとしては、こんな感じでした。こんなん論理的にも倫理的にもありえねーだろ、みたいなツッコミはご勘弁くだせぇ。
――探偵団の生徒は先生がハイグレ化した謎を突き止めるため、学校中や先生の自宅を捜査する。そしてたどり着いた結論は……。
探偵「……先生。この事件の真相が、分かりましたよ」
助手「ど、どういうこと?」
先生「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
探偵「もう、こんなのはやめにしましょう。そうですよね? ハイグレ人間化の被害者……いいや。ハイグレ人間に憧れた、ただの変態さん」
先生「ハイグレ! ハイグレ! ……あーあ、バレちゃったなら仕方ないわね」
助手「先生が喋った! ハイグレ人間になったらずっとポーズを取り続けるんじゃなかったの!?」
探偵「ハイグレ人間化なんて現象、現実にありませんよ。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」
助手「だったらどうして先生はハイグレ人間なんかに……?」
探偵「先生はハイグレ人間になることが夢だった。それは先生の自宅にあの映画のDVDがあったり、クローゼットに何着ものハイレグ水着を掛けていたことから分かりました。ですが先生の誰かに見られながらハイグレする願望は、自宅で一人でハイグレポーズするだけでは満たせず……こうしてハイグレ人間事件を自演したのです。
ハイグレ人間というのは便利ですよね。ひたすらにポーズを繰り返すだけの存在だから返事もしなくて不自然ではない。僕たち外の人間には、その人が助手の言うように『本当のハイグレ人間になってしまった』のか、『ハイグレ人間のふりを演じているだけ』なのかは判別できないのですから。でも、観念して白状してくれて助かりました」
先生「ふふふ、見事な推理ね。いかにも、私は子供の頃にハイグレ人間になりたいと思ってしまった人間よ。ここまで突き止められたなら隠す必要もないわね」
探偵「これから、先生はどうする気ですか? 僕たちは真実を公開することができます。ですが先生が望むなら、このまま胸のうちに秘めておこうと思います」
先生「あら、脅迫のつもり? だけど……あなたたちもハイグレ人間になってしまえば、そんなことは言えなくなるわよね……?」
そう言って先生がどこからともなく取り出して、探偵たちに突きつけたものは――。
……あ、すみません、先生による告白以降は今付け足しました。当初は先生がハイグレ人間を演じていただけたった、というオチまででした。
外から見たら洗脳なのか演技なのか分からない、というのは逆スパイネタで時々使われてました。が、まさか洗脳が存在しない侵略中ではない世界観で使ったのはおそらく初めてじゃないでしょうか。作中作だからこそできるトンデモ展開万歳。
もしこの劇だけをちゃんと練り上げるなら、途中で探偵団の一人もハイグレ人間化しちゃうといいかもですね。外からは「お前たちは知りすぎた」のように見えますし、その二人目の子にとっては自分もハイグレ人間になりたかったからこそ先生の真相にいち早く気づけて、便乗してしまったという流れです。
で、その二人目の子はこの劇の脚本を書いた子なんです。自分がハイグレ人間になるために書いた台本でハイグレ人間役を買って出る、まさに自作自演! 学級委員まで仲間に引き込めたよやったね!
まあ、冷静に考えたらどうやっても話の整合性がとれる気がしないのでアイデアだけ不法投棄しときます。
そんな感じで以上即興小説でした。
小説を書く感覚を失わないために、即興小説でリハビリするのもいいなと思いました。またお題箱で募集するかもしれないので、その時はアイデアお待ちしております。
(普段からお題を入れちゃいけないわけじゃないですのでご自由にお使いください)
ではまたー
経緯とか諸々は明日までには追記します。
(03/01追記&体裁整理)
どうも、香取犬です。
香取犬の即興小説企画第5弾はツイッターで、お題箱による公募にて行いました。
絵師さんのワンドロ企画を見るたび、「よくもまあ一時間でこのクオリティのイラストが描けるよなあ」と思います。
同じ時間を小説の執筆にあてたところで、まともな作品を作るのは非常に難しいです。でもだからこそ、小説書きにもチャレンジのしがいがある企画なのではないでしょうか。
今回、4通の応募の中から作為的に選ばせていただいたのはこちらのお題です。
〇お題タイトル
女子生徒が劇でハイグレ人間の役をやることになった
〇詳細
強制露出に近いシチュエーション。
洗脳などの非日常要素はなく、トンデモ設定の混じった日常という区分で、
あくまでも少女が自分の手で水着を着てハイグレ人間を演じるという内容。
ハイグレ人間の役を演じるという要素がメインのため、
内容は自宅での自主練習、学校でのリハーサルなど、劇本番以外でも良い。
可能であれば、露出趣味に目覚めるようなノリで、
ハイレグを着ることや人前でハイグレをすることに
性的興奮を覚えるようになる描写がほしい。
(練習を行うごとに性癖が深まるようだとなお嬉しい)
果たして一時間クオリティでどこまで到達できたのでしょうか。
以下、投稿時の原文のまま載せています。
仮に文章のミスや誤字脱字があっても事情を汲んで温かい目で見てくださいな。
『恐怖のハイグレ人間事件!』
Request from お題箱
「というわけで、浅香さん。これ、お願いね?」
文化祭実行委員の宮本さんが、ニヤニヤどころかニタニタと表現したほうがいいような笑顔を貼り付けて、私に黒いビニール袋を渡してきた。
私に拒否権は無かった。なぜなら昨日は私は体調不良で学校を欠席していて、文化祭のクラスの出し物決めの会議に出られなかったから。欠席裁判と言うやつだ。死人に口なし(死んでないけど)。
まあ、私抜きでもこのクラスがまとまってちゃんと意見を出せるんだなと分かったことは収穫かもしれない。この人達ときたら、好き勝手な意見ばっかり出して一つの目標に一致団結して向かおうという意識が足りなさすぎるから。
クラスの出し物は短編のオリジナル劇に決まったという。配役も調整済み。なんだ、手際が良いじゃない。口には出さずに褒めながら、私は宮本さんから渡された袋――私の役の衣装を受け取った。
やけに軽い。それに、手触りも薄い。一体どんな服なのかと中を確認した私の眼に飛び込んできたのは――
「ねえ宮本さん。もう一度、なんて劇で私が何の役か教えてもらえない?」
宮本さんは口元を抑えながら即答した。
「だから、タイトルは『恐怖のハイグレ人間事件!』、浅香さんはその被害者の、ハイグレ人間役だってば」
――学校でも嫌われ者のガミガミ女教師が、ある日学校でハイレグ水着姿で発見された。生徒が話しかけても、一心不乱に「ハイグレ!」と水着の線に沿って手を上下に動かす滑稽なポーズを繰り返すばかり。表情は真剣そのものだ。これは事件に違いない。クラスの生徒数人が、この怪事件の謎を解き明かそうとする――!
『で、その間ハイグレ人間は、ずっと舞台の上でハイグレポーズしててねー。ハイグレ人間なんだから、一瞬も止めちゃだめだかんね』
「何よそれ!!」
バスッ、と私はベッドの上に赤いハイレグ水着を叩きつけた。自室に帰れば、素の私に戻れる。学校でのストレスを思う存分吐き出せる。
「こんなのほとんどイジメじゃないの? なんで誰も反対しなかったのよ……」
と嘆いていても決まってしまったものは仕方ない。私一人が反逆したところで覆すのは無理だ。多勢の論理には逆らえない。
私は制服を脱ぎ、下着姿になる。普段なら部屋着である、中学の時着ていたジャージに着替えるところだけど、今日手にとったのはジャージではない。
「こんなの着たことないし……これで人前に出ろっていうの?」
姿見の前に立ち、自分に与えられたハイレグをつまんで体に合わせてみる。現実には見たことのないほど鋭いV字の切れ込みが目の前にある。そしてそれは間もなく、自分の下腹部に描かれることになる……。
「無理っ!」
耐えられずに頭を抱えてしゃがみ込む。でもやっぱり無理ですと宮本さんに突き返したとして、本当に耐えられないのはその後私がクラスの全員から非難され、立場を失うこと。それだけは、決して……。
「そうよ、私が着たいわけじゃない。み、みんなのせいなんだから……」
誰にともなく言い訳して、上下の下着を脱いで真っ裸になる。……誰も見ていないとは言え、部屋で裸になるって不思議な気分ね。プールの授業が終わってから整えていなかったアンダーヘアが気になるけれど、今は強い気持ちでスルー。
そして真っ赤な変態的な衣装に空いた2つの穴に、パンツを穿くのと同じように足を通し、立ち上がって引き上げていく。パンツと違って、腰骨の辺りでは止まらない。みぞおちぐらいまできて、ようやく生地が伸び始めた。
「……っ」
下は見ない。下は見ない。どうなってるかなんて見たら心が揺らぐ。後は普段の水着同様に胸を収めて肩紐を通すだけ。着崩れた部分を整えて、着替え完了。
姿見に映る自分の身体を恐る恐る覗き込む。そこにいたのは私――じゃない。私の顔と身体をした、ハイグレ人間。
「はぁ……はぁ……」
吐く息が熱い。せめて私じゃないと思わないと、恥ずかしくて死にそう。
そのままハイグレ人間は、自分に与えられた使命を果たそうとする。すなわち――
「……ハ……」
心もとない生地にのみ覆われた恥部を見せつけるかのように大きく足を開き、上体を前かがみにし、おもむろに両手を股間の前でクロスさせる――宮本さんは「三種類ほどの流派があるけれど今回はクロスね」と宣っておられた。いや流派って何よ――。
そうして、そのときは来た。
「ハイ、グレ!」
グイッと音がするくらい大胆に。縮めたバネが戻るような勢いで、上半身を反り返らせる。当然、腕は空中に大きなVを描いた。
ああ、やっちゃった……。でも、仕方ないんだ。みんなのせい。私はハイグレ人間にならなきゃいけないんだから。
私に求められてるのは、完璧なハイグレ人間の役。そのためにだったら、何でもやってやる。
「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
私はすべてを捨てて、ハイグレ人間になるために全力を尽くした。
二週間後、教室でのリハーサル。宮本さんがメガホンを取る。
私は本番同様、コートを羽織った姿で舞台袖に立っている。中にはもちろん赤いハイレグ。今までの練習では制服のままだったし、流石に疲れるだろうという配慮からハイグレポーズを取り続けさせられることはなかった。
だから、これが初披露なのだ。
「はーい、用意スタート!」
宮本さんの合図で劇の冒頭のワンシーンを演じる。私=教師が放課後の教室を見回りに来る。残っていた生徒を叱って追い出す。周囲に気配を感じるかのようにキョロキョロとして、その後照明が落ちて断末魔が響き渡る。
……ねえ、分かってるでしょ? みんなが私を選んだの。だから、しっかり眼に焼き付けなさい。
……みんな、完璧なハイグレ人間になった私を見るのよ!
「ハイグレ!! ハイグレ!! ハイグレ!!」
明かりが、私の赤いハイグレ人間姿を照らし出した。
<劇終>
いかがでしたでしょうか?
今回のタイムは、
お題を開封して決めるまで:7分
プロットを練る:8分
執筆:50分
投稿にちょっとグダったぶん:3分
の68分となりました。多少タイムオーバーしたけどしょうがない。
自分の作品の中ではあまり数のない、羞恥メインのお話になりました。
ハイグレ光線によって洗脳されたわけではなく、責任感や同調圧力によって仕方なくハイグレ姿とハイグレポーズを強制される……はい、自分も大好きなシチュです。
ある意味、合法的に変態行為を衆人環視の中で曝け出すことができるわけですよね、なんて羨まs(強制終了
プロットを練るときに一番難産だったのは、「どんな劇なら主人公一人だけがハイグレ姿になるだろうか」ということでした。
誰か他の人と一緒だと、恥ずかしさは多少軽減されるはず。だとすると「ハイグレ侵略される劇」だと他にも被害者がいるため却下。ならば……とひねり出した結果がこれでした。
――以下、本編ではタイムアップにより書ききれなかったアイデア供養欄。「答え合わせなんてオイラ聞きたくないやい。語られないからこそ想像する余地を楽しめるんだい」って方は目をつぶってください――
まずは浅香さんの本性や心情から。
こうしてハイグレ人間になることを強いられてしまった浅香さん。学級委員として完璧であることを自分に課していた彼女ですが、心のどこかでは破壊願望もあったようです。すなわち、今まで積み上げてきた立場が全て壊れてしまったらどうなるのだろうか、という好奇心。もちろんその後の人生のことを考えたら普通は叶うはずのない夢でした。しかし、今回の配役はまさにうってつけでした。
ただのド変態に成り下がった姿をまざまざと不特定多数の人に見られてしまうことになるにも関わらず、役に真面目に取り組むほど、表向きはどんな汚れ役でもこなす模範的な学級委員としての評価が上がっていくのですから。
練習期間中には、制服姿で何度かハイグレポーズをとることになりました。そのときに感じたクラスのみんなからの蔑みや同情の視線に、もしこれがハイレグ姿だったらもっと白い目で見てもらえるだろうなと考えてしまう浅香さん。その日を待ちわびて、完璧に役を仕上げてやろうとひたむきに自主練習をしていました。
こうしてついにリハーサルの日がやってきました。みんなの前で初お披露目となったハイグレ姿に集まる視線に、浅香さんは胸の中でどれほど興奮していたことでしょうか?
なにも最初から変態だったわけではないですが、そうなる資質はあって、ハイグレのせいで目覚めてしまったような形です。
本番で、学校中の生徒や全く知らない来客にも破廉恥な姿を見られてしまうことを想像したら、前日は夜も眠れないかもしれないですね。
それと、劇について。
当初考えていた劇のオチとしては、こんな感じでした。こんなん論理的にも倫理的にもありえねーだろ、みたいなツッコミはご勘弁くだせぇ。
――探偵団の生徒は先生がハイグレ化した謎を突き止めるため、学校中や先生の自宅を捜査する。そしてたどり着いた結論は……。
探偵「……先生。この事件の真相が、分かりましたよ」
助手「ど、どういうこと?」
先生「ハイグレ! ハイグレ! ハイグレ!」
探偵「もう、こんなのはやめにしましょう。そうですよね? ハイグレ人間化の被害者……いいや。ハイグレ人間に憧れた、ただの変態さん」
先生「ハイグレ! ハイグレ! ……あーあ、バレちゃったなら仕方ないわね」
助手「先生が喋った! ハイグレ人間になったらずっとポーズを取り続けるんじゃなかったの!?」
探偵「ハイグレ人間化なんて現象、現実にありませんよ。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」
助手「だったらどうして先生はハイグレ人間なんかに……?」
探偵「先生はハイグレ人間になることが夢だった。それは先生の自宅にあの映画のDVDがあったり、クローゼットに何着ものハイレグ水着を掛けていたことから分かりました。ですが先生の誰かに見られながらハイグレする願望は、自宅で一人でハイグレポーズするだけでは満たせず……こうしてハイグレ人間事件を自演したのです。
ハイグレ人間というのは便利ですよね。ひたすらにポーズを繰り返すだけの存在だから返事もしなくて不自然ではない。僕たち外の人間には、その人が助手の言うように『本当のハイグレ人間になってしまった』のか、『ハイグレ人間のふりを演じているだけ』なのかは判別できないのですから。でも、観念して白状してくれて助かりました」
先生「ふふふ、見事な推理ね。いかにも、私は子供の頃にハイグレ人間になりたいと思ってしまった人間よ。ここまで突き止められたなら隠す必要もないわね」
探偵「これから、先生はどうする気ですか? 僕たちは真実を公開することができます。ですが先生が望むなら、このまま胸のうちに秘めておこうと思います」
先生「あら、脅迫のつもり? だけど……あなたたちもハイグレ人間になってしまえば、そんなことは言えなくなるわよね……?」
そう言って先生がどこからともなく取り出して、探偵たちに突きつけたものは――。
……あ、すみません、先生による告白以降は今付け足しました。当初は先生がハイグレ人間を演じていただけたった、というオチまででした。
外から見たら洗脳なのか演技なのか分からない、というのは逆スパイネタで時々使われてました。が、まさか洗脳が存在しない侵略中ではない世界観で使ったのはおそらく初めてじゃないでしょうか。作中作だからこそできるトンデモ展開万歳。
もしこの劇だけをちゃんと練り上げるなら、途中で探偵団の一人もハイグレ人間化しちゃうといいかもですね。外からは「お前たちは知りすぎた」のように見えますし、その二人目の子にとっては自分もハイグレ人間になりたかったからこそ先生の真相にいち早く気づけて、便乗してしまったという流れです。
で、その二人目の子はこの劇の脚本を書いた子なんです。自分がハイグレ人間になるために書いた台本でハイグレ人間役を買って出る、まさに自作自演! 学級委員まで仲間に引き込めたよやったね!
まあ、冷静に考えたらどうやっても話の整合性がとれる気がしないのでアイデアだけ不法投棄しときます。
そんな感じで以上即興小説でした。
小説を書く感覚を失わないために、即興小説でリハビリするのもいいなと思いました。またお題箱で募集するかもしれないので、その時はアイデアお待ちしております。
(普段からお題を入れちゃいけないわけじゃないですのでご自由にお使いください)
ではまたー
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No title
執筆お疲れ様です。
1hリクとは思えぬクオリティで楽しませて頂きました。
浅香さん、可愛いですね。
欠席したが故の汚れ役だなんて羞恥好きにとってはもう最高のシチュエーションであり、姿見の前で悶絶する姿が目に浮かぶようです。
それもこれも、少し上から目線にクラスの進行具合を分析するお高く止まったキャラ作りが完結かつ印象的に行われているお陰でしょう。
一言も直接的に表現されていないのに、普段こういった纏め役を進んで買って出る委員長的ポジションなのだろうと伺わせる描写が一時間の間にスラスラ書き出さるなんて、流石です。
二週間でスッキリ切り替えられた浅香さんがどんな恥辱に塗れていくのか、読後感もいい短編でした。
1hリクとは思えぬクオリティで楽しませて頂きました。
浅香さん、可愛いですね。
欠席したが故の汚れ役だなんて羞恥好きにとってはもう最高のシチュエーションであり、姿見の前で悶絶する姿が目に浮かぶようです。
それもこれも、少し上から目線にクラスの進行具合を分析するお高く止まったキャラ作りが完結かつ印象的に行われているお陰でしょう。
一言も直接的に表現されていないのに、普段こういった纏め役を進んで買って出る委員長的ポジションなのだろうと伺わせる描写が一時間の間にスラスラ書き出さるなんて、流石です。
二週間でスッキリ切り替えられた浅香さんがどんな恥辱に塗れていくのか、読後感もいい短編でした。
No title
被害者を装って実は犯人とかいう黄金ぱてぃーん…(*´д`*)ノ どうも、アビスSSにてやっぱり感想はツイッターじゃなくてブログの方でやんなきゃって思い直してのこのこやってきた0106でございますー!
のっぴきならない事情で自らハイグレに肩紐を通していくうら若き乙女とかいう垂涎のシチュほんま最高流行って…流行れ…(謎迫真)(`・ω・´)さらーっと読むと生意気な浅香ちゃんをいてこます(謎大阪弁)宮本ちゃんってお話だけど、妙にハイグレに詳しい宮本ちゃんって一体…まさか宮本ちゃんも…!?みたいな妄想の余地もあってワンドロで書いたとは思えないくおりてぃに困惑を隠せない0106なのであった…(謎述懐)
(*´д`*)ノシ またやってほしいで、とかいう超絶無責任な期待を寄せつつこのへんでではではー!
のっぴきならない事情で自らハイグレに肩紐を通していくうら若き乙女とかいう垂涎のシチュほんま最高流行って…流行れ…(謎迫真)(`・ω・´)さらーっと読むと生意気な浅香ちゃんをいてこます(謎大阪弁)宮本ちゃんってお話だけど、妙にハイグレに詳しい宮本ちゃんって一体…まさか宮本ちゃんも…!?みたいな妄想の余地もあってワンドロで書いたとは思えないくおりてぃに困惑を隠せない0106なのであった…(謎述懐)
(*´д`*)ノシ またやってほしいで、とかいう超絶無責任な期待を寄せつつこのへんでではではー!
Re:
>牙蓮氏
欠席とは、学校というシステムにおいては大きな引け目になります。ましてや普段から真面目に過ごしている生徒ほど、一度の欠席が与えるショックは(本人自身の心に対しても)大きいものです。
そこに付け込むなんて、卑怯ですねー
>二週間でスッキリ切り替えられた浅香さんがどんな恥辱に塗れていくのか
きっと本人は心の中で興奮しながらもひた隠しにしてハイグレ人間役になりきってハイグレに勤しむんです。
でも注目が集まるごとに表情がにやけて、宮本監督に「浅香さん! 真面目にハイグレしてよ!」って指導されちゃうんだ……。
>0106氏
自分はいただく感想はどちらでもいいんですが、単純に140字以上になるならツイッターはやっぱり向いてないなって思います。
>のっぴきならない事情で自らハイグレに肩紐を通していくうら若き乙女とかいう垂涎のシチュ
ハイレグなんて着たことはおろか見たこともなく、下手すれば知識としてすらないような子が着ることになるのいいですよね。
誰が見ても一目でえっちで恥ずかしい格好だと分かるのがハイレグのいいところ……!
果たして宮本さんの意図は一体……?(何も考えてない
欠席とは、学校というシステムにおいては大きな引け目になります。ましてや普段から真面目に過ごしている生徒ほど、一度の欠席が与えるショックは(本人自身の心に対しても)大きいものです。
そこに付け込むなんて、卑怯ですねー
>二週間でスッキリ切り替えられた浅香さんがどんな恥辱に塗れていくのか
きっと本人は心の中で興奮しながらもひた隠しにしてハイグレ人間役になりきってハイグレに勤しむんです。
でも注目が集まるごとに表情がにやけて、宮本監督に「浅香さん! 真面目にハイグレしてよ!」って指導されちゃうんだ……。
>0106氏
自分はいただく感想はどちらでもいいんですが、単純に140字以上になるならツイッターはやっぱり向いてないなって思います。
>のっぴきならない事情で自らハイグレに肩紐を通していくうら若き乙女とかいう垂涎のシチュ
ハイレグなんて着たことはおろか見たこともなく、下手すれば知識としてすらないような子が着ることになるのいいですよね。
誰が見ても一目でえっちで恥ずかしい格好だと分かるのがハイレグのいいところ……!
果たして宮本さんの意図は一体……?(何も考えてない